第3話『帰り道、謎の追跡者(?)登場!』
新学期はじまって3日目。
転校生たちともすっかり馴染み(?)――いや、勝手に馴染ませて――今日は放課後!
なのに、なんか、後ろが騒がしいんだけど……?
「ねぇ、なんかさ……さっきから後ろついてきてる人、いない?」
帰り道。
私、ひよりは、駅前の道を歩きながら振り返った。
「……ついてきてる?」
しおんが警戒した表情になる。
「ストーカーだったらどうするのよ。警察案件よ、これは」
「しおんちゃん、なんでそんな即座に警察脳なの……?」
そのとき、みつきがポケットからさっとスマホを取り出し――
「じゃあさ、写真撮って拡大して見ればよくない?」
「それ撮って大丈夫なやつ!?」
あかりが心配する中、すでに撮影済みのみつきは、ズームアップした画像をこちらに見せた。
そこには――
「……あれ?」
「……見たことあるな、この人」
「って、あれ! 生徒会長じゃない!?」
「えっ、えっ!? なんで!? なんで生徒会長が私たちを尾行してんの!?」
その場がざわつく中、こよみがスッと一歩前に出て、まるで刑事のように呟いた。
「……これは、公式な監視ね」
「公式!? って何それ、どういうこと!?」
「きっと、生徒会的に問題児認定されたのよ、あなたたちが」
「認定されるようなことしてないもん!!(多分)」
いおんが手を挙げて明るく言う。
「わたし、転校初日に中庭の噴水に落ちたけど、それはノーカウント?」
「全力でカウント対象です!」
そんなこんなで――
「もう! こうなったら問い詰めに行くよ!」
私は意を決して、尾行者……もとい、生徒会長の前に立ちはだかった。
「……つけてきましたよね!? わたしたちを!!」
生徒会長――その名は若宮・カレン(わかみや・かれん)。
高身長・金髪・赤縁メガネという、「ザ・風紀委員長」な外見で、しかも常に冷静沈着。
そのカレンが、まったく動じずこう言った。
「つけていたのではありません。観察していたのです」
「それって、言い換えただけじゃないですかーー!!」
カレンは一歩近づき、冷たく言った。
「入学式の日に早弁した者、校門前でツイスト踊っていた者、謎の旗を振っていた者……すべて記録済みです」
「旗って!いおんでしょ!? 何やってたの!?」
「『転校祝い!いおん襲来!』って書いた旗を作ってたのー!」
「自作だったの!?」
こよみが呆れた目で言う。
「だから言ったじゃない、問題児扱いだって」
「だからって尾行する!? 正義ってそんなに監視寄り!?」
すると、まどかが遠慮がちに手を挙げた。
「……あの、私、なにもしてないと思うんですけど……?」
「あなたは……ギリセーフです」
「ギリ!? ギリなの!?!?」
結局――
生徒会長は、「私の任務は終わった」とだけ言い残し、すたすたと立ち去っていった。
「まるで謎の組織のスパイみたいだったね……」
あかりがポツリと呟くと、いおんが元気に手を振った。
「またねー生徒会長ー!」
「見送るんだ!? もう仲良しじゃんそれ!!」
こうして、今日の放課後も騒がしく幕を閉じ――
「……まどかちゃんだけ“ギリ”っての、なんか悔しいわね」
「そう? 私は何にもしてないから良かったと思ったんだけど……」
「じゃあ明日あたり一緒に何かやろっか!ね!」
「えっ、えっ!? 問題児になる前提の誘いですか!?!?」
まどかの平穏な日々は、まだ始まったばかりだった。
まさかの生徒会長が登場。
……あの人、たぶんこれからも地味~に関わってくる予定です。
次回第4話は『雨の日、教室での秘密基地計画!?』
傘がなくても、私たちには笑いがあります(たぶん)。お楽しみに!