第9話『暗黒衣装会議、呪いのドレスは誰の手に!?』
文化祭の出し物は「呪詛メイドカフェ」に決定(※半ば暴力的なジャンケンによって)。
さっそく衣装や内装の話し合いが始まったが、
当然のように、全員が暴走します。
「じゃあ衣装会議、始めるよー!」
まひるがホワイトボードの前に立つと、クラス中がざわついた。
「黒メイド服が基本だとして、袖はレース? それとも和風にする?」
「いっそ呪符とか縫い込んでみない?」
「それはガチの方の呪いだよ!?」
あかりのツッコミが今日も冴える。
「私はこういうのがいいと思う!」
と、手を挙げたのはこよみ。掲げられたスケッチには――
フルプレートアーマーのメイド服。
「重すぎてホール回れないでしょ!?ていうかどうやって呪いをかけるの!?物理で!?」
「魔法は筋肉から生まれる……って、うちのおばあちゃんが言ってた」
「そんな家訓があるの!?」
「私はこっち!」
今度はひよりが出したデザインは――
黒フードに赤い目、スモークが常に出る仕様。
「それもうメイドじゃないよね!?どっちかっていうと終末的な預言者系だよね!?」
「“お客さま、呪われたいのですか……?”って声かけるの」
「そんな接客されたら全員引き返すわ!」
そんな中、あおいが静かに手を挙げた。
「……これ、わたしが考えた衣装……」
ふわっとしたシルエットの黒いワンピースに、レースのエプロン。
小さな帽子には十字の刺繍があしらわれていて、
どこかクラシックで、でもどこか影を感じさせる雰囲気。
「これ……かわいい!」
「でもちゃんと“呪詛感”ある!」
「むしろ本命来たって感じ!!」
一気に場の空気が「あおい案」推しへと傾いていく。
「じゃあこれを元に衣装作りスタートだね!」
まひるがそう締めたところで、ひよりがぽつり。
「でもこの衣装って……作るの、めっちゃ難しくない?」
「え?」
「だってレースとか多いし、縫うの大変だし、布代も予算ギリギリだし……」
「そ、そうか……!」
現実がクラスを襲う。
「じゃあ妥協案でいこう!」
結局、採用されたのは――
・ベースはあおい案
・難しい部分は省略
・呪詛感だけは残す(こだわり)
最終的に、「かわいいけど呪われそうなメイド服」が爆誕。
「これでいこう!」
「誰が縫うの?」
「……ひより?」
「なぜ!?」
「手先器用そうだし、普段から手芸部でしょ?」
「わたし料理部だよ!?包丁しか持ったことないよ!!」
「じゃあ裁縫ハサミもいけるね!」
「そういう問題!?」
衣装は決まった。
問題は、それを縫う人間が誰もいないということ。
次回は“地獄の作業日”スタート!
ミシンが唸り、クラスが泣く――。