第5話『はじめての調理実習、鉄の胃袋が試される!?』
料理、それは愛と勇気と包丁の戦いである。
しかし――もしそこに集ったのが、カップ麺育ち×自由人×妄想魔女×芸術肌の4人娘だったなら?
理科室が爆発した日以来の非常ベルが鳴るかもしれない。
そんな予感を抱きつつ、調理実習、始まります。
「よーし、今日はいよいよ調理実習!テンション上がってまいりましたー!」
朝からハイテンションのあかりが、エプロン姿で決めポーズ。
それに続いて、クラス全員が調理室へと移動し始める。
「でもさ、今日のメニュー、なんだっけ?」
「肉じゃがだよ、肉じゃが! 簡単そうで実は奥が深いやつ!」
「……私、ジャガイモの皮むきでいつも3枚くらい削るんだけど、それって正解?」
「それもうジャガイモの骨見えてるよ」
メンバー分けの結果、あかり・ひより・みつき・こよみの“バカ四天王”が同じ班に。
先生の悲鳴が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。
調理開始10分後――
「ぎゃああ!ジャガイモがヌルヌルして逃げた!」
「ひより、それ芽の部分が完全に残ってる!毒持ってるやつ!」
「えっ、ジャガイモって毒持ってるの!?わたし、今日命をかけてたの!?」
「料理って、そんなデスゲームじゃないから!」
一方その頃――
「フライパン、熱したよ~」
「なにその煙!?スモーク肉じゃが!?煙突料理!?」
みつきは油を入れるのを忘れて鍋底で直接肉を焼き始めていた。
調理台からメラメラと炎のオーラ(※比喩ではない)が立ちのぼる。
「火ぃぃぃぃ止めてえぇぇ!」
「大丈夫、私、夢で料理してたから!」
「ひよりの夢に現実を委ねるのやめてー!」
その頃、こよみは――
「……できた」
静かに皿に盛りつけられた、黄金色の肉じゃが。
「え?マジで?普通に美味しそう!」
「わたしの胃袋が初めて安堵した……」
「この班、ついに“まとも”を習得したのか……!」
こよみは静かに言った。
「家庭で手伝いしてたからね。料理は、まあまあ好き」
「あかん、それだけでプロに見える……!」
試食タイム。
こよみ作の肉じゃが →
→ 安心の味。やさしさが染みる。
あかり&みつき作の肉じゃが →
→ にんじん:硬い。じゃがいも:半生。肉:存在感なし。
→ 総評「牙のない野生動物のような料理」
ひより作の肉じゃが(幻) →
→ 調理中に溶けて消失。器の底には、ジャガイモの霊だけが残っていた。
こうして最初の調理実習は――
笑いあり、炎あり、そしてちょっぴり胃薬の味を知る時間になった。
だけど、失敗しても楽しかった。
きっとまた次もバカなことをしながら、少しずつ“青春”の味を覚えていくのだ。
次回、たぶん火災報知器は鳴りません(たぶん)。