第31話『早乙女しおんの読書録〜この一冊で世界は滅ぶ〜』
平和な一日。
ただし、それは「しおんが静かに本を読んでいれば」の話。
問題は、読んでいる本が“普通”じゃないときだ。
(放課後・図書室)
「……ふふ……見つけたわ……」
しおんが一冊の本を手に、微笑む。
『世界神話と召喚術入門:第十三禁版』と書かれている。
絶対ヤバい本である。
「しおん? なんか嫌な予感しかしないんだけど」
ひよりがのぞき込んだ瞬間、しおんが振り返る。
「ついに、世界の真理に触れてしまったの……」
「ダメだこの人、また発動してる!」
(別の場所・教室)
「早乙女さん、今日はまた何を読んでたの?」
まどかが、気遣いモードで聞く。
「古代言語で記された“次元崩壊詩篇”よ」
「そっとしておこうか」
「うん……」
「このページには、“古の神”が封印されているの……詠めば世界が……」
「詠まないで!?!?!?」
みつきのツッコミが雷のように炸裂。
「でも、試してみたいのよ……! 何も起きないかもしれないし!」
「一番危ないやつのセリフだよ、それ!!」
(帰り道・公園)
しおんが木陰に座り、詩篇をそっと開く。
「……〈イン・ナ・ア・ブリュル・ファ=ダゴン〉……」
周囲の風が、一瞬止まる。
「ちょっ、やっぱダメだってば!!」
ひよりが飛びつき、本を閉じる。
「でも、ちょっと面白くなってきたじゃない?」
「それが一番怖いんだよ!!」
こよみが全力でツッコむ。
「このままだと、しおんが“古のバカ神”を召喚する……!」
「待って、それ私たちのいつもの日常だよね?」
「つまり――すでに召喚は完了していた……」
みんなでしおんを見た。
「なんで私!?」
(エピローグ)
結局、しおんの本は図書委員に強制的に回収された。
「なんであの本、図書室にあったんだろうね……」
「しおんを引き寄せるためだよ、たぶん」
「私、読書してただけなのに……」
しおんはちょっとしょんぼりしていたが、
「じゃあ次は、ポエム書こうっと」
「絶対そっちの方が危険!!!」
早乙女しおんと本の相性は最強――
ただし、世界が終わらない保証はない。
読書の秋、爆走中。
次回、ひよりといおんの謎対決!?




