第29話『打ち上げ!戦士たちは焼きそばパンで語り合う』
激闘の末に幕を閉じた文化祭演劇。
残されたのは、燃え尽きた舞台装置と、観客の脳内に残る謎の記憶――そしてお腹のすいた女子たち。
打ち上げは、いつだって“バカ”の祭典。
ギャグと炭水化物の雨が降る。
(放課後・教室)
「というわけで、本日はクラス劇お疲れ様打ち上げ会を行いますー!」
ひよりが両手を挙げて宣言すると、拍手とともに教室の机の上に次々と現れる紙皿、ジュース、そして焼きそばパン。
「うちの打ち上げって、いつも焼きそばパンが主役だよね」
みつきが呆れたように言うと、
「主役だよ。異論は許さない」
こよみが真顔で返してきた。
「どこかの星では、焼きそばパンが通貨だって聞いたことがあるわ」
しおんがそんなウソのような設定を語り出す。
「それ、しおんが書いた小説じゃん!!」
「……よく覚えてるな」
「っていうかさ、打ち上げって“振り返り”するもんでしょ!? 何がよかったとか、改善点とか!」
まどかが委員長ムーブを発動しようとするが、
「改善点? ないよ」
ひよりが即答。
「え、ないの!?」
「完璧だったじゃん! 宇宙が救われて! 友情が芽生えて! 最後に爆発して! 私の作った変身ベルトが光ったんだよ!」
いおんが誇らしげに語ると、あかりが小さな声で言う。
「でも……お客さん、終始ぽかんとしてたよ?」
「それは! 未来を先取りしすぎたから!!」
しおんが叫ぶ。たぶん意味不明。
「てか、先生……怒ってなかった?」
こよみの質問に、全員がフリーズ。
(数分前・職員室)
担任教師(灰になったような顔)「……一体、私は何を見せられたんだ……」
(教室)
「大丈夫! 明日には忘れてるって!」
ひよりの発言に全員が大爆笑。
「でもほんと、おつかれさまだったよね。ちゃんと全員でやりきったし」
まどかの言葉に、自然と静かになる空気。
「バカなことも、真面目なことも、全部一緒にやるから楽しいんだよね」
みつきがぼそっと呟いたその一言が、妙に心に響く。
「……いいこと言った!」
「急に感動入れるのやめて!? バカしかできない体になってるから!!」
「じゃあ、最後に一言ずつ言って締めようか」
しおんが提案し、みんな頷く。
「うちら……」
「今日も……」
「全力で……」
「宇宙にバカだった!!」
「いや、宇宙“に”って何!?」
「“で”のほうが正しい気がする!」
「どっちでもいいわ!」
そんなこんなで、
焼きそばパン片手に笑い合う彼女たちは、どんな星より輝いていた。
バカは終わらない。友情も終わらない。焼きそばパンも減らない。
次回からは文化祭後の日常編に突入――
けれどもちろん、“平和”の定義はひよりたちの辞書には存在しない。
バカたちの放課後は、まだまだ騒がしい。




