第32話『全力疾走!体育祭リレーは命懸け!?』
体育祭――それは青春の代名詞。
だが、我らがクラスにとっては“命のやりとり”。
バカと笑いと汗と、あとちょっとだけ努力の話。
(体育祭当日・校庭)
「よし、気合い入れていくよー!!」
ひよりが朝から元気に叫ぶ。
「あなたが気合い入れると、何かしら壊れるのよね……」
みつきがすでにタオルを握っている。
「え、何が? ルール? 記録? 校舎?」
「“常識”だよ」
(リレー直前・控室)
「第一走者は私がいこう」
こよみが静かに名乗り出る。
「いいの!? クールなのに?」
「全速力で走るクールキャラ、見せてあげる」
「第二走者は……あたしね!」
いおんがバーニング気味に腕を振る。
「スタート前に全体力使うなよ」
まどかが後ろでスコア表を睨みながら冷静に指摘する。
「第三走者はしおんちゃんにお願いするよ」
「よろこんで! この走りで世界を……」
「破滅に導くな」
「そしてアンカーは……私!!」
ひよりが自信満々で立ち上がった。
「ダメだ、絶対に波乱の予感しかしない」
「もう結果が読めた気がする……」
みつきとあかりが同時につぶやく。
(リレー本番)
こよみ、スタート。
スラッとしたフォームで風のように駆ける。
「えっ、かっこいい……」
ひよりがぽーっとする。
「ひより、あなたアンカーだからね!? 走るよね!?」
「うん、見とれてる場合じゃなかった」
バトンは、いおんへ。
「よっしゃあああああああ!!」
全力の叫びとともに爆走。
……しすぎてカーブを曲がりきれず砂ぼこりの中に消えた。
「いおんちゃん!? どこまで行ったの!?」
「トラック外の世界……かな……」
強引に戻されたバトンは、しおんへ。
「詠唱完了! 『爆走転生・しおんブレード』!」
「え、何その技名!?」
しおんが一瞬、地面から浮いてた。
物理的に。
そして――
ひよりへバトンが渡った。
「任せて! このバカ力で!!」
バトンを受け取った瞬間――
校庭に、風が巻き起こる。
「うおおおおおおお!!!」
まさかの加速。
ひより、疾走。
ただし、方向が違う。
「どこ行ってんの!!」
「違うクラスのゴールに突っ込んでる!!」
(数分後・結果発表)
クラスのリレー順位:5位。
「うちらの努力、たぶん方向が斜めだったね」
「ひよりのせいです」
「いや、でもさ! 楽しかったし、いいじゃん!!」
「うん、まあ……それは……」
みんなで笑いあった。
記録より記憶。
笑顔とバカの体育祭。
次回はまどか主役の「学級委員、反乱を企てる?」!?
お楽しみに!




