爆ぜる銀光3
赤嶺町は混乱の坩堝の中に居る。
2日前、町を覆っていた赤い光の壁が消えた。
赤嶺町がEvilsの被害を殆ど被っていないのはあの赤い光の壁を貼ったEvilsのお陰だという町民も多く、年寄りの一部は赤い光の壁を張ったEvilsを神様のように奉っているものも居るほどに、赤嶺町はあの赤い光の壁に依存していた。
そんな赤い光の壁が、原因も、理由も分からないが、消えた。
町役員達で原因の調査をしようとしたが、なにも分からないということしか分からず、そもそもあの赤い光の壁自体がなんなのか、どう言うものなのかもさっぱり分からない。
だが、なにも分からないだけでは誰も納得してくれないので、急遽、元々赤嶺町に住んでいた人達から大人を集めて意見を出し合おうという会議をすることになった。
こういった町内会議は特別珍しいことではない。
最近では、半年程前に少し離れたところで新たに発生したEvils災害の被災者受け入れのための会議が行われた。
既に学校や空き地の殆どが被災者のために開放されていたため、正直に言うと受け入れる余裕はあまり無いが、それでも補助を受け続けるためには有事に被災者を受け入れも必要となり、会議は盛り上がった。
「・・・」
今回の会議では、前回とは真逆に誰もが黙り込んでしまっていた。
何の情報もなく、対処の手段も分からない。下手なことを言えば、赤い光の壁に依存している年寄り達を刺激することにもなりかねないし、前例もない案件故に解決の方向性も分からない。
そんななか、事情を悪魔に説明されていた績苗青典は胃を痛めていた。
あの悪魔は、力の殆どを杖として茜譲渡しているため、今は結界を張り続けるほどの力がないらしい。
つまり、茜が悪魔の使っていた力を使えるようにならないとあの赤い光の壁が復活するようなことはない。
突発的な町内会の呼び出しに出席するために、朝既にリビングに居た悪魔に留守を任せてしまったが、青典としては茜に不審な悪魔とは関わって貰いたくないし、副作用も分からない魔法なんてものに振れても欲しくなかった。
魔法や、超能力のような力を夢見たこともあるが、それに巻き込まれるのが娘であるのなら、青典は反対せざるを得ない。
悪魔が空間に亀裂を作って移動してくる時点で、青典にできる対策など無いに等しく、茜が杖を手に取ったときに抵抗しようとしてなにもできなかったことから、青典は自分にできることがなにか無いかと考え続けていたが、未だに結論はでない。
だが、下手に力を手に入れてしまっては、制御することができなければ逆に危険に繋がるかもしれないという考えもあり、青典か希紅が見ている範囲であれば悪魔が茜に魔法を教えることを許した。
それに、とんでもないことに、このままだと悪魔の結界が無くなったのを、今は様子を見ている他のEvilsが攻めてくる可能性があると悪魔が言いやがった。
つまりは、茜は悪魔からEvilsに対抗するための力を学ぶしかない。
これらの事実を茜を絡めずに説明する方法がどうしても思い浮かばない。
茜のことを考えるなら、結果的にではあるが、赤い光の壁が帰る原因になった等ということはできない。
だが、説明できなければ土地に愛着を持つ人達や、家持ちの人に家を捨てて避難しろ等と言っても聞く耳を持ってくれないだろうし、仮に口頭で説明しても気が狂ったと思われるのが関の山だろう。
青典は、この場を終息させるための手段を考えて胃を痛めていた。