第4話『雨の日、教室での秘密基地計画!?』
春の嵐、というやつでしょうか。
雨がザーザー。風がビュービュー。
傘はあるけど、気持ちは沈みがち。そんなとき、教室で静かにしている――
はずだったのに、なんか「秘密基地」って言葉が聞こえた気がしたんですけど?
「ひより、今日、雨ヤバくない?」
しおんが、窓の外のびしょびしょの世界を見ながらぼやいた。
「ねえ見て、傘が風に負けて骨折してる……わたしの傘……」
「それ、なんで開きながら走ったの!?」
放課後の教室、外は豪雨。
部活は中止、校庭は沼、そして下校もためらうレベル。
みつきがカバンから何か取り出した。
「こんな日は、教室を秘密基地にするしかないでしょ」
「出たな、みつきの“即興で何か始める”病……!」
「ねぇ、なんでそういう病名みたいになってるの?」
みつきの手には、折りたたみ式の簡易ランタン、そして机をぐいっと動かし始める。
「ここの机をこうして……カーテン代わりに上着をかけて……ほら、もう秘密基地完成!」
「すばやすぎる!動線完璧か!」
「……あれ、ちょっと、楽しそうかも」
あかりが遠慮がちに入ると、次々と他のみんなも集まり――
気づけば教室の隅っこに、机と椅子で組まれた“ちょっと豪華な秘密基地”が完成していた。
「うわ、これ入ったら出たくなくなるやつ!」
「でもこれ……先生が見たら怒られるよね?」
「大丈夫。見つかる前に“消える”」
「何を!? なにが“消える”の!?」
こよみが落ち着いた様子で言った。
「でもこういうの、たまには悪くないわよね。学校に住んでる気分になる」
「実際、こよみちゃん1週間くらい住めそうな顔してるもんね」
「どんな顔よ、それ」
いおんが、くるっと一回転して両手を広げた。
「この基地に名前つけようよー!」
「おお、いきなり来たな、ネーミングセンス問われるやつ!」
「じゃあ、えーっと……“秘密のバカ会議室”」
「バカって入れちゃうの!?」
「“バカ”が私たちの共通点でしょ?」
「……なんか納得しちゃうの悔しい……!」
しばらくして――
校内放送が流れる。
『下校時刻を過ぎました。生徒の皆さんは速やかに帰宅してください』
「うぅ、帰らなきゃいけないのかぁ……」
「秘密基地……崩さないで明日も来たい……」
「ダメだよ、そもそも机戻さないと先生がブチギレるってば!」
……こうして、後ろ髪を引かれつつも、秘密基地は本日をもって一時撤収。
「でも、また雨の日が来たら作ろうね」
「うん。また“バカ会議”しよう」
「ねぇ、その名前は変えよう?」
そうして、今日も教室は平和だった(ギリギリ)。
雨の日に教室で基地を作ったこと、みなさんも一度は……ありますよね?
(ない? ない……?)
次回、第5話は『はじめての調理実習、鉄の胃袋が試される!?』
何が起きるのか、もう予感しかしません。お楽しみに!