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水も滴る美少女天使と半同棲することになりました

祐樹ゆうき、春休みなんだから勉強ばっかしてないで

どっか遊びに行ったら?」


「今日は遊びには行かない予定なんだけど、そうだなぁ…まぁ勉強がひと段落着いたらどこか行ってみるよ。」


「どこかってあんたねぇ……まぁいいわ、はい、ミートスパゲッティ大盛りひとつ。」


はい、と隣に運ばれてきたトレーには大皿とサラダが入った皿にカトラリーとコップが置かれる。


(これは食べ応えがありそうだな……ははは…)

と渇いた笑みを浮かべつつ、頂きますと食事についた。




食べ終わってからもしばらく勉強をして結局時刻は21時を回ろうとしていた。


「よーし、終わったぁ…ってもうこんな時間か」


中学校を卒業して、進学前に高校の課題は出されたが

それももう終わっているので、最近は予習をやっている。


そこでふと先ほどの母の言葉を思い返す

(歯磨きしたらたまには夜の散歩にでも行ってみるか……)


ちょうど出かけようと玄関に向かっていると

寝室に向かう母と出会った。


「お母さん、明日早くから用事あるからもう寝るんだけど、どこか行くの?」


そして散歩に行く旨を伝える。


「はーい、気をつけて行ってらっしゃい」


すんなりと許可が出る。


そして手癖でスマホを何度かスクロールしていると


「あー、雨降るかもだから一応傘持って行きなさい。あと冷えるから上着もしっかりね。」


とありがたい情報を残して自分は眠いからと寝室へと向かっていった。身支度を軽く整え、散歩を開始する。




近場をまわって、もうそろそろ帰るかと思ったタイミングでポツポツと雨が降り出し、数分もしないうちに豪雨となった。


3月も終わりの頃、横時雨と言うにはいささか遅い気もするがそれほどに横殴りに強い雨だった。


だが、雨は嫌いではない。傘に当たる激しくも心地よい雨音を感じながら、今頃寝室で寝ているであろう母に情報提供を感謝していると、ふと帰宅路の途上にある近所の公園を通りかかって視線を流す


公園の隅にある屋根があるベンチが並んでいるスペースに1人同年代ぐらいの少女が座っていた。


突然雨も降ったし傘もないのかな?と思い、要らぬおせっかいとは重々承知の上で、幸いにももう一つ折り畳み傘は常備しているので、傘を渡そうと彼女に近づく。


声をかければ会話ができそうな距離で、彼女の全身がぐっしょりと濡れていることに気づく。


フレアスカートにタックインされたニットらは余す事なく水分を吸い、見た目以上に重くなっていそうなことが伺えた。


3月も終わりで最近暖かくなっているとはいえ

まだまだ夜は冷えるし、濡れた衣類は体温を奪う。


このままじゃ風邪を引くだろうと心配になり声をかける。


「君、大丈夫?」


「あ、はい……」


自分の存在に気づいてなかったのか急に声をかけられ、一瞬驚きを見せたもののその顔は今も変わらず下を向き俯いている。


雨にさらされ、公園にある街灯で青白く反射している髪はとても神秘的に感じさせる。


自分の動きが止まっていることに気づくといかんいかんと意識を戻す。


見れば彼女の身体は小刻みに震えていて、思ったより長時間この場所にいたのかもしれない。


「このままじゃ風邪引きそうだし、お家の人とか呼べない?」


「あ…えっと……」


言葉はそこで途切れてしまう、急に話しかけてしまったし、怖がらせているだろうか、でもだからといってこのまま放置してしまって風邪を引かれても夢見が悪い。


「この傘は君にあげる。それで帰って、返さなくて大丈夫だから。」


と、関わりは最小限に、できる限りのフォローをしつつこの場を去る事にする。


手に傘を押し渡されてあたふたしていて、そんな様子を見て、不器用で申し訳ないと心の中で謝罪しつつも

常時している折りたたみ傘を開き公園を後にする。


(それにしてもこんな時間に女の子が1人で公園って、家出でもしてるのかなぁ………)


そんなことを考えながら家に向かう、持ってきた折りたたみ傘は少しサイズが小さくてリュックを覆うと、少し雨に濡れてしまう。



「あ、あの…!!」


突然な声かけで、少しビクッとしてしまう。


振り返り見るとそこにいたのは先ほどの少女だ


まだ距離が少しあるので曖昧だが

ここに来るまで数十歩程度しかないだろうに

息が上がっている。


すぐこちらから駆け寄ると


「あ、あの……これ落としていってたので……」


彼女の手にはストラップのついた鍵が握られていた。折りたたみ傘を取り出すときにでも落としてしまったのだろう。


「どうもありがとう」


「では…私はこれで……」


そう言い残して振り返った直後、ぐらりと彼女の身体が倒れそうになる。すぐに駆け寄る


「えっと、体調大丈夫?もし家に電話かけれないとかだったら携帯貸せるけど…」



「…………………家には誰もいませんので……」


紡ぐようにして告げられたその言葉は

いささか衝撃的な内容ではあったが……



「……なら近くに知り合いの家とかない?」


「いないです……」




「なら……ここから少ししたら俺の家があるからその……嫌じゃなかったら……」


初対面の、それも女の子を家に連れ込むというのはそれなりに問題がありそうだが事態が事態だ。


「全然嫌ということではないのですが……迷惑になってしまいますし……」


「遠慮ならしなくていいから、それにもう風邪引いてるんじゃ……さっきも目眩なのか倒れそうになってたし……」


「でも……」


そう言いながらもなお彼女の呼吸は浅く熱っぽい。そして覚悟を決めたのか


「えっと………すみませんお願いします……」


「わかった」と微笑んで快く了承する


「じゃあおんぶするから傘だけ持ってくれる?」


歩かせようとも思ったが家はもう近いし、それ以上に彼女が限界そうだった。予想通り、すでにだいぶ辛かったのか


「はい……お願いします……」

とすんなりおんぶをすることとなった


「すみません…重いですよね」


「ううん、全然だよ」


華奢な見た目だとは思っていたがこうにも

女の子というのは軽いのかと驚いたくらいだ。


もちろん、お世辞などではなかった。


それと、おんぶをするということで、いくら緊急事態で致し方ないとはいえ内心とても緊張している。


幸い、雨の匂いで掻き消されて匂いはわからなかった。しかしながら、感触というものは消えてはくれず後ろにいる彼女には気づかれなかったかもしれない。


ただ確かに背中には歳の割には……という柔らかい感触を覚え、濡れたスカートの生地越しに伝わる感触とで微妙に頬を赤くしながら帰路に着くのであった。

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