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第3章-2

 記憶が戻ろうとすると意識を失う。そして、しばらく夢を見る。その夢は確かに夢なのだが、出会うジンブツ、出会う場所は実在する。


 ボクは森にいた。シェラが話していた森だろう。光り輝く蝶が1頭ヒラヒラと目の前を舞って行った。前にもこの蝶を夢で見たけど、あの時は見たことないなと思っていた。だけど、改めて眺めていると、そんなことないような気がしてきていた。


 ボクは、この森を知っている。


 ふらりと歩き始めると、迷うことなく1軒のログハウスに辿り着いた。彼女はお茶を飲んでいた。銀の髪、そこから覗く猫耳、青と白のワンピースを着ていて、白い部分には黄色の刺繍が施されている。


 近づくと、彼女はボクに気づいて手に持っていたカップを、テーブルに置いてあったソーサーに静かに置いて立ち上がった。前に会った時、視線は同じくらいの高さだったはずだが、ボクは彼女を少し見下ろしていた。


「……お帰りなさい」


 彼女は笑みを浮かべた。ボクは首を傾げた。刹那、ログハウスの扉が開き、中から見覚えのあるジンブツが出てきた。


「あ……」


 例の、赤毛のオッドアイのヒトだった。殺気立つ視線は何処にもない。優しくて柔らかなそれだった。


 風がふわりと吹き、木々の葉たちが小さく騒めく。ボクは意を決して赤毛のヒトに尋ねた。


「あんたはボクの何を知っているの?あんたとボクとの関係は何なの?あんたは……誰なの?」


 警戒は決して解いてはならない。そんな気がしてつい口調が荒くなる。赤毛のヒトも感じているようで、ボクの気迫に目を見開いていたが、やがて静かに話し始めた。


『我は……きみときみの仲間たちを保護し育てていた。きみはテンバという生き物だった。時空の裂け目に飛び込み未来へ旅立ってしまったことで、子孫を残す個体がいなくなり、テンバは滅びてしまった。だからきみは、存在するカタチ……ヒトという姿に変わってしまった。このあたりは前にも話したな』


 赤毛のヒトは一息ついた。ボクはその間、思い出した自分の記憶を整理していた。ボクは、ヴァルストを追いかけて時空の裂け目に飛び込んだ。何かを失っていく感覚を持ちながら、やがて海へと飛び出した。溺れて気を失って、気がついたらアルスがそばにいた。……ボクは何を失ったのだろうか。


『我の名を聞いたら思い出すか?』


 オッドアイがボクの目をじっと見据える。不安だった。目の前のジンブツの名を聞いた時、ボクは思い出すのだろうか。思い出したらどうなるのだろうか。ボクはボクでなくなってしまうのだろうか……?


 しかし、自分からあんたは誰だと聞いたのだから、もう引き返せない。


「何を思い出すかわからないけど……ボクは、あんたのことを……知りたい」


 赤毛のヒトは小さく頷くと、ゆっくりと息を吸い、そして長く吐いた。


『我の名は……ロキア。ロキアーシュカ。アーデルの血を引く『黒の一族』で、テンバを扱う魔導士だ』


 ロキア。ろきあ。ロキアーシュカ。だんだんと潮騒が聞こえてくる。身体の中心の奥底から熱いものを感じる。


 黒の一族……どこかで聞いた名だ。どこで聞いたのだろう?赤と紫の目を持つオッドアイ。がっちりとした体格。ああ、そうだ、アルスが黒の一族だったっけ。でもこのヒト……ロキアは確かに体格はいいのだが、アルス程ではない。どこかしなやかさがあり、色っぽい。


『……我の名に覚えがあるか?』


 問われてハッとする。正直なところ、名前は覚えていたなかった。けれども、だんだんとその容姿が、声が、口調が記憶に蘇ってきた。テンバを……ボクを保護し育ててきた。ロキアはボクの……ご主人様か。


「……名前は覚えてない。でも、ボクは……あんたを……あんたに覚えがあるような気がする」


 きん、と高音が鳴り響いた。耳が痛くて手で塞ごうとしたが、どういうわけかそれができなかった。苦しくて、頭を下げる。……頭を下げる?


「ぼ……ボクは……あんたを……探さなきゃ……いけない?」


 鳴りの音が大きくなる。視界が揺らぐ。夢から覚めようとしているのか。


『我は……にいる。できるこ……なら……我を……見つけ……』


 音が消え、視界は真っ暗闇に覆われた。



          * * *



 ヘイレンは飛び起きた。鼓動は速く、発汗が凄い。着ている服がぐっしょりと湿っていた。何度か深呼吸をし、ようやく落ち着いた頃に、シェラが部屋に入ってきた。ヘイレンを見ると、今にも泣きそうな顔をしてすっ飛んで来て、抱きしめられた。


「シェラ……」

「ごめん!」


 シェラは叫んだ。身体が震えている。何が何だかまだわかっておらず呆然としていたが、テンバの話を聞いているうちに気を失い、そのまま数日眠り続けていた、とシェラは言った。過去の経験から、きっとまた夢を見ているのだろう、と予想はしていたそうだが、眠っている時間が今までで一番長かったらしく、このまま事切れてしまうのではないかと不安になっていたそうだ。


 でも、何故シェラは開口一番「ごめん!」と言ったのかわからなかった。むしろ、ヘイレンにとって記憶を取り戻すことは、不安が取り除かれて安心するのだが……。


 少しして、シェラは抱擁を解いた。空色の眼が不安の眼差しをよこしてくる。ヘイレンは笑ってみせた。


「ボクこそごめん。急に気絶してずっと眠り続けてて。たくさん寝たからもう大丈夫!」

「……本当に大丈夫?目眩とか頭痛とかしてない?」

「してないしてない。平気。それよりも汗びっしょりになっちゃったからさっぱりしたいかも」


 シェラはようやくほっと胸を撫でおろしたようで、ゆっくり入っておいでとヘイレンを浴室へと促した。






 汗を流し、新しい服に着替えて部屋に戻ると、とてもいい香りに包まれていた。座っているシェラの(かたわら)にある小さなテーブルの上に、カップが3つ置かれていた。もうひとりは誰だろうと見回すと、簡易キッチンにルーシェがいた。


 ヘイレンはそろそろとテーブルに近づくと、ルーシェもキッチンを離れて椅子に座った。なんとなく気まずい空気が漂い始める。


「随分と眠っていたわりには、しっかり歩けていたわね。気分はどう?」

「あ……大丈夫です。目眩とかも無いですし。迷惑をかけてすみませんでした」とヘイレンは頭を下げた。


 ヘイレンが倒れた直後、シェラは何度も彼を呼んだ。軽く揺さぶってもダメ、少し強めても変わらず。一瞬うっすらと開けた目は白目を剥いていた。シェラは震える身体を抑えつつヘイレンを抱き上げベッドに寝かせると、転がるように部屋を出てルーシェを呼んだ。


「あの時のシェラの様子ったら、顔面蒼白でパニックになっていて過呼吸気味だったわ。余程不安と恐怖に駆られていた感じだった。あんなに慌てたシェラ、初めて見たわ」


 じとっとした目でルーシェはシェラを一瞥した。召喚士はカップに口をつけて紅茶を飲んで落ち着こうとしていた。一向に目を合わせようとしなくて、なんだかもう……シェラこそ大丈夫だろうかと心配になる。


「ヘイレンがもう大丈夫なら、療養所を出てもらって問題ないわ。シェラは退院してるから。ダーラムに戻るなら夕刻頃に都を出たほうがいいわ」


 ふと、窓に目をやる。陽光が遮光カーテンを煌々と照らしている。外はとても暑そうだ。


「モントレアって、昼と夜との空気が全然違うから、この時期は過酷ですね」


 何気なくルーシェに話を振ると、彼女は紅茶を一口飲んで「そうね」と呟いた。


「こんなにも寒暖差が酷くなったのは初めてかもしれない。去年まではまだ昼間も短時間なら外に出られたもの。肌を露出させないように防備するのは変わらないんだけど」


 ヘイレンは少し不安になった。時空の裂け目が起きたことで気候も変わったのではないかと。裂け目が起きなければ、ヘイレンはここにいない。テンバとして全うに生き、子孫なり残して世を去り、次世代に繋いできていたかもしれない。


 テンバは今も生息していたかもしれない。


 本当にこの先、世界は滅びてしまうのかもしれない。


「ヘイレン?大丈夫?」


 ルーシェの心配そうな声にハッと我に返る。


「あ……はい。ちょっといろいろ考えちゃって」

「……あなたは時空の裂け目からこの世界へやってきたみたいね。シェラから聞いたわ。ホーリアを襲った闇の魔導士を追いかけてきたって」


 はい、とヘイレンは素直に頷いた。ルーシェはまた一口紅茶を飲むと、少し考えた。


「テンバね……その昔、確かに存在していたと聞いた事があるわ。ライファス遺跡の北に広大な草原があって、野生の馬に混じって生息していたとか」

「ルーシェ先生、テンバのこと知ってるんですか!?」


 まさかルーシェの口からそんな話が出てくるなんて予想もしなかった。ヘイレンは食い入るように彼女を見つめた。シェラもようやく彼女に視線を向けた。ルーシェは残りの紅茶を飲み干すと、そっとカップを置いて一呼吸間を開けた。


「そんなに詳しいわけではないけど、私の曽祖父がその昔、テンバを保護する組織のメンバーだったの。テンバは美しくて、ヒトビトの心と身体を癒す存在だったとか。でも……」


 ルーシェの話が突然止まった。というか、彼女自身見開いたまま固まってしまった。


「……先生?」


 恐るおそるシェラが声をかけると、ルーシェは表情を変えずに彼を見た。口元が小刻みに動いている。


「わ……私……わからない。わからなくなってしまってる。……ちょっと待って」


 記憶が錯綜しているようだ。否、今、記憶が書き換えられたような感覚だとルーシェは言った。


「テンバは……そう、(オス)の個体を完全に失って繁殖不可能になったから滅びたのよ。牡の個体は……ああ……まさかそんな……」


 今度はルーシェがおかしくなった。頭を抱えて項垂れると、しばらく唸って動かなくなってしまった。


「これ……そうか。テンバだったヘイレンがヒトの姿として今ここに存在しているから、過去に聞いた筈の記憶が変わってしまったんだ。……たった今」


 シェラが呟く。ヘイレンは頭痛が来そうだった。ボクがもし、時空の裂け目に飛び込まずにあのままテンバとして生き続けていたら、先生が聞いた筈の『テンバの話』が今ここで語られていた……ということなのか?


 そうシェラに問いかけると、彼は「たぶんその解釈は間違いではない……と思う」と、自身無さげに答えた。


「ボク……ボクの行動で、みんなの記憶を一斉に変えちゃったのかな?そういうこと……だよね?」


 もう一度言葉を変えて問いかける。自分自身にも問うように。シェラは腕を組んで伏目になり不安そうに唸った。


「ヘイレンだけではないと思うよ。ヴァルストだって本来はエフーシオの滅亡時に屠られていたかもしれない。けれども奴は、己の魔力を駆使して時空を裂き、この時代に飛んできた。赤毛の奴だってそう。時空の裂け目を経てやってきたのなら、奴もまた歴史を変えてしまっている」

「歴史を、みんなの記憶を変えてしまうことで、これから先世界はどうなっちゃうのかな?テンバが滅びていなかったら……裂け目なんて起きていなかったら……」

「やめなさい!」


 項垂れたままルーシェが叫んだ。ヘイレンもシェラも、身体がビクッと跳ねた。彼女はばっと顔を上げる。その表情は明らかに怒っていた。


「起きた事をぐずぐず言ったところでもう変わらないのよ!時空の裂け目なんてあり得ないことが起きた世界だけれど、過去に戻って本来歩むべき道を進み直す、なんて事は出来ないわ。だってそれが出来たら、『今』という時間と空間は存在しないもの」


 ルーシェは一気に言い切ると、大きくため息をついた。黄玉の眼は充血し、酷く憔悴している。


「あなたが仮にテンバとして生きていた時代に戻れたとしましょう。私たちはその瞬間、あなたの存在を忘れるわ。忘れるというより、『出会った』がなかったことになる。そういう時間と空間軸になるの。わかる?」


 一転して悲壮的な声で諭すように彼女は言った。電気が身体中を走っていくような衝撃を覚えた。


 歴史が変われば未来も変わる。今からの行動でも未来は変わる。過去は過ぎた事、過去は変えられない。


「……牡のテンバは、その時代に起きた時空の裂け目に飛び込んで、その後行方がわからなくなり、(メス)の個体だけが残ってしまった。だから、繁殖出来ずに滅んでしまった。これが私が曽祖父から聞いたテンバの話」


 そう。そういう過去となってしまったのだ、この世界では。だからボクは、テンバだったという記憶が消えていたのだ。何故ならボクは、今『ヒト』だから。


 ようやく、腑に落ちた。瞬間、力が抜けた。


「ボクは……このままヒトとして生きていくしかないんだね……。それが今のボクだから……」

「……そういう事になるのかしらね。私たちからしたら、ヘイレンは『時空の裂け目から飛び出してきたジンブツ』でしかないもの。テンバだったかもしれない、なんて言われても「へえそうなんだ」としか言いようがないわ。ごめんなさい、こんな言い方して」


 ヘイレンは大丈夫です、と首を横に振った。……何が大丈夫なんだろうか。


「シェラ、ダーラムに戻って報告した後、レムレスさんが行ったところに行ってみたい。テンバが祀られていただよね?その姿を見てみたい」


 シェラはしばし考え込んでいたが、黙って首を縦に振った。






 夕方、ヘイレンはシェラとアルティアに乗ってダーラムに向かった。陽が沈みきる前に王宮都市に着いた。アルティアとは一旦別れ、ふたりは召喚士の集う大きな家に向かった。


 中に入るとロビーはがらんとしていて静かだった。先に歩くシェラは2階へ繋がる階段を昇っていく。小走りでそれについていく。廊下を歩き、角を曲がると、重厚そうな立派な扉が鎮座していた。シェラは扉の前に立つと、耳をそれに近づけた。誰かいるのか確かめている様子だった。


「ヴァルゴス様がいらっしゃる」


 小声でそう言うと、少し間を置いた。ヘイレンの心の準備が整うと、シェラは軽く咳払いをしてから扉をノックした。


 扉の向こう側は応接室だった。ソファにはヴァルゴス、彼と向かい合うようにもうひとり座っていた。深緑色の生地に、袖や裾に金の刺繍が施された豪奢なローブを纏っていた。いかにも格上であろう風格だった。


「お話のところ申し訳ありません。フラメア村及びヘルアラネアの件でご報告に参りました」


 シェラは深々と頭を下げた。ヘイレンも慌てて下げる。


「お帰り、シェラ。ふたりとも顔を上げて」


 言われるままに同時に顔を上げると、ヴァルゴスがちょうど席を立ち、ソファに座るよう促した。シェラは無言でそこに座った。ヘイレンは隣に座るのは何となく気が引けてしまい、ソファの後ろに回った。それを見たヴァルゴスはシェラの隣に腰を下ろした。


「よく戻ってきたな。もう大丈夫か?」

「はい。ご心配をおかけしました、ヴァロア様」


 ヴァロアと呼ばれた、豪奢なローブを着たヒトは顎髭を触りながらヘイレンを一瞥した。目が合って、思わず息を止めてしまったが、すぐにシェラに視線を戻した。


「後ろのコがシェラードの付きビトか」

「はい、彼はヘイレン。治癒の魔力を持っています」

「何処で知り合ったのだ?」


 シェラは一瞬言葉を詰まらせたが、思い出したように口を開いた。


「ポルテニエです。寒期の頃、黒い靄が彼と彼を守っていたアルスを襲っているところを助けたのが最初です」

「……時空の裂け目が3ヶ所同時に起きた後か」

「はい……」


 ヴァロアは再びヘイレンを一瞥する。今度は息は止まらなかった。美しい深緑の眼。視線は優しげだった。


「率直に聞くが、ヘイレンは時空の旅ビトか?」


 『時空の旅ビト』とはつまり、時空の裂け目からやってきたヒトのことを指すそうで、まさにヘイレンの事である。


「……はい」


 シェラが頷くと、ヴァロアはふむ、と顎髭を摩り続けた。しんと静まり返る。


「……すまない、ひとまずフラメア村について報告を聞かせてくれ」


 急に本題に戻ってシェラはハッとしていたが、すぐに落ち着いて報告し始めた。彼の背後から眺めていても感情が少しわかる気がするのは、テンバの特性だろうか。


 フラメア村を訪れた時には既に壊滅状態にあったこと、生存者は4にんだけということ、ヘルアラネアを討伐したこと、蒼竜騎士のシェキルを助けたこと、更にはシェキルが『砂の女王』に捕らわれていたことも話していた。


「ふむ……大方はヴァルゴスの報告と一致しているが、蜘蛛に融合したジンブツがいたとはな……。砂の女王と称したヒトも、おそらくそのジンブツと出会ったのだろう。あくまでも憶測ではあるが」

「そうですね……。私も見ていないので、と……シェキル氏の証言が本当かどうかは正直判断出来ません。ですが、彼の話ぶりは嘘を言っているようには思えませんでした」

「そうか。しかしながら、あの大蜘蛛を討伐とは大したものだ。蒼竜騎士でも敵わなかった相手だ、胸を張ってもいいと思うが」

「いえそんな……死にかけましたのであまり大っぴらには語りたくないですね」


 ヴァロアの賞賛に、シェラはやや俯いて苦笑した。






 さて、とヴァロアは席を座り直すと、話題をヘイレンの事に戻した。自然と背筋が伸びる。何を言われるのかそわそわする。


「ひとつ私から依頼したい事がある。おそらくヘイレンにも関わってくる事だ」


 息を呑んで見守る。シェラも勘付いたようだった。


「赤毛のオッドアイのジンブツの事でしょうか?」

「うむ。察しが良いな。奴は未だ行方をくらませているのだが、ヴェントルの首都に赴きウォレス王に謁見して欲しい。風の国より招集状を預かった」


 ヴァロアは胸元の内ポケットから招集状をそっと取り出すと、シェラにわたした。緑色の封蝋を慎重に剥がして中身を見る。ヘイレンには全く読めないが、美しい文字がズラリと並んでいた。


 シェラはヘイレンを(わき)へ呼ぶと、小声で読み上げてくれた。赤毛のオッドアイのジンブツについて知っている事を教えて欲しい、国内の騎士を総動員して捜索し、捕獲するにあたり手を貸して欲しい、という内容だった。トア・ル森で起きた殺戮事件の犯人の可能性は否定できない故、抵抗すれば武力を辞さないとも書かれていた。


「武力を辞さないって事は、最悪殺害する可能性もあるって事だね。……それはマズイよね」


 シェラは冷静にヘイレンに話しかける。心の臓がバクバクしている。赤毛のヒト……ロキア(ロキアーシュカ)はヘイレンを元いた時代へ連れ戻そうとしている。きっと素直に従ったほうがいいのだろうけど、ヘイレンはもう戻りたくないと駄々をこねようと密かに思っていた。


 何はともあれ、とにかくきちんとロキアとは会って話をしなければならない。……殺される前に。ヘイレンの『テンバだった頃』を知っている、唯一のジンブツだから。夢の中での話が真実であると確かめないと。


「ひとつ釘を刺しておくが、君たちが騎士たちよりも先に赤毛の奴と出会ったとして、逃すような事をすれば、君たちが捕虜となり裁かれてしまうから気をつけるように」


 ヴァロアの脅しともとれる言の葉にヘイレンは身震いした。シェラは状をそっとしまうと、「心しておきます」と述べた。

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