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9話

 さて、特に問題も無く帰って来れたわけだが……何をしようか。もちろん、やる事は山積みではある。例えば黒魔法の訓練だったり、白魔法の訓練だったり、後は剣術の訓練、そして捕らえた暗殺者から情報を手に入れる……どれを取ってもいいけど選ぶべきは……。


「リリー、捕らえた暗殺者のところへ連れて行って欲しい」

「自白なら白百合騎士団で行っておきますよ。ですので、特にシオン様の手を煩わせる事は」

「違うよ。試したい事があるだけ」


 そう、試したい事が幾らかあるだけだ。

 黒魔法を手に入れた事で頭の中に入ってきた技名とイメージ、そして本で読んだ魔法の数々を実践したいだけだ。まぁ、言っては何だけど黒魔法って大概は非合法的な技が多いし、試したくても試せないっていうのが現状だからね。


 仮に……魔法に囚われたとしてもリリーがいる。頼めばリリーは着いてきてくれるだろうし、仮に問題が起こったとしてもエルだって来てくれるだろうからな。影信はギルドの件で外に放っているから少し心配ではあるけど……二人がいればそう大きな問題にはならないだろう。


「……悪い顔をしていますね」

「当たり前だろ。俺を襲ってきたのに綺麗な女性達に痛め付けられるなんて人によってはご褒美にしかならない。俺は真っ平御免だけど……やるのなら一切の慈悲も無く地獄へ落とすだけだ」

「それはアンジェリカやアンナのためですか」


 分かっているのなら聞くなと言いたい。

 白百合騎士団に送ったとはいえ、二人の事を大切には思っているんだ。それを二人に伝える気なんて少しも無い……だけど、間接的にでも守れるのなら何だってしたいんだ。


「……否定はしない。ただ敵対する事の恐怖を与えてやるのも貴族としての一つの矜恃だろう。反乱分子を潰していくのではなく粉微塵も残さずに消し去る、そんな事は四子でさえも分かる」

「四子、と卑下する割には大人びていると思いますが……まぁ、詳しい部分は聞きませんよ。ですが、どうせならばリリーの仕事を減らすため、とも言って頂きたかったですね」

「着いてきてもらうのにリリーの仕事が減ったとは思えないよ。そこは本当の意味でリリーの仕事を減らせる時にしか口にしたくない」

「いえいえ、シオン様と一緒にいられる時間が業務だと思うわけないではありませんか。自白させるための……言わば拷問デートというものです」


 そんな物騒なデートがあって溜まるかよ。

 デートというのは男女がキャッキャ、うふふするものだろ。異性にモテた事は無いけどそれくらいはさすがに分かる。少なくとも他人を拷問してキャッキャ、うふふなんてできるわけが無い。


「なら、今度、普通のデートをしよう。休みを奪って申し訳ないとは」

「恐らくシン様にシオン様と共に外出をすると言えば、業務を全て騎士団に任せられるので大丈夫ですよ。何でしたら物事は早い方がいいでしょう。明日のダンジョン攻略のお供はエルではなく私にしてはいかがですか」


 ヤケに食い気味に反応してくるな。

 アレか、エルに対抗心でも燃やしているのかね。確かに事ある事に張り合っているような関係性ではあるけど……提案自体は良さそうに感じる。エルの強さは近くで実感しているけど、リリーの強さはそこまで知らないからな。それに……うん。


「……悪くないな。エルも俺を愛してくれるとはいえ、少しばかり執着し過ぎている部分がある。それにリリーの強さについても詳しくは知らない事からして見ておきたい部分はあるな」

「申し訳ありませんが……エル程の強さは持ち合わせておりませんよ」

「エルの強さを平均にされても困るな。せめて、冒険者ランクで示して欲しいものだ」

「それであればSSSランク程度なら軽くいなせますが……」


 うん、それが自信を持たない理由になるか?

 一応、SSSランクって人外、それも世界最高峰の強さを誇るとされるような存在だ。その強さもピンキリだろうが最弱でも人知を超えるとなれば軽くいなせて化け物と言わず何と言う。ってか、申し訳なさそうにそんな怖い事を言わないでくれ。


 はぁ……知ってはいたけど、エルはSSSランクとかで収まる器では無いんだろうな。いや、それ以上のランクが無いから同等扱いではあるのだろうけど。


「信じられますか、貴方と私は同じSSSランクという強さの枠に入れられているらしいですよ。貴方如きと私が、です」


 ううーん、想像してみたが確実にエルは言わないな。多分、敵だと思ったら一瞬で切り刻んで終わりだろうから会話する事も無いだろう。……それはそれで厨二心を擽るというか、エルTUEEEEって感じがして好きだけどさ。


「そこまでの力があるのなら胸を張って欲しいものだけどね」

「胸……張れるだけの胸などありませんよ」


 いえいえ、そこには十分な程の梨が二つ……って、そうじゃない。恐らくリリーの言う張る胸とは自信を持てないという意味のはずだ。少しだけ胸を揺らしたような感じがしたけど多分だがそうに違いない。


「俺はリリーを強いと思っているよ。だから、剣を習っているし、一緒に戦ってみたいって思っているんだ。それにいつも忙しそうだからさ。一緒に街を回ってみたくても難しかっただろ」

「……ですが、よくよく考えてみれば私の顔は売れ過ぎています。冒険者リオンが私と一緒に歩いているとなれば」

「冒険者ギルドなら暴動のよしみだと言えばいい。ギルド外なら気配を消す道具を貸せばいいだけだからな。大した問題にはならないだろうし、それにリリーという後ろ盾があると分かれば絡んでくる人もかなり減るだろう」


 毎回毎回、よく分からない奴に絡まれたり、恨み言をグチグチと呟かれるのも面倒だ。それなら二度と言えないようにさせてしまえばいい。ってかさ、エルという美女を連れているだけで絡んでくるとか脳が成長し切っていないというか、人の事を考えられなさ過ぎて吐き気すら───




「シオン様?」

「……ああ、ごめん。考え事をしていた」

「その美女の中にはもちろん、リリー・アルヴァスの名もあるのですよね」


 えっと……もしかして、漏れていました?

 ま、まぁ、美女というか、俺の周囲にいる人は全員が美男美女ではあるけど。エルもリリーもマリアもアンジェも全員、顔が綺麗で美しい人達だ。ただ美女というのも何か負けた気がするから首を縦に振るだけに留めておこう。


「それで明日はデートしてくれるかな。最悪はシオンの護衛という事で願い届を出したら公務として出してくれるはずだ」

「美しくて、胸が大きくて、強いリリーに頼みたいという事ですね」

「ハイ、ソノトオリデス」


 もう……出会ってすぐのクールなリリーはどこにもいないんだね……。フランクな関係性に近付けて良かったのか、悪かったのか……いや、好意的に思ってくれているのなら確実に良かったか。


 さてと、リリーとの雑談も楽しいけれど、それは明日にでもできる話だ。今は先にやっておくべき事を優先した方がいい。どうせ、リリーと二人っきりでいる事をエルもマリアもよくは思ってくれないんだ。今日はさっさと戻って明日の準備をした方がまだマシだろう。


「……寝ていられるとは随分な神経だな」

「ふふ、そうですね……本当に殺してしまおうかしら」

「はい、止まれ。それをやられたら折角、生け捕りにした意味が無くなってしまうだろ。気持ちは有難いけど多少は我慢してくれ」


 通された牢の先にいたのは最後に戦ったギルドの幹部ただ一人、恐らく他は別の場所に入れられているのだろう。……にしても、屋敷の敷地内に広大な監獄もあるとはね。


 それは置いておいても冗談で口にしただけなのにすごい返答だな。アレだけ重度な傷を負っていて応急処置しかされていなかったら、常識的な対応を求める事の方がおかしな話だろ。未だに傷口からは血が漏れているみたいだし、下手をすれば勝手に死んでしまうだろう。とはいえ……敵は敵だ。そこに対して優しさを持って接する気も無い。


「起きろよ。起きないのなら……勝手に契約を進ませるぞ」


 俺の言葉に対しての返しは何も無い。

 体を軽く動かすでも何でも良かったんだけどな。ただ返しが無いのならそれはそれでいい。ここから先は俺のやりたいようにやれるという事だ。公爵家の息子を襲ったという時点で、いや、暗殺者ギルドという闇ギルドに所属している時点でコイツに人権は無い。


「それなら好き勝手遊ばせてもらう事にしよう。お前達には色々な事を聞かなければいけないからな」

「色々な事……お言葉ですが、それは別にこの者から抜き出す必要は無いのではありませんか。それこそ、暗部の者から」

「何を言っているんだ。影信達が話す事を躊躇っただけで俺にとっての聞く意味はそこで潰える。俺が欲しいと思い、そして着いていくと言った者達には最大限の優しさを持って対応するべきだろう」


 俺のような信頼できるか分からない人間を大切に思ってくれる人がいる限り、その忠誠心に返せるだけの優しさはあるべきだ。誰も彼もを優しく愛する人間になる気は無いし、募金や何だと偽善を行う気も無い。ただ……もう一人にならない選択くらいは取り続けたいかな。


「対して……その両者に満たない者には凄絶な罰を与えるまでだ。最後の優しさを踏み躙った大馬鹿者には些細な慈悲も与えるべきでは無いと俺は思っている」

「……なるほど、口を出してしまい申し訳ありませんでした」

「いや、俺の気持ちなんて口にしなければリリーには伝わならないだろ。そんな神でも出来るか分からない事を皆に望む気は無い」


 まぁ、その逆はできるようにするべきだと思うけど。全てを察する事はできずとも、話している相手が誰であってもとも……そこまでの事は求めないがせめて俺と一緒に歩こうとする人達の気持ちくらいは察せるようにしたい。それが上に立つ人の役目でもあると思っている。


 あの時に、二人が甘い心で外へ出るかもしれないと察せる事ができていれば……事前に三人で一緒に外へ出る事だってできたはずだ。だから、そこら辺も一人の配下を従える者として多少の矜恃は持っておかないとな。


「では、始めるとしよう。寝たフリが永遠に続くと思うなよ」

「何、を……?」

「今更、声を出しても遅いわ。───契約(ユニレートラル)


 俺と血に伏した幹部の体が淡く光った。

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