第48話 『脚本会議、暴走する文芸少女と止まらないSF脳』
文化祭の劇って、どこから決まると思いますか?
そう、脚本です。
そして脚本と言えば、文章を愛する人が書くものです。
でも、“愛しすぎて”しまうと……どうなるかって?
――今、それを目撃していただきましょう。
(放課後・脚本係会議)
ひより「というわけで脚本は、我らがしおん先生にお任せしたいと思いまーす!」
しおん「ふふ……では、わたくしの“幻視世界詩劇”を……」
まどか「(しおんさんって、たしか文芸部出身の“やばい人”だったような……)」
こよみ「覚悟して。彼女が一度ペンを持つと、帰ってこられないから」
あかり「え? 何から? 魂?」
(5分後・タイトル発表)
しおん「タイトルは……
『銀河零落機関・双極ノ終末奏(ギャラクシードミノ・ツインズエンドシンフォニー)』」
みつき「タイトルの時点で情報過多なんだけど!?」
いおん「強そうではあるけど、どう演じるのそれ!?」
ひより「なにそれ超かっこいいじゃん!! いただきです!!」
まどか「ちょっと待って、内容ってどうなってるんですか?」
(しおん、原稿を広げる)
しおん「第一幕、“記憶喪失の星の皇女と、時空を越える双子の騎士たちの邂逅”」
しおん「第二幕、“歌う人工恒星による詩的反乱”」
しおん「第三幕、“宇宙最終裁判と闇を抱く月の神”」
みつき「おいコラ。1ミリも“高校の文化祭劇”っぽくないぞ!!」
こよみ「設定多すぎて、脳がフリーズする……」
いおん「てか、どうやって演じるの? 宇宙空間とか、星の裁判とか!」
しおん「大丈夫……私の中では、すでに完成しているのよ。光の波動も、闇の対話も」
あかり「ポスターには“空飛ぶ制服女子”を描いていいかな?」
みつき「やめとけって!!!」
(翌日・緊急会議)
まどか「……というわけで、このままでは本番に“誰も理解できない劇”が爆誕してしまいます」
ひより「えー? でもカッコいいじゃん! 宇宙! 銀河! ロマン!!」
こよみ「方向性を整理しないと、観客が迷子になる……」
みつき「わたしが簡略版を書き直す。要するに、“宇宙戦争する双子姉妹の成長と和解”ってことでいいんでしょ?」
しおん「……脚本を修正、ですか?」
いおん「(まずい……目が遠くを見てる……)」
しおん「――いいわ、任せる。でも私は最後まで、私の宇宙を描き続ける」
あかり「すごい、プロ作家みたい……いや詩人かも……?」
まどか「つまり……ひよりさんとしおんさんは、“突っ走る創作者コンビ”ということですね」
みつき「そして残りの私たちは、その暴走を“形にする係”ってことか……」
(放課後・脚本印刷)
みつき「というわけで、セリフ調整済み台本を作ったよ。初心者向けにト書きもつけた」
ひより「ありがとう、助手!!」
みつき「誰が助手だ」
こよみ「衣装案も考えた。メカ+星空イメージで、5着までは作れる」
あかり「ポスターは“星空で手を取り合う姉妹”にするね!」
いおん「大道具は……宇宙船っぽいセット、作ってみる!」
まどか「広報と会計は任せて。“やりすぎ注意”でいこうね?」
しおん「私の幻視、確かにこの世界に根付いたようね……」
ひより「よーし、銀河の舞台、始まるぞー!!」
みんな「おーーっ!!」
しおんの暴走脚本、ひよりの超感覚演出――
一歩間違えば大惨事、でも誰もやったことのない舞台。
バカで、無茶で、でも“本気で楽しい”ことが、少しずつ形になっていく。
それがきっと――高校生の文化祭なんだ。
第49話『怒涛のリハーサル!空飛ぶひよりと燃える舞台』




