その4〜その6
その4
その青年に 抱きかかえられながら 私は
とても 幸せを感じました
そして その青年が パッと
ひらめいた顔をして 突然
「クレヨン」
と ひと言 言ったのでした。
満足そうに そのあとに 何回か
「クレヨン」
と つぶやいて 私のことを優しく
抱きかかえました。
私は そのときから
クレヨンという名の猫に なったのでした。
私はそのとき とてもお腹がすいて
2回ほど ニャー と鳴いてしまいました。
その声を聞いて 私の様子を見た 青年は
「お腹が減っているみたいだな
家の中には 子猫にあげれるエサは
ないようだから 買って来るからな。
待ってろよ」
と そう言って その青年は
家から出て行った。
その5
私は それから どのくらい
ひとりぼっちでいたのでしょう。
永遠とも 一瞬とも 感じられる
時間が過ぎて行きました。
そして その青年が 血相を変えて家に
帰って来て 私の所まで来ました。
その顔は とても悲しみでいっぱいで
今にも 泣きそうでした。
それから 私のことを一回ほど 抱っこして
そっと ひと言 「クレヨン」
と言って 段ボール箱の中に
入れてくれました。
私は なんだろう どうしたのだろうと思い
心が 痛くなる思いが したのでした。
そして突然 その青年が 段ボール箱ごと
私を 持ち上げて こう言いました。
「かわいいクレヨン サヨナラ」。
その6
そのあと 私は段ボール箱の中で
とても不安を 感じながらも 静かに
していました。
私は 段ボール箱ごと
また その青年と出会った
あの場所まで 連れて行かれました。
そこで待っていたのは 私にとって
衝撃的で 少し 懐かしい思いのする少女に
再び あわせられることでした。
数日前まで 一緒にいてくれた
少女こと [赤間まや]が 待っていて
くれたのでした。
その青年と [赤間まや]が とても真剣に
話しを はじめていました。
話しが ひと通り 終わったところで
その青年に 私は段ボール箱から 持ち出されて
ギュッと [赤間まや]の前で
抱っこしてくれました。
私はなんだか とても 切ない思いで
いっぱいに なりました。