爆ぜる銀光2
「茜ちゃんには逃げる術と守る術、そして戦う術を覚えてもらうよ。」
「?」
変身魔法を初めて使った翌日、パパとママは町内会に参加していて家に居ない。
そんな朝に、当然のようにリビングに居座る悪魔が胡乱なことを言い出した。
前触れもなく主題を話し始める悪魔相手に、私は疑問符を浮かべるしかなかった。
得意気な顔をした悪魔が右手の人差し指を立てながら話し出す。
「茜ちゃんは魔法少女ってどんな存在だと思う?」
「名前からして魔法を使う少女ってことは分かるけど…そもそも魔法少女ってなんなの?」
何度かこの悪魔が言っている魔法少女というのが何なのか私には分からなかった。
魔法を使えるなら魔法使いだろうし、性別で区別するなら魔女で良いはずだ。
わざわざ区別する理由が私には分からない。
「ん?あー、そっか、この家まだテレビ放送入らないし見てないかぁ。たまに朝に魔法使える少女達が悪と戦うって感じのアニメやってるんだよ。避難所に有線で引かれてるテレビで子供達が見てたからすっかり茜ちゃんも見てるもんだと思い込んじゃってたな。失敬、僕は亀裂の隙間から覗き観てたんだけど面白かったし茜も機会があったら観ると良いよ。」
「ふーん。それで、その魔法少女ってどんな存在なの?」
あまりアニメに興味はないけども、この悪魔私の家でも観れないテレビとか観てるの少し狡くないか?と思いつつ、悪魔からの最初の質問を返すように、悪魔に話を促すことにした。
「魔法少女と言っても色々種類があるけどね、重要なのは魔法を使えるってとこだよ。茜ちゃんは変身しかできないヒーローが敵と会った時に戦うことができると思う?否!否だよ!変身したとしてもそれで力が上がるとかそういう付加効果がないと単なる一般人と同じだ!魔法少女はヒーローであるべきなんだ!最低限敵と対等に戦えるか少し弱いくらいの力がないと誰も魔法少女をヒーローとして認めてくれないだろう?だからこそ、戦うための魔法を使えることこそが魔法少女と変身できるだけの一般人を分ける要素になるってことだ。」
「それで?」
「つまりはだよ、僕は君に正義になって貰いたいんだ。ニュース番組でもやっていたが僕達はEvils、つまりは悪そのものって訳だ。うってつけの敵役だろう?まあ、僕は茜ちゃんのサポーターポジションに着くつもりだからもし倒すにしても最後の方にしておいてほしいけどね。」
「言いたいことは分かった。」
ようするに、この悪魔は魔法少女のアニメを観るだけでは飽きたらず、私をヒーローに仕立てて自分だけの魔法少女を作りたいって言っているのだろう。
ヒーロー、つまりは英雄になれと言っているのだ。
「そういえば茜ちゃんは僕達がEvilsって呼ばれるようになった理由とか知ってるかい?」
「勿論、アメリカで行った国連会議での言葉からだよね。」
突然話題を変えてきた悪魔に対し、そんな常識知らないわけがないと思いながら答える。
This is an important act of invading the world itself, And the enemy that emerges from the clack is Evils itself for us.
これは世界に対する侵略と言う重大な事象であり、亀裂から現れた敵は悪そのものである。
敵は悪そのものであるという力強い言葉は、そのまま亀裂から現れた者達の呼び名、Evilsとなった。
これ等は新聞で何度も引用されているし、あまりにも繰り返されすぎて覚えてしまった。
「そう、Evilsは侵略者であり、悪なんだ。僕が言うのもなんだけど、悪は正義によって倒されるのが綺麗な物語だと思わないかい?」
とても悪魔を名乗る奴からの言葉には思えないが、私もバッドエンドよりはハッピーエンドで終わる物語の方が好きだ。
その後の会話はあまり意味のないものだ。
悪魔が「僕の好きな物語は…」と話しているのを、適当に頷きながら流していた。
私が何をするにしても、パパとママに相談したい。
早く帰ってこないかなぁ。