赤壁の守護者4
変身。
魔法の基礎である変換の発展系。
魔法の力そのものを別のものに変えるのが変換の魔法だ。
そして、変身は、対象をそのまま魔法の力に変換する魔法だ。
魔法の力は、本来僕の住んでいた所にありふれていたものだけど、この世界にはそんなものは存在していなかった。
あるいは、昔には存在していたのかもしれないが、12年間観察していてもその痕跡はどこにも見つからなかった。
その世界にとって本来あり得ない事象は、対価無しでは実現し得ない。
僕以外のEvilsであってもそれは同じだ。
今世界中で起きている程度の異常であれば、多少のずれはあれど、この世界の法則だけでも再現可能なものだけだ。
12年間貼り続けていた僕の結界は、普段は光を拡散する程度のことしかやっていないから存在できていた。
あの結界の本質は、いわゆるところの縄張りの主張のためのマーキングに過ぎない。
世界の法則をごっそり塗り替えるには、対価が必要になる。まだ本格的な陣地争いにすらなっていないというのに、払える対価を持っているものは稀だろう。
僕の世界の法則であった魔法は、明らかにその対価を必要とする業だ。
不等価交換、それが魔法の性質であったとしても、ここまでなにも消費しないのは明らかにおかしい。
茜ちゃんは杖や僕のサポートがあったとは言え、一切の魔法の力を消費せず、変身して見せた。僕の目をもってしても、茜ちゃんから臓器や筋肉、骨を含めたなにも失われていない。
流石の僕にも予想外だ。
僕の故郷でもここまでの逸材は存在しないだろう。
予期しない幸運に頬が上がる。
手をパチパチと叩き、茜ちゃんを誉める。
「良くお似合いですよ」
この才能があれば、計画は前倒しにできる。
かつて、赤壁の守護者と呼ばれたEvilsは、頭の中で計画を練り直す。
ここまでプロローグ