第2章-1
風を切る音に包まれている。
目の前に広がる光景は、いつか見た惨劇だった。
僕の腕を食い、力を得た邪神竜が纏っていた氷は、相棒の身体を貫いていた。
あの位置は僕がいたはずなのに。
相棒の鮮血を浴び、髪も服もその色に染まっていた。
相棒は光を纏って消失した。飛竜の最期はこういうものなのだろうか?ヒトと同じく、身体は血の巡りを失い、冷たく地に横たわるのではないのか?そんなことをどういうわけか冷静に考えてしまっている。
……ディアン。僕は君を守れなかった。
竜騎士失格だ……。
身体が落ちてゆく。視界が暗くなった。
このまま僕も……。
* * *
「……ラ……シェラ!シェラったら!!」
もの凄く揺さぶられているのに、身体が言うことを聞かない。ヘイレンの悲痛な叫びが部屋中に響く。わかってる、僕も起きたい。でもどうしてか動かない……。
「ヘイレン、代わって」
この声はレムか、と思った瞬間、上半身を起こされると、右肩に痛みが走った。それでようやく身体が反応してびくりと痙攣し、息を吐いた。呼吸が止まっていたようだ。シェラは咳き込んだ。
咳をするたびに右肩が痛む。無意識に左手で強く押さえて前屈みになる。レムのがっちりした体躯に覆われる。……落ち着く。そう感じると、荒かった呼吸も徐々に落ち着いてきた。
痛みが引いてきた。ようやく顔を上げると、レムレスとヘイレンが心配そうに見つめていた。
「……やっと落ち着いたかな。呼吸が止まるほどの酷い夢でも見た?」
レムレスがそう言いながらそっとシェラから離れると、今度はヘイレンがぎゅっと抱きしめてきた。身体が震えている。シェラは髪を撫でた。
「ごめん……怖かったよね」
撫でるシェラの手も微かに震えていたが、ヘイレンの温もりがじんわりと身体に浸透してくると、次第に震えも無くなっていった。
レムレスは簡易キッチンに向かうと、片手鍋に水を入れて沸かし始めた。ポットに紅茶葉が入ったパックを落とし、カップを3つ用意する。四半刻程(約15分)で片手鍋はお湯を作った。それを注いでしばし待つと、やがて良い香りのする紅茶が出来上がった。
「紅茶でも飲んで、ほっこりしましょ」
小さなテーブルに置かれたカップに紅茶を注いだ。香りが部屋を包み込む。シェラもヘイレンも、この香りにため息をついた。
紅茶を飲み終えて、シェラは自分が見た夢のことをぼんやりと思い返していた。相棒を失って随分経つのに、ふとしたことで彼の姿が脳裏に浮かぶ。その日の夜は必ず夢に彼が出てくる。いつも決まって同じ場面。自分を庇って氷の刃で貫かれる。
目を閉じ、ひとつ深呼吸をする。右肩の深部が少しだけ疼く。勝手に右腕がぴくりと小さく痙攣する。ガントレットで封印していても、あの時の記憶が掘り起こされると反応してしまう。
自分の腕ではないのに、自分の腕のように扱えている状況が不思議でならない。ガントレットのおかげなのだろうか。
「シェラ、一体何を見たの?」
ヘイレンは心配そうに見つめている。シェラは首を振った。
「僕の話より、ヘイレンの話を聞きたいな。里で見てきたことを教えて欲しい」
この夢は自分が竜を失った瞬間の話をする事になる。辛く、そして罪深い話はしたくなかった。それよりも、ヘイレンが見てきた里の様子が気になっていた。彼は少し戸惑いながらも、口を開いた。
「あ……うん。里……修行者たちが寝泊まりする家が立ち並ぶ道を通って、大きな屋敷にお邪魔したよ。屋敷までの道、モントレアにそっくりだった」
シノの里は、松明が無いだけで造りは都とほぼ同じ。広場を中心に東西南北に広い道がある。
「広場の大きな飛竜の像、躍動感があって勇ましくてすごく素敵だった。飛竜に乗ってたヒトは初代里長で、その飛竜は蒼竜だったらしいってフレイが教えてくれた。蒼竜って今も存在するの?」
魔力を秘めた飛竜……数は非常に少ないが、まだ存在している。シェラも何度か見たことはある。
「確か現役の蒼竜騎士っていなかったっけ?空の民だったと記憶してるけど」
レムレスが人差し指をピンと立てて言った。ヘイレンはやや興奮気味に「会ってみたいなあ」と目を輝かせたが、水の召喚士は首を横に振った。
「ぼくも会ってみたいけど、もう何年も前から行方不明なんだって。最後に見かけた場所は火の国の最南端にあるフラメア村じゃなかったかな」
「レムレスさん詳しいですね」
「召喚士であちこち旅をしていると、その先々でいろいろ教えてくれるんだよ。召喚士同士で情報交換もよくやるからね」
フラメアは海岸沿いにある小さな村。漁業が盛んでそこでしか獲れない魚も多い。フラメアで獲れた魚介をわざわざ水の国ウォーティスの港町ポルテニエまで海路で運んで商いをするヒトもいる。
モントレアからフラメアに向かう街道の途中に巨大な魔物の住処がある為、グリフォリルで飛んでいくか馬で駆け抜ける。休憩はできない。のんびりしていると魔物が起こす流砂にのまれてしまう。のみこまれてしまったヒトは、その後帰ってくることはない……。
「そういやフラメア方面の街道で起きたんだよね……砂の女王の事件が」
シェラはレムレスの顔を見た。友人の竜騎士ダルシュが、相棒の飛竜を庇って砂の女王に殺害されてしまった事件。彼の魂は都の神殿まで辿り着いていたが、身体は未だに発見されていない。彼の槍だけが現場に遺されていたという。レムレスが持っていた情報誌を、ヘイレンが里へ行っている間に改めて見せてもらった。
「あの……砂の女王って魔物の名前?」
ヘイレンは首を傾げる。レムレスは頷くと、正確には『ヘルアラネア』って言うんだ、と教えた。
「目撃者はほぼ生きて帰ってきてないから、どういった姿なのかさっぱりわかっていないけど、名前だけはとりあえずつけた感じ。女王って言うからには雌の個体なんだろうけど」
大怪我をしながらも、かろうじて逃げ切ったヒトの「あいつは砂の女王だ」と呟いた言葉が、そのまま呼び名になっている。因みに逃げ切ったヒトはその後、残念ながら亡くなっている。
里の話で和やかな雰囲気にしたかったのに重くなってしまい、シェラは思わずため息をついた。
「なんか……ごめん。暗い話題に変えちゃって」
レムレスは席を立つと、みんなのカップを持って簡易キッチンにそそくさと向かった。シェラもヘイレンも苦笑するしかなかった。
「今日、別の町に移動しようと思うんだけど、何処がいい?」
シェラはそっと立ちながらヘイレンに問うた。ローブを羽織り、荷支度をし、準備が整う頃に、青年はこう答えた。
「フラメア村へ行ってみたい。行方不明になってる蒼竜騎士さんを探したい」
これにはシェラもぽかんとしてしまった。レムレスもえっ、と声を漏らした。
「ヘイレン……フラメア村へ行くのは構わないけど、多分、そのヒト探しは里長が誰かに指示してるはずだから、僕たちが動く必要は無いよ。召喚士の役割は、ヒトビトの相談に乗ったり御魂を送ったりすることだからね」
蒼竜騎士を探すなど、危険過ぎる行為だと懸念していた。直感だが、そのヒトはおそらく砂の女王と関わっている。襲われたのか討伐に行ったきりなのか。
……あのヒトなら、後者だと思いたかった。
ヘイレンは、シェラが探すことを嫌がっていると察したようで、小声で「ごめんなさい」と謝った。シェラは目を伏せて首を横に振った。
「できるだけ魔物との遭遇は避けたい。怪我でもしたら大変だし、下手したら死んじゃう。そうなりたくないから……探すのは長に託そう?」
視線をヘイレンに戻すと、金色の眼はまっすぐ空色の眼を見ていた。そして、無言でこくりと頷いた。シェラは微笑して同じように頷く。
「余計なことを言ってごめん。忘れろって言っても難しいだろうけど、あんまり気にしないで旅を続けて。行く先々はヘイレンにとって新鮮だろうから、しっかり景色を焼きつけてきてよ」
レムレスはそう言って、ヘイレンの頭を優しく撫でた。たくましい腕はその後シェラを抱擁し、「またどこかで」とはつらつとした声で送り出してくれた。ふたりはアルティアに跨り、フラメア村へ向かった。
「オレもフラメア村は始めてだからな、村っぽいのを探したらいいか?」
アルティアは都を飛び立って、レイア火山の横を通り過ぎながらきょろきょろしていた。
「このまままっすぐ南下して。そのうち海と一緒に見えてくるよ」
「リョーカイ!まっすぐ行くぜー!」
力強くはばたくと、風を切る音が間近で鳴った。前に跨るヘイレンは、だいぶ彼の背中に慣れてきたようで、身体も強張らず景色をぼんやりと眺めている。
シーナに乗った時は余裕がなかったが、今は風を感じながら飛行する感覚が懐かしい。アルティアの背と飛竜の背では、大きさともふもふ感が違うくらいか。かつての相棒ディアンの背は、シーナよりひんやりしていて鱗も硬かった。片足立ちしていると、背についた片膝が少し痛かったな……。どっしりとした体躯なのに飛行能力は高く、軽やかに旋回したり滑空したりで、重さを感じさせなかった。
邪神竜が目醒めなければ、まだ竜騎士としてディアンと空を駆けていただろう。
右腕に軽く痛みが走った。反射的に肩を抑えると、ヘイレンがちらっと横を向いた。視線はシェラの右腕だった。
「そうだ……ボク、シェラに伝えなくちゃいけないことがあるんだった。エンキ様からその腕のことを少し聞いたんだけど……」
「聞いたって何を……?」
「ボク、どうしてシェラが里に入れないのかフレイに聞いたの。そしたら竜と死別したからかもしれないって。聞いた時はフレイも何があって死別したのか知らなかった。だから、エンキ様に聞いた。なぜ竜を失ってしまったのかと」
「……ヒトの事情に首を突っ込み過ぎだよ。……確かに僕は竜と死別した。竜を失うことはとても辛く、そして償いたくても償えない大罪なんだよ。罪を犯す話を簡単にされたのは心外だな」
シェラは、どこからどこまで話したかわからないが、大事件のことを喋った里長に少し苛立った。ヘイレンもなぜそんなことを知りたかったのだろうか?確かに里に入れない理由をきちんと話さなかったのだが、この事件の話をしないといけなくなることが見えていたので、話すことを避けていたのだ。話すことは自分の傷を抉る羽目になる。現に今、苦しいのを必死に耐えている。
ヘイレンは小声でごめんなさい、と言って視線を外しやや俯き加減で前を向いた。シェラはため息をついた。風の音がしばらくふたりの心の距離を離す。
「……なあ、里に入れない理由はシェラがちゃんと話すべきだったんじゃねえの?死別しちまって竜騎士の資格を失ったからだろ?何で死別したのかは聞くなって釘を刺しておけば、ヘイレンもきっとそこで諦めたかもしんねぇぞ」
アルティアが前を向いたままぼそりと言う。ああそうすればよかったのかと、酷く自分を悔やんだ。だが、やはり……これ以上関わって欲しくない。
「もうやめよう、この話。ヘイレン、里長から聞いたことは口外しないと約束して欲しい」
「……わかった。でも、もう少しだけ話をさせて」
食い下がるヘイレンに憤りそうになった。頼むから、これ以上傷を抉らないでくれ……!右側の二の腕がぴくぴくと痙攣している。怒りに任せて手を出してはならない。シェラは大きくまたため息をついて落ち着こうとした。
「話を聞いていてわかったの。シェラの腕は邪神竜じゃないって」
シェラは言葉を失った。邪神竜の腕でなければ……何だ?ディアンの腕とでも言うのか?相棒は目の前で散ったんだぞ……!
「エンキ様は、ラウルがシェラの肩に核を入れた瞬間を見たんだって。そしたら腕が……」
「ちょっと待って、核だって?」
シェラはヘイレンの言葉を遮った。肩を押さえていた手に自然と力がこもる。ここに、ラウルが核を入れた?どこから持ってきた?なぜ彼がそんなものを持っていた?何の核なんだ!?
「なんでラウルがそんなことを……」
シェラは段々と力が抜けていくのを感じた。押さえていた左手も、ゆっくりと下がっていつの間にかアルティアの背に触れていた。
「エンキ様、シェラの相棒はコア・ドラゴンだったんだ、って言ってたよ。ラウルが持っていた核はその竜のものだったって……」
「な……コア・ドラゴンだって?まさか!」
ディアンからそんな話は聞いたことがなかった。竜騎士になるための最後の試練は竜と戦うことなのだが、まず竜の属性と特性を確かめる。自分が宿す魔法属性が一致または類似した属性でないと、戦う時に竜騎士側の力が打ち消されてしまう。これでは公平に戦えない。
「特性」は、飛竜なのか地竜なのか水竜なのか。大抵は見た目で判別出来るのだが、竜からしっかりと示してもらう。
シェラはディアンに確かめた時、自分と同じ氷属性であるとは聞いた。しかし特性については「飛竜である」としか聞いていない。コア・ドラゴンであれば、その旨竜騎士に話さねばならないはずなのだ。
相棒となったとしても、そのことを打ち明けてくれる程信頼はされていなかったのだろうか……?何度も諦めろと言われたが、諦めずに戦い抜いた。その時確かに呆れられた気はする。
コア・ドラゴンだとディアンからは聞いていないから、普通の飛竜のはずだと思っていた。里長の言葉が真実だとしても、そんなの……信じられない。
「ラウルが全てを知っていそうだけど、フラメアの巡礼の後に風の国に行ってみる?確かあのヒト、エクセレビスの弓隊にいるままだよね?」
ヘイレンはそう提案してくれたが、シェラは首を縦に振らなかった。巡礼の旅なのに、私情を挟むのはよくない。
「ヘイレン、もう本当にやめて。今は巡礼の旅なんだ、この件はそれを終えてからにしよう」
「でも、不安なままでいいの?」
シェラの中で何かが弾けた。ヘイレンを背後から抱きしめた。青年はビクッと驚いて振り向こうとしたが、シェラの右腕が彼の首を締めていた。力を込めればあっという間に窒息させられる状況に、アルティアが叫んだ。
「おい!オレの上でケンカすんじゃねえ!」
「アルは黙ってろ」
「な……んだと!」
「暴れはしない」
シェラの声が余程恐怖だったのか、アルティアは大人しくなった。
シェラの腕に、か細い手が伸びて触れた。震えが伝わってくる。小さく呻き声を上げるのをお構いなしに、彼の耳元でささやいた。
「不安なんて今はない。あるのは君への怒りだよ。いつまで傷を抉ってくるつもりだ?」
「あ……う……ご、ごめ……」
「この腕が邪神竜でなくても、竜であることは変わりない。力を込めれば簡単に折れるよ?僕は……」
ふと、シェラは熱が引いた。前方にフラメア村……らしきものが見えたからだ。自分が知っている村には到底見えない光景だった。シェラはそっとヘイレンを解放した。
「アル、あの海岸……残骸みたいになってるところに降ろして」
「……ん、あれか。わかった」
アルティアはそう言って、少しずつ高度を下げていった。近づくにつれ、それは鮮明になっていく。
村があった場所は、端材が散乱する浜辺と化していた。
シェラの指示でアルティアは太い柱が2本佇んでいる前に着地した。その柱も根本から幻獣の高さ程までしかなく、上部は折れて無くなっていた。
「ヘイレンはこのまま乗ってて。何かあったらアルと上空へ逃げてもらう」
シェラは砂地に降りると、杖を手に取って進んだ。その後を黙って幻獣がついていく。
家も無ければヒトもいない。漁師たちの船も原型を留めていなかった。住民は皆何処へ行ったのだろうか。
シェラはエールを召喚した。呼ばれた氷狐は彼の隣に立つと、周囲を確認した。
「エール、この一帯に誰かの御魂があるかどうか調べて欲しい」
氷狐はすっとシェラの前を行き、それから右側へと歩いていった。ややあって戻ってくると、今度は反対側へ。また少しして戻ってきた。彼女は首を横に振った。
「ここで亡くなったヒトはいない、ということか……。災害で村が壊滅したのか、それとも……砂の女王か」
エールがピクッと何かに反応し、シェラに知らせた。彼女の視線の先に、黒い何かが動いている。それは歩いているようにも見えた。瞬間、「おーい!」と叫ぶ声が聞こえてきた。シェラたちは駆け出した。
「ああ、シェラード様!」
ヒトがふたり、全身傷だらけの状態で立っていた。後から来たアルティアが思わず「うわっ」と声をあげるくらいに酷かった。立っているのもやっとのようだったので、シェラはその場に座らせようとしたが、丁重に断られた。
「座ってしまうとそのまま二度と動けなくなりそうなんで……」
と言いながら、ひとりがふらついた。咄嗟にエールがそのヒトを支え、ゆっくり横たわらせた。もうひとりもその場でくず折れるのをシェラが支える。このままではふたりとも絶えてしまう。
「ヘイレン、力を貸して欲しい」
アルティアに乗っていたヘイレンは、するりと降りて寄ってきた。ポーチから真新しい杖を取り出すと、エールが横たわらせたヒトの頭のそばにしゃがんだ。
「隣に寝かせて。ふたりまとめて傷を癒すから」
シェラは言われた通りにした。ヘイレンは目を閉じて杖を自分の前に出した。杖は彼らの鎖骨あたりでじんわりと光り出す。白と黄色が入り混じった光が彼らの身体を包み込む。少ししてヘイレンが目を開くと、酷かった皮膚は綺麗になっていた。ふたりの呼吸も問題なさそうだった。
「ふう……」
ヘイレンはその場にへたり込んだ。一気にふたり分の治療を己の魔力でやり遂げたのだ、疲労困憊にもなる。
「ありがとう。……ヘイレンも休んで」
「オレの身体を枕にしてもらっていいからな。もふもふだぞ」
アルティアは身体をどんと地に預けると、片方の翼はたたみ、もう片方は上にピンとあげた。ヘイレンはよろよろと四つん這いで幻獣に寄り添うと、もふもふの身体に突っ伏した。アルティアはそっとあげていた翼を下ろしてヘイレンを覆った。
エールが周りを警戒してくれている。シェラは同じように警戒していたが、ふとアルティアの翼から覗くヘイレンの細い手を視界に入れた途端、どっと後悔の念が押し寄せてきた。
僕の逆鱗に触れてもなお食い下がる君が許せなかったとは言え、結局は手を出してしまった。
「しっかり守ってあげるんだよ」
旅立つ日に、ヴァルゴスから言われた言葉が脳内に響き渡る。守るどころか傷つけようとしていた自分が憎い。シェラは項垂れた。頭を抱えてくず折れた。アルティアが「シェラ!?」と驚きの声をあげたが、それ以上は何も言ってこなかった。