爆ぜる銀光1
私は、赤嶺町から出たことがない。
赤嶺町は平和で、日本のなかでも数少ない、そんなにきれつやEvilsによる被害が出ていなかったのもあり、学校や公園等の公共の場を整備して避難民達に貸し出すことで政府から補助金を得ていたり、食料品等の生活必需品を比較的優遇して受けとることができていたため、飢えて苦しむようなこともなかった。
だから、私は、績苗茜は、今の世界について無知にも等しかったんだ。
茜は、真っ赤な杖に横乗りして空を飛んでいた。
赤嶺町の上空から地上を見下ろしたとき、茜は悪魔が誕生日パーティーに現れたとき以上の恐怖を覚えた。
「やっぱり筋が良い!飛行魔法は本当に難しいんだよ?均一に魔法の力を纏えないとすぐにバランスが崩れちゃうからね!僕であっても習得にかなり時間がかかったというのに!」
杖すら持たずに茜の横を空飛ぶ悪魔は、異様なまでに楽しそうだが、未だにでかいEvilsによる傷跡は、上空からだとはっきり見える。
隕石が落ちた跡のようなクレーター。
未だに片付けの終わっていない旅客機の残骸。
倒壊したビル郡。
そして、異様なまでに綺麗な赤嶺町。
クレーターは、Evilsによる爆発痕。
12年前に、Evilsが亀裂から現れた瞬間に、爆発したことによるクレーターらしい。
旅客機の残骸は、旧世界終わりの日に、空中に突如出現した亀裂に追突し、墜落した機体。前方がひしゃげていて、生存者は居なかったらしい。
倒壊したビル郡は、旧世界終わりの日に起きた大きな地震によって倒壊したものだ。
地中にできた亀裂によって地層が刺激されて発生した地震ではないかと予想されているが、真相は分からないままだ。
そんな、地震の影響すら見えないのが赤嶺町だ。
隣を飛ぶ変な悪魔は、つい先日まであった赤い結界で赤嶺町を守っていたのだ。
この悪魔を名乗るEvilsは他のEvilsとは何か違う気がする。
「ふーむ、意識を散らしながらでも安定して飛べているね?これはさらに1段ギアを上げても良い頃合いかな。これから魔力の弾を茜ちゃんに向かって撃っていくからしっかり避けてくれよ!当たっても痛くは無いだろうけど飛んでるとこに衝撃があると落ちてしまうかもしれないよ!」
「わわっ!」
悪魔が放つ魔力の弾を必至で避けていたら、さっきまで考えていたことなんて覚えてられなくなる。
赤い杖から赤い光を放ち、茜は空を駆ける。
初めて変身した日から、茜は悪魔に魔法を教わっていた。