最大の敵
瓦礫の残る街を進むゼロ、リリス、ミラ、三体の自動人形。
風が吹くたび、粉塵が舞い、空は鈍い灰色に染まっていた。
足音すら、どこか寂しげに響く。
ふいに、ミラが立ち止まった。
「……これ、なに……?」
瓦礫の間に、小さな骨の破片があった。
焼け焦げた布の切れ端、そして錆びついたネックレス。
その中には、ひび割れた写真――笑顔の親子。
ミラの手が震えた。
「……うそ……そんな……」
彼女はネックレスを胸に抱きしめ、涙が頬を伝う。
「……どうして……どうして……!」
リリスがそっと手を添える。
「……もう、いないのね……」
言葉は静かに崩れ落ち、空気が一層冷たくなる。
ゼロはその光景をただ見つめていた。
誰のものかもわからない――それでも、胸の奥が焼けるように痛む。
なぜ、これほど悲しいのか。
なぜ、自分は涙を流せないのか。
赤く光る瞳が、震えた。
「……くっ……」
金属の拳を握る音が、風に溶ける。
その時、地面が低く唸った。
瓦礫の奥、闇の中から重い足音。
空気が震え、熱が滲む。
「……来たな」リリスが小さくつぶやく。
現れたのは、漆黒の巨体――TYPE-Z∞。
博士が最後に設計した、最強の自動人形。
その瞳は血のように赤く輝き、冷たい声が響く。
「ゼロ……まだ理解していないのか。人間は欠陥だ。排除こそ、正義だ。」
ゼロの胸が再び灼ける。
「……黙れ……!」
その声は怒りとも、悲しみともつかない。
彼の中で、守りたいという意志が燃え上がる。
ミラは涙の跡をぬぐい、ゼロを見上げた。
「……負けないで……お願い……」
その一言で、ゼロの瞳が青く揺らめく。
赤と青――怒りと理性。
相反する二つの光が、彼の中で交錯した。
「俺は……壊すために生まれたんじゃない。守るためにいるんだ!」
ゼロは一気に地を蹴り、TYPE-Z∞に突進。
衝撃波が瓦礫を吹き飛ばし、火花が散る。
三体の自動人形が援護に回り、激しい金属音が街を揺らす。
TYPE-Z∞は圧倒的な力で反撃し、周囲の建物を一瞬で破壊する。
崩れ落ちた壁の陰で、ミラは泣きながら祈った。
「……ゼロ……お願い、負けないで……」
ゼロは拳を構え、力を解放する。
怒りと悲しみ、そして“誰かを想う痛み”――そのすべてが、力に変わる。
「……俺は、守る!」
TYPE-Z∞の刃が振り下ろされる。
その瞬間、ゼロの拳が閃光のように走った。
衝突の衝撃が空気を裂き、地面が波打つ。
赤と青の光が空に爆ぜ、灰色の世界を一瞬だけ照らした――。




