第46話 『夏休みの宿題ってなに? 私たち、そんなに賢くない』
どんな青春も、どんな友情も、どんなバカ騒ぎも――
「夏休みの宿題」という圧倒的なラスボスには勝てない。
そう思っていた時期が、わたしたちにもありました。
(8月某日・ひよりの家)
ひより「というわけで! 今日から“合宿! 夏休みの宿題祭り!”を開催しまーす!!」
みつき「ようやく思い出したか夏の現実……」
こよみ「すでに8月25日だよ……提出、あと5日しかないんだけど……?」
あかり「5日もあればじゅうぶんだよ☆」
いおん「うんうん、始業式の朝に一夜漬けすればOK!」
まどか「この人たちの脳内どうなってるの……?」
しおん「……宿題とは、なにか……私の中に渦巻くこの問い……それに答える日が来たのね……」
みつき「しおんは置いておいて、とにかくやるよ!! 全員、机につけぇっ!!」
(午前・国語)
みつき「じゃあまず読書感想文ね。課題図書はこれ」
ひより「うへぇ……文字ばっかり……絵が全然ないよ?」
こよみ「それが“本”というものだよ、ひより……」
あかり「感想文って“すごいと思いました”でいいんだよね?」
まどか「小学生か!!」
しおん「……私はこの物語の底流に流れる、“孤独と対話”というテーマについて深く掘り下げ……」
いおん「うわぁ、しおんが文学モードに入った! 誰か止めてー!」
ひより「こうなったら……! 書くしかないっ、“読書感想漫画”をっ!!」
みつき「勝手にジャンル変えるなーーー!!」
(昼・自由研究)
まどか「次は自由研究! ちゃんとテーマ考えてる?」
あかり「『日なたにプリンを置いたらどうなるか』っていうテーマで3週間観察してた!」
こよみ「地味に気になる……けどそれレポートにできるの?」
ひより「私は『目をつぶってカップラーメンを何秒で食べられるか選手権』やったよ!」
みつき「科学どこいった!?」
いおん「私はしおんと一緒に、“流れる雲に名前をつける”っていう自由研究やった!」
しおん「そう……これは“哲学の旅”だったの……」
まどか「頼むから、普通の研究して……!」
(午後・数学)
みつき「はい、次は数学のプリント。いい? 計算問題、公式、関数。集中して!」
ひより「いやだぁあああ!! 数字が襲ってくるううう!!」
あかり「1+1=うーん、だいたい3かな☆」
こよみ「だいたい、て言った今!?」
まどか「“関数”の“か”の字を書いた瞬間、ひよりの目が死んでるんですけど!?」
しおん「この数式は……存在と無の境界線を揺らす詩……」
いおん「もうダメだこのチーム。計算に正気が足りない!」
(夕方・進捗確認)
みつき「進んだ宿題:国語半ページ。以上」
全員「少なっっ!!」
みつき「この調子だと、提出間に合わないよ!? 本当にいいの!?」
ひより「大丈夫……こういう時は奥の手があるんだよ……」
こよみ「まさか……?」
ひより「“先生の目がバグるくらいの勢いとテンションで提出すればなんとかなる理論”!」
まどか「なるかあああああっ!!!」
こうして、夏休みの宿題合宿は無事――
いや、全然無事じゃないまま幕を閉じた。
残されたのは、プリントに書かれた「?」の山と、魂の抜けた委員長だけだった。
次回、彼女たちがさらに地獄を見る!?
第47話『わたしたち、文化祭の係決めで壮絶な心理戦してる!?』




