第30話『日常回復?いいえ、事件です』
文化祭が終わり、季節は秋めいて。
ようやく落ち着いた日常が――戻ると思ったか!?
バカの集団に“平穏”は似合わない。
始まるのは、新たな(くだらない)戦い。
(朝の教室)
「ついに……この日が来てしまったわ……」
しおんが机に伏せて、ぼそぼそと呟く。
「何の日?」
ひよりが椅子の上で体育座りしながら聞く。
「“何もイベントがない、普通の平日”という名の虚無よ……」
「それはそれでよくない!? 心安らぐでしょ!?」
「いやいや、みつき、それは違う」
こよみが真顔で口を開く。
「この学校に“普通の平日”なんて一日たりとも存在しないんだよ」
「えっ、呪われてるの?」
あかりが純粋な目で聞いてきた。
「それは否定できない」
まどかが真面目な顔で頷いた。やめて。
(チャイムが鳴り、1限目開始)
担任・武田先生「はいはーい、今日は連絡事項だけだから自習にしまーす」
「先生! それはつまり、“自由時間”ということですか!?」
いおんが目を輝かせて聞く。
「いや、自習って言ったよね!?」
しかし数分後――
(黒板前)
《第一回・平日ヒマつぶし大会~優勝者には焼きそばパン~》
「よっしゃあああああああああ!!」
ひよりが教卓の上で叫ぶ。先生は諦めた目で座ってる。
「ルールは簡単! 30分以内に一番“くだらない遊び”を考えた人が優勝!」
「この学校の教育、大丈夫かな……」
みつきが額を押さえる。
「いいのよ、バカはバカらしく!」
こよみがサムズアップしてくる。目がまじ。
「私は“無音でUNO”っていうのを提案するわ」
しおんの提案、いきなり高度。
「私は“片足でリズムゲーム”を!」
いおん、やる気満々。
「“焼きそばパンの具だけを詠む俳句選手権”とか」
あかり、それはもはや文学。
「じゃあ私は“教室内かくれんぼ”で」
まどか、それ普通に無理あるよ!
「決まりだね!」
ひよりの号令とともに、謎の大会が幕を開けた――
(数十分後)
「俳句:『茶色かな/パンの奥より/呼ぶソース』」
「……しみる」
「UNOは無音だとめっちゃ怖いってわかった」
「視線で殺し合うからな……」
「いおん、まだ片足で踊ってるの?」
「リズムは、心の中に……!」
「私は誰にも見つかってないわ!」
まどか、まさかの窓カーテンの中に潜伏。
(最後、机の上)
「じゃあ、優勝は……この日常を“事件”に変えてくれた、みんな全員です!」
「なんだそれ!」
「でもうれしい!」
そして結局、焼きそばパンは7等分されたのだった。
文化祭の熱気が冷めても、彼女たちのテンションは変わらない。
騒ぎがない日は、彼女たちが騒ぎを作る――
それが“平和”というもの。
次回、何が起きてもきっといつも通り!




