第27話『文化祭リハーサル!舞台上で大暴走、全員演技崩壊!?』
タイトルに嘘はない。
照明は落ち、幕は上がり、テンションは天井を突き破る――が、完成度は地の底。
“リハーサルだからセーフ理論”を掲げてA組は今日も前のめり。
銀河最終戦争(※忍者風味)、開戦です。
放課後の講堂は、文化祭前日特有のざわめきでいっぱいだった。
舞台袖には段ボール宇宙船、黒布で強引に整えられた“銀河忍者服”、カツラ、そして謎のスモーク缶。
ひなた(演出)「点呼。主役、照明、音響、プロップ、全員スタンバイ!」
全員「おー!!」
ひなた「よし。じゃあ――通しいきます」
まひる(AI猫)「ミャオーン☆」
――の直後、音響席から甲高いキィーンというハウリング。
さくら(銀河姫)「うぅわっ!?耳死んだ!宇宙の叫び声ってこれ!?」
音響・いおり「マイクミュート忘れてたごめん!!」
ひなた「“宇宙の叫び声”は台本にない。やり直し」
*
第二惑星シーン。
つむぎ(総司令)「姫様!ダークちくわ軍団が――」
――ボフン。スモークが爆発的に噴き上がり、前列が白く消える。
こより(漆黒の騎士)「視界ゼロで殺陣は無理!!」
照明・くるみ「スモーク量“弱”にしたのに、缶の寿命が反抗期……!」
ひなた「煙は“伝説”じゃなく“事故”を作る。換気。次」
*
宇宙船の発進シーン。
まひる「エンジン始動、三、二、一――」
段ボール船がガガガと予想外の速度で前進し、そのまま舞台下手へ脱輪。
さくら「待って、姫が置いてかれてる!?」
こより「操縦AI、学習が早すぎる」
つむぎ「誰だキャスターに油塗ったの!」
いおり(小声)「ヌルヌルってカッコいいかなって……」
ひなた「舞台はF1じゃない」
*
暗転。
照明が落ちきる前に、まどか(預言者)が勝手に登場。
まどか「……星がささやく。『シュッ』」
観客席の練習班:クスクス……(笑いが走る)
ひなた「アドリブ3文字で爆笑取るのやめて。忍者封印って言ったよね?」
まどか「封印の札、家に忘れて……」
ひなた「口を封印しろ」
*
クライマックス手前。
ほのか(騎士)とこより(裏切り者)の決闘、立ち回り開始。
ほのか「剣を捨てろ。まだ帰れる場所がある」
こより「帰る場所なんて――」
――ドスン。背景パネル《星雲D-2》が倒れ、二人を包み込む。
こより「(パネルの下から)これ、銀河の重力……!」
ほのか「(冷静)ビスが足りないだけです」
舞台監督・霧島(生徒会)「安全ピン追加、留め具二段化。次、続けて」
ひなた(小さく親指を立てる)「助かる」
*
最終決戦。
さくら「この光が、みんなの――友情の――」
――ピー…ガガッ。音響席から謎のBGMが流れる。
♪「ちゃらっちゃっちゃっちゃ~~~」※どこかで聞いたことがある“変身風”
全員「それ、ひよりのうさ耳スーツ内蔵BGMじゃん!!」
ひより(袖で白目)「Bluetooth勝手に繋がった……」
ひなた「音切れ!“友情=変身”は安直!!!」
*
通し終了。
舞台上に崩れ落ちるA組。雑巾とガムテとため息の海。
ひなた「……良かったところから言う」
全員「(え? 怒られる流れじゃないの?)」
ひなた「①台詞の入りが前より半拍早くなった。テンポが出てきた。
②ほのかの“間”がきれい。こより、そこで呼吸を合わせて。
③さくらの声、上手に抜ける。上向かず客席三列目の奥を見る意識で」
さくら「……褒められた……!」
こより「呼吸、合わせる。了解」
ほのか「(小さく頷く)」
ひなた「改善点は三つ。メモれ」
ひなたはホワイトボードに、太字で書く。
立ち位置テープ:色分け(赤=主役、青=対立、黄=コメディ)で床貼り直し
アドリブ規約:3秒以内/台詞末尾の補強のみ(「シュッ」禁止)
合図の合言葉:暗転明けの呼吸合わせは――「バカでも前へ」
まひる「合言葉が酷すぎて逆に覚えやすい」
つむぎ「泣ける」
まどか「シュ……(ひなたの視線)……承知」
霧島(生徒会)「客席動線、あとでマークしておく。安全第一」
若宮会長「……期待してる。A組の“やらかしじゃない方”、初めて見たい」
ひなた「見せるよ。やらかし“だけ”じゃないA組を」
その言葉に、舞台袖でなぜか拍手が起きた。
ガムテの巻き芯がコロコロ転がり、スモーク缶が静かに冷える。
誰も口には出さないけれど、胸の中には同じ熱が灯っている。
――“間に合わせる”。
いや――“ちゃんと、届かせる”。
ひなた「もう一回、いける?」
全員「いける!!」
ひなた「よし。暗転――合言葉」
全員「バカでも前へ!」
暗闇で、みんなの声が重なって、ひとつになった。
リハは大崩壊、でも心は揃ってきた。
“バカでも前へ”――それは合図であり、合意であり、A組の旗印。
いよいよ次回、文化祭本番。
客席は満員、スモークは控えめ、テンションは最高潮。
第28話『開演!銀河最終戦争――バカと友情は舞台を救うか』




