自殺病
久しぶりに、短編を書いてみました。
ここ細菌、自分の周辺で色々あって、ふと、考えていたことです。とは言っても、この物語はもっと大きな物語の一部なんですが。
最後まで読んでいただければ、幸いです。
すでに数年前から兆候はあった。
ただ、うちの部局では取り合おうとはしていなかった。
内容を考えれば、精神医療領域の問題であり、佐野美琴の所属する疫病感染部で扱う話ではないと、ほとんどの同僚が考えていたのだ。
美琴の職場である厚生労働省疾病対策局では多くの疾病に対する対策が求められている。
特に新たな伝染病の発生は緊急課題であり、ここ十数年の多くの新型伝染病への対応で、局員の疲労は精神を蝕んでいた。
美琴も例外ではない。
にもかかわらずこの情報を無視することはできなかった。
自殺。
基本的にはあらゆる環境の負荷による鬱病を患っている者に特有なものとされている。
合衆国の機関では伝染病が示唆されているとも聞いていたが、今のところ立証はされていない。
そう、立証されていないのである。
そのことから、まだ十分に若手と言われる自分が声を上げることができないでいた。
佐野美琴はこの国の最高学府と言われている大学の博士課程前期を修了し、国家公務員一種に合格、今年で5年目になる。
専攻は情報統計学。
特に全世界的な病原体の発生から終息という問題をビッグデータと呼ばれる情報の集計整理解析を行なっていた。
その経験が良くも悪くも今回のデータを見たときに、自分の中でイメージができてしまったのだ。
自殺が他の人に感染しているのではないかというイメージ。
かなりの飛躍が伴っていることは自分でも理解している。
だが、死亡した人間の病歴、年齢、地域、行動範囲、人間関係を数値化し、それをあらゆる状況での可視化を行なった結果が美琴にその考えを確固たるものにしたのである。
我が国が誇る最新量子コンピュータ「魁」が弾き出した結果は、死亡した人物の背景を如実に物語っていた。
その因子からは当然、本来の伝染病由来の死亡は除去されている。
そしてさらに癌での死亡も排除した。
それ以外の死因、明らかな自殺以外でも事故や事件、さらには明らかな病因も含めてある。
これは結果的に脳、心臓、肺などの内臓由来の死ですら、自殺を行なった結果ではないかと美琴は考えたのだ。
そしてそこには、決して無視できない結果が現れていた。
「お前は仕事も放っておいて、何馬鹿げたことを考えているんだ!」
それが直属の上司の言葉だった。
「ですが、課長、この結果を無視することは…。」
「佐野くん、君の悪い癖だ。確かに膨大な情報量から気づかれなかった事実を抽出することが、我が国にとって非常に有益であることは認める。しかしながら、現状はその余裕はない。パンデミックがやっと落ち着いた矢先、海外で致死率の高い新型感染病の発生。どれも一つや二つではないんだぞ。さらに既存の感染症すら、この数年の病原体からの衛生的手法によって個々人の免疫力の低下により、今まで考えられないほどの罹患患者が増えてしまっている。そちらの対応も我々に回されちまった。いくら我々が優秀でも、上のものが何も考えないような奴らばかりで…、いや、今の言葉は忘れてくれ。失言だ。」
最後の方の言葉が荒れてきて、しまいには政府批判になりつつあった。
それだけ、この紳士的な所作で知られるこの課長であっても疲労は隠せないのであろう。
「とにかくだ、佐野くん。君は今与えられている業務を、しっかりとこなしてほしい。この件を忘れろとは言わん。だが喫緊の課題を解決してほしい。」
怒鳴られながらも、美琴はこの上司に反感を持てなかった。
だが、この案件を放置する気もなかった。
佐野美琴は業務外で、あるビルの前にいた。
当然厚労省から許可は取らず、半ば強引に有給休暇をもぎ取った。
先の一件で課長も自分が疲れていると勘違いしてくれたようだ 。
とりあえずは現場を見てみたかった。
美琴が見上げているビルの所有者は、中堅の建設会社の本社ビルである。
このビルにおいてこの3年間で10人もの不審死があった。
警察はすでにその10人の捜査を終えている。
結果は3人が自殺、2人が階段の転落と、大掃除中ロッカーが倒れて、その下敷きになった。さらに2人は過労死、心筋梗塞と脳卒中。
他3人のうち2人は窃盗目的でこのビルに侵入し、警報に驚いて、逃走中の転落死。
残る1人はホームレスが正門脇の花壇で凍死していた。
不審なことがないわけでもないのだが、警察は全て事件性なしとして処理をしている。
すでに美琴はこの会社の職場環境を調査した労働局の報告を確認している。
必ずしも労働環境が悪いとは思えなかった。
自殺した3人も職場でのトラブルは見当たらない。
だからと言って家庭環境やその他での事情も考えづらいという報告である。
労働局の方向が必ずしも正確とは限らないということもあったが、美琴がこの会社までわざわざ足を向けたのはまったく違う理由だった。
「大地の囁き」。
この単語に目が引かれたのだ。
自殺と断定された40代男性が飛び降りた際、この「大地の囁き」を抱えていたという報告があった。
厚労省への届出はされており、医療機器として認められたのが、2年前。
すでに発売されてからは10年近くが経過しているはずである。
特に販売当初、「身体と心の疲れた人に」というキャッチコピーが、薬機法に抵触するのではないかと、かなり騒がれたと聞いている。
美琴自身は使用経験がなく、カタログデータしか知らない。
興味がなかったというよりは、逆に興味があったものの、胡散臭さが圧倒していたのだ。
販売当初のその騒ぎは、しかしそれ以上大きくなることもなく、それどころかリラックス効果を示す論文が多数出た。
さらに臨床数と効果の報告、その後の正式な手順を踏んで、今では立派な医療機器として認可されてしまっていた。
製造販売を行なっているのは、株式会社ガイアという中小企業だったが、海外への輸出も始め、かなりの売り上げを誇っている。
一方で、その売り上げの秘密を追っていた雑誌記者が行方不明になったという、まことしやかな噂も流れていた。
この会社の代表が国会議員とも知り合いで、醜聞をもみ消した、という噂もあった。
このことについては否定しきれない事実もある。
議員の半分以上の事務所にこの「大地の囁き」があるということだ。
ストレスの多い職場であれば、都合の良い機械だろう。
医療機器と認められれば、薬に頼っているものが副作用という危険性なく精神の安定を保てるのだから。
ここでこの「大地の囁き」とともに飛び降りたものが出た。
本来ならそういった衝動的な行動を抑制するはずの医療機器を持って飛び降りるだろうか?
美琴の疑問は些細なものだった。
単純に「大地の囁き」だけでは対応できなかっただけかもしれないし、自分の大事な物と共に命を絶ったとも考えられるのだから。
「大地の囁き」は一般の薬局や薬店で購入が可能である。
であるから、その販売した個人の特定は不可能であった。
美琴はただの思いつきで、先の死亡者データに地域的な「大地の囁き」の販売実績数を地図上に重ね合わせた。
この結果が美琴をわざわざ有休を取ってまでもこの建設会社の本社に訪れさせた理由だった。
美琴は大きく息を吸い、吐いた。
美琴には当然、捜査権など持っていない。
さらには建設業という業界に対して厚生部局の自分が関与できる権限はない。
当たって砕けろ、だ。
そう自分を鼓舞し、ビルの中に入った。
美琴は自分が緊張していることには気が付いてはいた。
そのため自分の目つきがかなり厳しくなったと思った。
目の前の整った顔の受付嬢の顔が明らかに引き攣っている。
「私は厚生労働省に勤務する佐野美琴と申します。半年前に亡くなった営業部の神保悟さんについてお話をお伺いしたいのですが。」
綺麗に磨かれたエントランスのテーブルで神保悟の上司だったと言う男性を目の前にしていた。
名刺には営業部第3課課長の肩書が記されていた。
「すでにこちらとしては彼に関しての知る限りのことを警察に報告してあるのですが。」
「そちらの調査に関してではありません。あくまでもこちらの管轄でのことで…。」
「労働環境で後ろ指を刺されることは、当社は一切しておりません。」
言い方を間違えたな、美琴は少し反省した。
自分の示した名刺ではどうしても厚生労働省の部分に目が入ってしまう。
労働全般の監視を行う労働部局と勘違いされても仕方がない。
まさか死亡の死因の調査に厚生局の、しかも記された部署、疾病感染部など目に入っていないに違いない。
「お忙しいとは思いますが、今回は亡くなった神保さんの亡くなった状況の確認のためにお伺いしました。私は疾病感染部に所属しております。労働環境に関しての部局とはまた別に調査しているとお考えください。」
「疾病感染部?」
この課長は美琴の言葉に明らかに惚けたようにまだ若い目の前の女性を見た。
「特に転落死した時に「大地の囁き」があったと言う報告でした。間違いありませんか?」
「はあ〜、死んだ時の、状況ですか?」
明らかに肩透かしを食らったような表情で、全身から力が抜けていくのが美琴の目にも明らかだった。
厚労省の役人が尋ねてきたと言うことで、かなり勘繰っていたのであろう。
と言うことは労働環境について叩けば、誇りの一つや二つは出そうだった。
だが、それは美琴の職務ではない。
「それで、神保さんは「大地の囁き」をいつ頃から使用されていたのでしょうか?」
「それは流石にプライベートまでは、私には…。」
「言い方を変えましょう。この仕事場にはいつも持って来ていたんですか?それともここに置きっぱなし?」
この質問にはしばらく考えていた。
軽く、「ああ〜」と言うと美琴の目を見て口を開いた。
「あれは彼のものではないですね。確か静岡の支社に転勤した子が置いて行ったものですね。」
「その転勤して行った人の名前と連絡先を教えてはもらえませんか?」
「ええと、確か彼女は…。確か島崎沙耶香と言う子で、あっ!」
急に何かを思い出したようで、明らかに様相がおかしくなっていた。
「ああ、いやあ、あの、あのですね…、私もあちらに行ってからは、あまり、知らんとですよ。」
美琴はこれ以上の情報が引き出せないことを理解した。
これが警察で捜査権を持っていれば、この動揺につけ込む所だが、美琴は警察でもなければ、職務中ですらない。
有給休暇中の身だ。
「わかりました。ではその静岡の使者への連絡先をお聞きしてもいいですか?」
目の前の課長職の男は明らかにホッとしたように自分の持つスマホにQRコードを出して美琴の前に差し出した。
ペットボトルの水を飲み、もう一度手元の書類に目を通した。
新幹線は心地よい振動を体に与えて来て、うっかりすると眠りそうになる。
別に有給中なのでゆっくり寝てしまってもいいのだが、静岡まではあまりゆっくり寝る時間はなさそうだった。
もう一度自殺関連の書類を見る。
政府の発表した数値でさえ、ここ数年明らかに自殺者の数が増えている。
3万人程度で止まっていた年間の自殺死者数が、この5年で2倍に膨れている。
確かに新型感染症のパンデミックによる職を失い、将来の不安から死に走ったものも多いとは思う。
だが、この数字は異常だ。
そして美琴の算出した他の死亡者の中に紛れている自殺者の推定を加味すれば、実数はさらに増える計算だ。
それだけでも頭痛を覚えるのに、静岡の支社に連絡を入れて、島崎沙耶香の所在を確認しようとしたら明確な答えが返って来なかった。
これが何を意味するのか?
そのためにも実際に静岡の支社に出向くことになった。
ここ最近、もしも死んだと言うことになれば、さらに疑惑が深まる。
そこに「大地の囁き」がある。
一応この製造販売をしている株式会社ガイアの所在地を確認したら、本社が静岡だった。
美琴にとって、「大地の囁き」はもともとそれほど興味があったわけではなかった。
だが、神保悟の件で興味は湧いた。
だが、それが他人のもので、さらにその持ち主と思われる島崎沙耶香の身に何かが起こってる。
美琴は少し怖くなっていた。
いまだに「大地の囁き」の実物を見たことはない。
資料の写真でその形はいやとなるほど見たし、動画が多くアップされてるからその異様なヴィジュアルも認識している。
青く輝く球体を5本の柱と上下の円盤が挟んでいる。
その青い光はまるで魂を吸い取るような感覚を美琴にもたらした。
動画でこれほどに胸の奥を揺らされる。
とてもじゃないが実物を見たいとは思わなかった。
そして、自分が昨日打ち出したプリント。
自殺者、およびその可能性があるものたちのここ5年間の関東での分布図。
そこに「大地の囁き」の売り上げ実績を条件に絞り込んだ結果である。
その適合率が20%を超えている。「大地の囁き」は持っている人物の分布ではない。
あくまでも販売店の実績をその販売店に円の大きさで示しているに過ぎない。
にもかかわらず死亡者との因果関係がこの高確率を叩き出してきた。
ただ、死んだ人間の一人が持っていたからと言う軽い気持ちでシュミレートした結果である。
これが本当に所有者の分布図に重ねた時のことを思うと背筋が冷たくなった。
この国だけで200万台の売り上げがあると聞く。
単純に言えばこの1/5が死んでいることになるのだ。
そんなことはあり得ない。
新幹線のシートに倒れ込むように背を預けた。
そう、あり得ないのだ。
どこかで計算方法を間違えたに違いない。
美琴はそう思いながらあることに気づいた。
自殺は感染する。
この仮定は、家族内、職場、学校で伝播していくから。
もしも、そうもしも、その家庭にある一台の機械のせいだとしたら…。
家にあるソレに触れてリラックスする。
学校の教室にあるソレに触れて楽になる。
職場にあるソレに触れて疲れが取れる。
ソレ、「大地の囁き」に…。
島崎沙耶香は失踪していた。
神保悟の死後、1ヶ月以内のことだと分かった。
どうりで本社の課長の口が淀むわけだ。
美琴も納得がいった。
さらに、ここで会った総務の若い女性は、このいやな仕事を上司に押し付けられたことが見ているだけで分かった。
詳しい事情など知らぬはずのその女性は、噂話レベルとして神保悟と島崎沙耶香が恋仲で、二人が交際を反対されていたようなことを言っていた。
事実ではないのだろうが、そう思わざるを得ない状況といった所だ。
神保悟は仕事の将来性に絶望したと言うことが伝えられている。
ただその内容は労働環境ではなく、彼個人の思想と言っていい。
すなわち、建設業をすることが地球を破壊しているとか、なんとか。
意味不明だった。
美琴は自殺の理由を会社ぐるみで偽装している可能性も示唆されたと言うことは知っていた。
だが、具体的な労働環境の劣悪さは出て来なかった。
職場内の人間関係も外部業者との関係も良好。
結果的に、警察は個人的な病的心情と結論したのである。
その後、ひと月もたたずに元の職場の女性の行方が分からなくなった。
樹海にでも入られれば追跡は困難だった。
これらの状況が先の女性の証言につながると言うことだ。
だが美琴にとってはどうでもいいことだった。
それよりも「大地の囁き」の所有者が行方不明。
これは、先の抽出条件に失踪者も加えねばならないと言うことだ。
下手をすれば、美琴の想像が悪い形で当たる、いやもっと悪い状況になり得ない。
「大地の囁き」の製造販売を止めねばならない。
美琴の中でそういう結論が浮かび始めていた。
だがそれは、流石に美琴自身おかしな妄想であると分かっている。
分かっているのだが…。
株式会社ガイア。
「大地の囁き」の製造販売を行う会社である。
本社も、そして工場施設もこの樹海のすぐ傍であるこの地にあった。
支店すらなく、ここから販売代理店に直送していると言うことは資料で分かった。
従業員はパート・バイトを含めて80人と、販売数に比べるとかなり小規模だ。
以前、雑誌の記事にこの場所でなければ「大地の囁き」を製造することができないと言うような旨を答えていた。
美琴はすでに連絡を入れていたため、就業時間ギリギリではあったがこうして今この会社の応接室に招かれた。
「社長はこのところ所用でここに戻っていないので、申し訳ないのですが、この会社の取締役を仰せつかっている柊工場長が対応します。少しお待ちください。」
受付の女性がそういってお茶を出してくれた。
そういえば新幹線で弁当を食べてから、何も食べていなかったことを美琴は思い出した。
思わずお茶請けの大福を頬張った。
「お待たせしてすまないですね。」
そう言って作業着を着た40代くらいの男性が入って来た。
胸ポケットから名刺を差し出され、美琴は慌てて立ち上がり、自分も名刺を出した。
相手の名刺には「株式会社ガイア 取締役常務兼工場長 博士(薬学)柊 修一」と印刷されていた。
先ほどの女性が言っていた工場長本人なのは分かっていたが、「博士(薬学)」につい目がいってしまった。
「柊工場長は博士号を持っていらっしゃるんですね。でも薬学って?」
博士課程前期修了、いわゆる修士の美琴にとって、博士号を持っていると言うだけで尊敬の念を抱いてしまう。
とてもではないが博士課程後期に進学する勇気はなかった。
女性で年齢的なこともあったが、それよりも博士号を取るような人たちは、自分よりも明らかに優秀な人間たちだった。
彼らと同等なレベルで張り合える自信は美琴にはなかった。
「ははは。そこに目が行きましたか!以前は薬剤師をしていたこともあるんですよ。まあ、いろいろありましてね。こんな私ですが、社長の佐々木に拾ってもらって、今はこの仕事についてます。それはそうと、佐野さんは厚労省勤ですか。もしかしたらうちの社長の後輩かもしれませんね。」
そういって柊が美琴の出身大学の名を口に出す。
あまりに迷いのない言葉だったため、出身大学を当てられたという事実より、前から知っていたのではないかと美琴は思ってしまった。
その感情が表情として出た。
「その顔だと当たりですね。うちの社長はあの大学で准教授にまでなっていたんで、もしかしたら会ったことがあるかも知れませんね。といっても、社長も薬学出ですが。」
「では柊さんもうちの大学で博士号を?」
「いやあ、そんな恐れ多い。地方の大学です。とてもじゃないが社長や貴女とは、比較になりません。」
そういって美琴に席を薦めながら自分も腰を下ろす。
「それで、厚労省の方がこんな田舎まで来られたのはどういう理由か、お伺いしてもよろしいですか?すでに薬機法の問題はクリアしたと思います。労働環境に関してでしたら、ここより、実際の工場の方に御案いたしますよ。」
こういった中小企業の経営側は、役人が来るとなればそれなりの動揺を示すものなのだが、この柊という男の態度にはそういったものが見られない。
逆に美琴は不審に思った。
「この会社の法規上の問題でお邪魔したわけではありませんので、そこはご安心ください。私は厚生局の担当ですので、労働関係の問題にはあまり触れることがありませんし、お渡しした名刺にもある通り、疾病対策が本業です。関係ないとは言いませんが、薬や医療器具を管轄とした薬機法も、今回の件とは別と考えていただいて結構です。」
美琴の言葉に柊の頬が微かに引き攣るのが分かった。
では、何しに来た?という柊の考えがその頬に出ているということだが、美琴は涼しい顔で出された茶を啜る。
その味わいに美琴は、さすがは静岡だ、と妙に感心した。
「ここに来たのは単なる私自身の興味だと考えていただければいいかな、と。」
「興味、ですか?というと、「大地の囁き」に何か不審な点でも?」
薬機法には関係ないと言いながら、何が疑問なのか?
その柊の口調は美琴の言葉に対してそういう不信をぶつけていた。
「そんなに睨まないでください、柊さん。確かに「大地の囁き」に対しての興味ではありますけど、何も悪い意味で言っているわけではありません。」
口ではそう言いながら、美琴は全く正反対の感情を抱いていた。
自殺が疾病たるか否か。
美琴の今の最大の関心事だ。
そしてこの会社が製造販売している商品、「大地の囁き」との妙な関連性。
さすがにこの機械が自殺そのものを促してるとまでは考えていないが、何かしらの関連があるのではない?
その製造をしている責任者に、この機械についてのレクチャーをしてもらうのが一番だと考えた。
そのためにこの会社に来たのだ。
「では、何が厚労省の方に興味を抱かせたんでしょう?こう言っては何ですが、役人がわざわざ足を運ぶというときは、あまり目出たくないないことが多いもので。」
その警戒は十分理解できた。
自分に限らず、役所が重い腰を動かすときは、大抵悪いことであることが多いのはその中で働く美琴にも思い当たることばかりだ。
「私はある調査をしていて偶然知ったのですが、「大地の囁き」について、全く知見がありません。ですので直接設計された方にお伺いできればと思いまして。」
「その調査とは、どう言ったものでしょうか?その内容によって説明も変わって来ますが。」
「そこはまだ公にできるものではないので、秘密ということで。私は単純な興味でここまで来たと解釈していただいて、一般的なことを説明して欲しいんです。」
美琴の言い方に柊が苦笑した。
要は聞きたいことだけを聞いて、こちらの情報は渡さないと言っているようなものだ。
美琴も自分のお役所的な答弁に少し辟易したが、これはどうしようもない。
「大地の囁き」が自殺に関係してるとは流石に今の段階で口にはできない。
この設計者がそれを意図して作ったのであれば別であるが、結果としてそうなるということは十分に考えられる。
うつ病という精神疾患がある。
一般的な定義として日常生活に支障が出るほどの強い気分の落ち込み、意欲の低下が続く病気とされている。
自殺はこの疾患と関連づけられることが多い。
だが、本当にうつ病がひどいと、動く気力すらなくし、自殺そのものを行うことができない。
よく抗うつ病薬の添付文章に記載されていることだが、副作用として、もしくは経過観察として、自殺への兆候を強く警告している。
これは抗うつ病が効果を示し、気分の落ち込みが軽減されていく過程で、完全に治る前に自殺を行えるだけの気力の充実が備わってしまうことが少なくないためだ。
このことから、リフレッシュ効果を謳う「大地の囁き」にも同様のことが起こっている可能性があるのではないかと、美琴は考えていた。
思ったよりも真剣な視線に、柊はとりあえず説明だけはするつもりになった。
立ち上がり、自分の執務用の机と思われる場所から、実物と、数枚の書類を取り出し、美琴の前においた。
そこには写真で見ていた「大地の囁き」があった。
上下に円盤状のものの間に5本の柱が支えてる。
その中に、まるで宙に浮いているような球体が収まっていた。
柊がコンセントをつなげ、スイッチらしきものに触れると、その球体が淡い青緑色に輝く。
「これが起動状態です。こちらに簡単な図面があります。」
数枚の紙を広げて、柊が美琴に見せた。
確かに精密ではないものの設計図らしいものに見えたが、美琴にその詳細はわからない。
「こちらに電流を流すとこのような状態、淡い光を放つウエイトモードになります。実際に使用するときはこの上部円盤に手を触れていただくことになります。ほら手を置く場所が書かれているでしょう?」
柊の説明通り右手にフィットするような手形が描かれている。
「構造自体はそれほど難しくはないんですけどね。この上部円盤に手を触れると、その人の心拍に合わせた軽い振動と、α波が放出され、リラックス効果を生みます。その際、この光がもう少し点滅して、使用者に心の落ち着きを促すようになってます。まあ、そこら辺のバランスが、特許ですけどね。」
実際に柊が右手を合わせると、その光が点滅した。
美琴が使用しているわけではないのだが、確かに少しささくれ立っていた感情が落ち着いて来たような気がする。
もっともこれは柊が語ったことによる、プラシボ効果のような気はした。
「ただ、これだけの事なんですが、金額を高めに設定した割には、よく売れてくれて、こちらも一安心ってとこです。輸出も好調で、今も工場の拡張工事を行なっています。」
それはこの会社に入る前に、何かの積み荷を積んだトラックが通り過ぎていたことで、美琴もわかっていた。
「大地の囁き」は高すぎるということはないが、その販路の一つであるドラッグストアに置くにしては高価な代物だった。
「それで、何か聞きたいことがありますか、佐野さん。」
どうせ書面を見たってその意味はわからない。
簡単な説明では、すでに取扱説明書通りで、得ることはなかった。
基本的に聞きたいことは、精神疾患者に使用した後のことだが、根本的な問題としてこの商品は一般の消費者向けのものであるということだ。
日々の生活に疲れた人が簡単にリラックスできるように作られている。
精神疾患に対しての有効性など、聞いたとしてもまともな答えが返ってくる気がしなかった。
「この「大地の囁き」は、現社長の佐々木さんが開発したんですか?」
「開発者は先代の社長と聞いています。ただ私はその方を知らないんですよ。当時商品販売の責任者だった佐々木社長と親交がありまして、失踪した先代の社長に変わり自分が社長に就くので、この会社を手伝って欲しいと言われましてね。」
失踪?
前の社長が?
初めて、知らない情報が入ってきた。
「では、この製品の開発に関わった人はこの会社にはもういないということですか?」
「いえ、そうではありません。開発者ということであれば、間違いなく先代の社長なんですが、その後の改良には佐々木社長が加わって商品化してますから。」
失踪の詳しいことを聞きたかったが、どうもこの柊工場長は知らないと判断した方がいい。
美琴はそう考えた。
仮にその失踪に柊が関わっていれば、さらに情報が入るとは思えなかった。
もっとも、そうであれば、失踪などという極端な言葉は出てこないとも思えるのだが。
「ちなみにですが、どういう経緯で工場長はこの会社に?」
「以前ドラッグストアに勤めていましてね。その時の社長がこの「大地の囁き」に惚れ込んで、店頭展開したことがあるんですよ。佐々木さんがその時にうちの店に来てこの商品説明をしたというのが縁になります。その後に妻を亡くしまして。同情してくれた佐々木さんが、同じ博士号持ちということもあって懇意にしてて、この会社に誘ってくれたんですよ。まあ、佐々木さんからしたら前社長の失踪ということもあって、私を引き入れたということもあるとは思ってます。」
「奥さんを亡くしているんですか…。」
「まあ、そのときはかなり私も落ち込んでましてね。こいつに助けられたっていうのもあるんですよ。息子ともども、ね。」
「息子さん?」
「ええ、今は高校3年生ですけど。私も落ち込んでたんですが、息子なんかは半分引きこもり状態でしたから。」
この話が本当だとしたら、うつ状態からの自殺というのはかなり低い確率と思った方がいいのだろうか。
話を聞きながら、美琴はどう話をしたらいいのか、懸命に考えた。
前社長の失踪か、柊の妻の死因か。
だが、妻の死から立ち直った人間にそのことを深掘りするほどの胆力は美琴には無かった。
「実は別件での話なんですが、柊工場長。この近くに勤めていた方が、「大地の囁き」の所有者なんですが、失踪したという話を聞いたんです。その前社長の失踪はこの商品が関係しているということはないのでしょうか?」
言った瞬間、自分がミスをしたことを悟った。
明らかに柊の表情が変わったのだ。
この工場長室から逃げることを考えると、本社を通過しないとダメだった。
反対側には富士の樹海が広がる。
「先ほども言いましたが、私は先代の社長と面識はありませんし、その、近くの方の失踪に至っては、全く知る由もないことです。もしかしたら、その失踪にこの「大地の囁き」が関係していると、佐野さんは思っているんですか?」
その瞳の輝きに異常性を感じるのは自分の思い込みだろうか?
「い、いえ、そういうことでは…。」
「失礼ですが、佐野さんは「大地の囁き」、使ったことはありますか?」
「あ、ありません。」
その美琴の声に、柊の口元がいやらしい笑みを浮かべた。
「それでは何もわからないでしょう?百聞は一見にしかず。試してみたらいかがですか?先ほど私がやったように。そうすればこの機械の性能がわかります。決して佐野さんが考えるようなことは起こらないと思いますよ。」
その柊の言葉は穏やかだったが、美琴にその言葉の強制力に抗う力は無かった。
右手を暖かに包まれるようだった。
心地よい振動が伝わる。
それが心臓の鼓動と共鳴しているように、美琴の気持ちを落ち着けていく。
目の前で青く点滅するものが視界をぼやかすように、目の前の柊の表情から邪な感情を消していくかのようだった。
かすかにラベンダーの香りが美琴の鼻腔をくすぐる。
リラックス効果があると言われる香りだ。
だが、このアロマのような効果についての説明は柊から聞いていない。
そう美琴は思ったが、すぐにその疑問は消えていく。
何が起こっているのか、「大地の囁き」に対する不信感が急速に消えていった。
そしてそれがおかしいと、心の奥から警告が届くが、次第にその声も小さくなっていき、周りの景色もだんだん霞んできた。
目の前の柊工場長の顔も認識が出なくなってきた。
瞼が重い気がする。
もしかすると、飲み物の中に何かを入れられていたのかもしれない。
だが何のために?
いくら厚労省の役人が抜き打ちで訪れたとしても、こんな犯罪まがいのことをするとは思えなかった。
さらに、美琴の目的が柊たち、株式会社ガイアにわかろうはずもなかったのだ。
だが、ついに目の前の視界が消えていった。
いや、ただ点滅する「大地の囁き」だけがまだ美琴の視覚にあった。
点滅をくり返し続けるその球体、そう、球体だけが見える。
上下の円盤状の板も、5本の支柱も見えなくなっていった。
さらにその青く光る球体の姿が微妙に揺れ、そしてそこにはまだ本当に見たことのないはずのものが浮かんでいた。
宇宙に浮かぶ地球。
そういえば、ガイアとは、大地、そして地球を指す単語であったことを思い出す。
そう思った時だった。
美琴の耳に声が聞こえた。
(君は私に何を求めるか?)
囁き。
そう、耳元に届く小さな声は、まさしく囁きだった。
(君はこの地球に何を求めているのか?)
「な、何なの?これは、一体!」
美琴の悲鳴と言い難い声が、この暗い世界に拡散した。
そのか細い声はこの宇宙のような世界に消えていくと思われた。
「素晴らしいですね、佐野さん。初めての接触でもう、あのお方の、「大いなる意志」の声を感じることができるとは!」
間違いなく柊の声だった。
美琴には見えないだけで、まだあの部屋にいるということを再認識した。
そう、私は全く移動していない。
では、なぜ、こんな宇宙空間に浮かぶ地球を眺めるような状態に陥っているのだろうか?
美琴自身、自分に何が起こっているのか全くわからなかった。
(もう一度聞こう、佐野美琴。君は何を求める、この星に?)
「わたしは、何も求めてはいない。ただ、なぜ自殺者が増えたのか?なぜ、「大地の囁き」を使用したものにその傾向が強いのか?知りたいだけよ!」
その美琴の声が、この暗い空間にこだました。
思ったより大きな声を出していたことに美琴自身気づいた。
焦ってはいけない。
これが柊が仕掛けたものかどうかはわからない。
だが、自分がここまできた理由の一端でも知ることができるかもしれない。
もしかしたら、この命が無くなるかもしれないが…。
「私たちは別に犯罪者組織ではないんですよ、佐野さん。あなたが見ているこの状態は、決してわたしが作り出したものではないんです。ましてや、あなたの命を奪おうなんて全く思ってはいません。」
「わたしの、考えていること、わかるんですか?」
「わかるというほど鮮明ではないですが、あなたの顔色を見れば察しはつきます。この「大地の囁き」を通じて「大いなる意志」と会話が出来る素養のある者なら、今何を見ているかも分かってますし、その時に私どもがあなたを拉致して洗脳してるんじゃないかと思ったとしても不思議ではない。ただ、この佐野さんの今の状況を作り出しているのは、「大地の囁き」の機能の一部といっても差し支えないですから。」
柊の言葉に自分の顔が引き攣るのが分かった。
極力自分の表情は表に出さないようにしてきた美琴にとっても、今の話にはあまりにも理解の外にあった。
一体、「大地の囁き」とは何なのか?
(その問いの答えは後にしよう。まず君との間に意思疎通できることを感謝する。そこにいる柊修一も、この代表を務める佐々木彰良も意思疎通ができるが、君のように初めて使用してコミュニュケーションをとれたものは柊理人以来、二人目だ)
「柊理人?誰?」
「ああ、すいません、わたしの息子です、佐野さん。」
柊の声がそう注釈を入れてきた。
ということは、息子までも、このことに関与してるのか?
「そう思ってもらって構いませんが、息子がコミュニュケーションを取れたからこそ、「大いなる意志」と人類が話し合うことができるようになったのですよ。ある意味、息子こそがこの星の救世主だ。」
柊の言葉に狂気の色を感じ取った。
やはり、ここは普通ではない。
(柊修一にも色々あるんだ、あまり責めないでほしい、佐野美琴)
何度もフルネームを言われることに妙な戦慄を感じていた。
まるで拘束されて尋問を受けているようだ。
(我にはこのような接し方しかできない。そこは納得してほしい。君の知りたいことは後で極力伝える気ではいる。我慢してほしい)
もう喋る気力が美琴はつき始めていた。
声を出す気力がなくなってきた。もっとも、考えただけでこの正体不明の存在に伝わってしまうのだから、喋る必要もない。
今は自分の常識を封じ、この存在の語ることに神経を集中することにした。
(そうしてくれると、我も話しやすい。感謝する)
その存在が、今の状況に連なることを淡々と語り始めた。
我の存在については我自身も正確にはわからん。
ただ、気づいたらこの星を覆う「意志」として存在した。
君たち、自らを人類と名乗る集団が発生するよりもかなり以前からだ。
ただ、この意思があるだけで、この星に干渉することなく存在し続けた。
だが、我という意思に気づくものは人類にとどまらず、生きとし生きるもの全てにおいて僅かに存在していた。
だからといって意思疎通することはなかったのだが、彼らの想いは我も感ずることができた。
ただ風が吹くようなものだったのだが…。
佐野美琴、君に問う。
ここ数年、そういったものたちが同じような思考をし始めていた。
何かわかるか?
そう、だな。
人類同士ですら分かり合えぬのに、他の生物たちのことなぞ、わかろうはずもないことだが…。
それでも、一瞬、よぎった思いが正解だ。
人は滅するべきだと。
他の者どもは確かに殺し喰らっているということは事実だ。
だが、それは生きるためだ。
だが人類は、その生存本能とは別の次元で殺し合う。
それが人類同士だけであれば別に構わない。
だが、ヒトは己がため、我を含め破壊の限りを尽くす。
地球にやさしい環境?
本当に笑わせてくれる。
別にヒトは他の生物、そして我のことなどは全く考えてはおらん。
ただ、自分たちさえ良ければいいという感情にも関わらず、そんなバカなキャッチコピーを考え出す。
本当に救われない者どもだ。
我は、別に人など、いや生き物たち全てが死に絶えても全く問題などない。
オゾン層が発生したのはただの偶然だ。
それが破壊され、宇宙線が我に降り注いだとしても一切問題ない。
二酸化炭素に代表される物質が充満し、我が多少熱くなったとて、何も騒ぐこともない。
困るのは生命活動を行う者たちだけだよ、佐野美琴。
もし仮に、我が生き物たちを愛でるというのであれば、それは細菌でも、ウイルスでも、恐竜でも人でも差はない。
皆、等しい。
これでわかるだろう、佐野美琴。
我は我に懇願する者たちに報いるために「大地の囁き」を作った。
人以外の懇願である、人種の滅亡。
その道を少しだけ広げるために。
ここで勘違いをしないでほしい。
我は率先してヒト種を滅ぼそうとは考えてはいない。
ただ、その数を減らすべき、そう考えている。
ここで、佐野美琴、君の質問に答えよう。
この「大地の囁き」は、君たち人種との意思疎通のための手段だ。
必ずしも自殺幇助のための機械ではない。
我を感じた者のごく一部が、その命を閉ざす。
それだけのこと。
その他大勢には心の安穏を与えている。
ごく一部のものに、我の意志を感じて貰えば、それで十分だと、我は思っている。
そして、できれば、我という場所で芽吹いた生命たちに、幸福が訪れることを切に思う。
美琴は最終の新幹線で自分の家に帰る途上にあった。
株式会社ガイアであったことが、本当に自分の身に起こったこととは今でも信じられなかった。
気づいたら柊工場長に起こされていた。
寝ていたらしい。
そのまま工場内で出前の夕食を奢ってもらい、駅まで送ってもらった。
そこには細身で背の高い高校生らしい美しい少年が同乗していた。
柊の息子、柊理人であると紹介された。
少し内気そうではあったが、しっかりと挨拶の言葉を美琴にしてくれた。
「大いなる意志」とやらの言ったことが本当なのか、柊に聞こうとした。
結局聞くことはできなかった。
だが、帰りがけに「大地の囁き」を渡された。
そして注意事項として柊はこう言った。
「この機械の電気の供給は、説明とは全く逆です。通電することによって、磁界を発生し、本来の球体の力を抑えています。この工場から充電された状態で梱包され、販売店に送られています。スイッチを入れる行為は、実際には通電状態を切る動作になります。つまり、大地から産み落とされるこの球体そのものが、「大いなる意志」との通信装置です。それだけは伝えておきます。」
今、美琴は抱えている通電されていない「大地の囁き」から微かな優しさを感じていた。
自分も死ぬことになるのだろうか?
空席が目立つ新幹線の中、美琴は意識を深いところに潜っていった。
完
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
前書きでも触れましたが、この物語は、ある物語のサブストーリーとなっています。
その物語は、ここに登場した柊修一と柊理人の親子の物語なのですが、他にも考えてることがあって、今のところ、まだ描き始めていません。本当に親子関係というものが難しいと、自分の経験で思い知らされている最中ですので…
もし、この話が気に入ってくれたら、わたしの他の小説ものぞいてあげてやってください。
人と人との関わりって、本当に難しいですね。