第10話『裁縫地獄、針と糸と絶望と』
文化祭の衣装デザインが決まり、いよいよ製作へ。
だが、そこには“作る人が誰もいない”という絶望が待っていた。
縫い物スキルゼロのクラスメイトたちが、針と糸とミシンに挑む!
「ミシン、ってどこにあるの?」
登校してきたまひるが開口一番に尋ねた。
「家庭科室……のどこかにあるはず……」
と、こよみが指差すも、そこにあったのは
“昭和生まれ”のレトロな足踏みミシン。
「逆にどう使うのこれ!?」
「とりあえず説明書……は無いとして、感覚でやってみよう!」
と、ポジティブすぎる発言をしたのは、なぜかテンション高めのひより。
「よし、縫うぞ!」
ガチャンガチャンガチャン――!
「縫えてる!?ねえ、縫えてるのそれ!?」
「布が破れてる気がするんだけど!」
「逆に味が出てるでしょ?呪詛的な意味で」
「呪いって便利な言葉だね……」
「わたしにもやらせてみて!」
と、まひるがチャレンジ。
「いける、わたし裁縫セットなら家にあるし!」
といいつつ、第一針目――
「アッッ!!」
「刺した!?自分の指!?!」
「だ、大丈夫!これは“血の契約”ってことで!」
「いや、事故だよ!?それ保健室案件だよ!?」
「でもこれじゃ終わらないよね……何着分あるんだっけ?」
「クラス全員分+予備で30着以上……」
「30!?」
「布……何メートル買ったの……?」
「たぶん、体育館3周分くらい」
「無謀すぎるよこの計画!!」
そのとき、静かだったあおいがそっと手を挙げた。
「……わたし、少しなら手伝えるかも」
「えっ!?裁縫できるの?」
「……うん、昔、おばあちゃんに教わって……」
「天使現る……!」
そして――
あおいの手際のよさは、
**「レベルが違う」**の一言に尽きた。
「え、ちょっと待って、あおいちゃん、もう一着できたの!?しかも完璧!!」
「布のカーブも綺麗……折り返しもプロ級……!」
「そのへんのメイドカフェに売れるレベルじゃない!?」
「……でも、全部は無理だよ?」
「うん、わかってる!あおいちゃんに頼るのはやめよう!我々も成長しよう!」
(※なお、このあと再びまひるが指を刺しました)
結局、文化祭前の数日間、
放課後は連日「裁縫地獄」。
・ミシンがうなる(うまく縫えない)
・針が飛ぶ(指に刺さる)
・糸が絡まる(心も絡まる)
でも、笑いながら、叫びながら、
みんなで少しずつ、ドレスが形になっていく。
文化祭準備、順調とはいえないけど……。
それでも、少しずつ完成に近づいてる。
次回――
ついに開幕!呪詛メイドカフェ(仮)!
地獄の営業初日が、幕を開ける!!