その1~その3
その1
私の名前は クレヨン。
こう見えても 立派な大人のメス猫なのである。
私の自慢は 何年たっても 綺麗な三色の
毛色と ブルーの瞳
もうかれこれ 5年ほど前に生まれた
生粋の 雑種の三毛猫です。
そして 私のもうひとつの自慢は
「赤間まや」
という 私のことを 愛してやまない
とても人の良い 18才の人間の
飼い主なのです。
いつも この飼い主は
「クレヨン クレヨン」
と 言っては 抱きかかえてくれる
優しく 私のことを 思ってくれる
ご主人様なのでした。
だから 私こと クレヨンという名の猫は
今は とても幸せに暮らして
いるのでした。
その2
しかしながら 今でも不思議に
思っていることが あるのです。
私が 確か 生後2ヶ月のときに
今の飼い主 赤間まや の父親に
私は捨てられた。
そんな夢を 何回か今まで 見たのです。
もしも それが夢のようで 夢じゃない
本当の 私の記憶なのならば
私は どうやって 今の飼い主のもとへ
帰って来たのでしょう。
不思議です。
私は そのときの記憶が とてもショック過ぎて
あいまいな とても不思議な 記憶に
なっているのです。
そのあいまいで とても不思議な
記憶というのは ある青年と
生後2ヶ月のときの私の 出会いから
始まります。
その3
その青年は 薄いブラウンの 綺麗な瞳を
していました。
私は 小雨が降っている日に その青年と
出会い 私は 段ボール箱の中で
ニャーと 鳴いているところでした。
その青年は 私のことを見て
とても悲しそうな目をして そして
正義感の あふれる顔になって まだ
名もない私を 小雨の中を必死で
濡れないように かばいながら
その青年の家まで 段ボール箱ごと
連れて入ってくれました。
そして 何かとても 考え込みながら
私のことを 気遣って
「大丈夫か? かわいそうに
捨てられたんだな。
世の中には こんな子猫を捨てる
人間が いるんだな。
もう大丈夫だからな」
と そう青年は言って 私の頭を
撫でてくれるのでした。