その7〜その9
その7
その青年は 私を抱っこしたあとに
その少女こと [赤間まや] に
こう言ったのでした。
「ありがとう この猫を可愛がるんだよ」
と そう段ボール箱に戻された 私の
頭をなでながら そう言ってくれました。
そして とても悲しそうな
薄いブラウンの瞳で 見つめられたのでした。
私は その目で見られたとき
もう会えないだと 子猫ごころに思い
とても悲しくて
「ニャー」
と 鳴いて 別れたくない気持ちを
伝えました。
しかしながら それも その青年の顔を
あらためて見つめたら もう無理なんだと
悟ってしまいました。
それから [赤間まや] に 段ボール箱ごと
持ち上げられてから その青年が
もう一度 [赤間まや] に 声をかけたのでした。
その8
その青年が なぜ [赤間まや] を
呼び止めたかというと 私の名前を
「クレヨン」
という名前にして欲しいと [赤間まや] に
お願いをするためでした。
その話し合いが終わって 私は晴れて
[赤間まや] にも
「クレヨン」
と 呼ばれることになりました。
そして [赤間まや] が
「良かった。 この子猫を大切に
思ってくれる人に 拾ってもらって。
わたし感動しちゃった。 ありがとう。
これから この子猫を クレヨン
という名前にするね。
良い名前だねありがとう。
それじゃ わたし このクレヨンを
家に連れて帰るね。
それじゃあ ありがとうございました。
サヨナラ〜」
そう [赤間まや] が言って 私を
さっそうと 彼女の家まで連れて
帰られることに なりました。
その帰り道 その青年の 今にも泣きそうな
悲しみに満ちた顔を 今でも
こうして夢に見るのでした。
その9
そのたびに 私はとても切なく
悲しい思いが 戻って来るのでした。
そして夢から覚めるたびに
[赤間まや] が
「クレヨン クレヨン」
と 言い寄って 抱きついて
「ギュッ」
と 抱っこして かわいがってくれるのでした。
私はそれで いやされて また
彼女の胸の中で 安心して 眠るのでした。
おしまい