第8話:家族の絆と新たな出会い
時は流れ、リリアは10歳になっていた。花屋の手伝いにも慣れ、エレーナとウィリアムを頼もしくサポートしている。
「ママ、このバラの花束、できたよ!」
「すごい、リリア!きれいにできているわ。お客様もきっと喜んでくれるわよ」
「えへへ、だってリリアは、ママの娘だもん!」
母娘の会話を微笑ましく見守るウィリアム。家族での仕事は、何よりの喜びだった。
ある日、エレーナが花の配達に出かけた帰り道、1人の少女と出会った。
「あの……お花屋さんですよね……?」
声をかけてきたのは、痩せて小さな少女。エレーナは優しく微笑んだ。
「ええ、そうよ。私はエレーナ。あなたは?」
「わたし、ナナ……。お花、すてきですね……」
ナナと名乗った少女は、憧れの眼差しで花を見つめていた。しかし、その服は古く薄汚れていた。
「ナナちゃん、お花が好きなの?」
「うん……でも、わたし……おかねがないの……」
ナナの言葉に、エレーナの胸が痛んだ。彼女は、花束の中から1輪のデイジーを取り出した。
「ナナちゃん、これをあげるわ。デイジーは希望の花なの。あなたにぴったりよ」
「ほんとう……?ありがとう、エレーナさん……!」
花を握りしめ、嬉しそうに笑うナナ。エレーナは、彼女を助けたいと強く思った。
家に戻ったエレーナは、ナナのことをウィリアムに話した。
「ウィリアムさん、あの子を助けたいの。私たちにできることはないかしら……」
「エレーナさん……君の優しさに、いつも感動するよ。僕も力になるから、一緒に考えよう」
二人で話し合った結果、ナナを花屋で雇うことに決めた。
「ナナちゃんなら、お花の扱いも丁寧にできるはずよ。リリアともきっと仲良くなれるわ」
「そうだね。君の判断は正しいと思う。ナナちゃんを、家族の一員として迎えよう」
こうして、ナナは花屋の新しい仲間になった。最初は戸惑っていたが、リリアの明るさに救われ、徐々に打ち解けていく。
「ナナちゃん、一緒にお花摘み行こう!リリアと二人なら、もっとたくさん摘めるよ!」
「うん……!リリアちゃん、ありがとう……!」
リリアとナナの友情は、日に日に深まっていった。
「ママ、ナナちゃんとお花摘み、楽しかったよ!ナナちゃんは、わたしの大切な友だち!」
「よかったわ、リリア。ナナちゃんと仲良くしてあげてね」
「もちろん!リリアは、ナナちゃんのお姉ちゃんになるんだもん!」
一方、ナナもエレーナ家の温かさに触れ、心を開いていった。
「エレーナさん、ウィリアムさん……わたし、ここで働けて幸せです……」
「ナナちゃん、あなたは私たちの家族よ。辛い時は、いつでも頼ってね」
「僕たちは、君の味方だからね。一人で抱え込まずに、何でも話してほしい」
ナナは、エレーナとウィリアムに涙を流して抱きついた。彼女にとって、二人は親代わりの存在になっていた。
そんなある日、花屋に1人の男性客がやってきた。
「こんにちは。ひまわりの花束をください」
「かしこまりました。少々お待ちください」
花束を作るエレーナ。男性客は、店内を見回していた。
「あの……ここの花屋さんは、とても評判がいいと聞きました」
「そうなんですか?お客様に喜んでいただけて、嬉しいです」
「特に店主夫婦の仲の良さが、花に表れているそうです。羨ましい限りです」
男性の言葉に、エレーナは頬を赤らめた。
「そんな……ウィリアムさんには、いつも支えられているんです」
「奥様を大切にする旦那様がいるのは、素晴らしいことですよ」
花束を受け取った男性客は、満足そうに帰っていった。エレーナは、改めてウィリアムへの愛を実感していた。
「ただいま、エレーナさん」
「お帰りなさい、ウィリアムさん。今日も、お客様に喜んでもらえたわ」
「そうだね。君の花束は、本当に素晴らしいからね」
ウィリアムがエレーナを抱擁する。リリアとナナも、駆け寄ってきた。
「パパ、お帰り!」
「ウィリアムさん、おかえりなさい!」
4人は、幸せそうに笑い合う。家族の絆は、また1つ大きくなった。
ある休日、エレーナ一家は皆でピクニックに出かけた。
「わーい!お花がいっぱい!」
リリアとナナが、花畑を駆け回る。エレーナとウィリアムは、微笑ましく見守っていた。
「ねえ、ウィリアムさん。私たち、幸せ者ね」
「ああ、君と家族に恵まれて、僕は最高に幸せだよ」
「リリアもナナちゃんも、すくすく育ってくれて……」
「君の愛情のおかげだよ。僕も、父親として頑張らないとね」
寄り添うエレーナとウィリアム。愛する家族を想う気持ちは、いつも同じだった。
「ママ、パパ!花冠作ったよ!」
リリアとナナが、花冠を持ってくる。
「わあ、すてきね!ママとパパにかぶせてくれる?」
「うん!ママもパパも、お花の王様と女王様だよ!」
花冠をかぶったエレーナとウィリアム。リリアとナナは、嬉しそうに歓声を上げた。
「みんな、集まって写真を撮ろう!」
ウィリアムがカメラをセットする。タイマーをセットして、急いで家族の輪に加わった。
「はい、チーズ!」
パシャリ。カメラが、幸せな家族の姿を切り取った。
「この写真、お店に飾ろう。うちの家族のシンボルになるよ」
「そうね。お客様にも、私たちの幸せをお裾分けできるわ」
写真を眺めるエレーナとウィリアム。リリアとナナもニコニコしている。
4人の絆は、花のように美しく、強く育っていく。どんな困難も、乗り越えられると信じていた。
「さあ、お花を摘みに行きましょう!」
「オッケー!」
花畑を駆け回る4人。自然の中で過ごす時間は、何よりも幸せだった。
エレーナの人生は、まるで満開の花園のよう。愛する夫、娘、そして新しい家族ナナ。彼らに囲まれて、彼女は心から幸福を感じていた。
美しい花々が風に揺れる。それは、エレーナ一家の幸せな未来への祈りのようだった。
彼らの物語は、これからも続いていく。季節が移り変わっても、変わらない愛で結ばれた家族の絆。それこそが、エレーナの人生を彩る、一番の宝物なのだから。