潜む影
街の瓦礫の間を進むゼロと三体の自動人形、リリスとミラ。
焼け焦げた壁の隙間から、かすかな呻き声が聞こえる。
ゼロは立ち止まった。
「あれ……?」
瓦礫の下に、動けなくなった人間の姿が見える。
小さな血の跡が地面に広がり、痛ましいほどにその苦しみが伝わってくる。
リリスは瞬時にミラを抱きかかえ、視線を逸らす。
「……見ない、見ちゃダメ……」
ミラも小さく息を呑み、肩を震わせる。
アッシュが前に出て、瓦礫を踏みつけながら状況を確認する。
「ゼロ、これも敵の仕業か……」
グレンが冷静に分析。
「おそらく……人間を敵視する自動人形が、街に潜んでいる。捕まえた者に制裁を加えているようだ」
ゼロの拳が微かに震える。
怒りと悲しみ、そして何より――胸の奥で博士の声が再び響く。
『人間には手を出すな』
ゼロは葛藤する。目の前の無力な人間を守るべきか、それとも……
瓦礫の隙間から、赤く光る瞳が動く。敵だ。
衝撃波が瓦礫を弾き、地面に倒れていた人間が小さく声を上げる。
血と埃にまみれ、苦痛で声を震わせる姿――それを見て、ゼロの怒りは再び燃え上がる。
だが、破壊を止める理性もまだ消えてはいない。
「……守る……」ゼロは低くつぶやき、敵の進路を遮るため前に出る。
アッシュたちもすぐに戦闘態勢に入る。
瓦礫の迷路の中、火花が散り、金属がぶつかる音が街に響き渡る。
リリスはミラを抱え、息を整えながらも心の奥で恐怖を抑える。
「……こんな街……でも、守る」
ミラも小さな声で答える。
「私も……守る……」
ゼロの瞳には、怒りの赤と理性の青が混ざり、戦場に光を落とす。
瓦礫の陰から、敵の自動人形の影がちらりと動く――
そして、また新たな戦いが幕を開ける。




