序章
割れる。
卵の殻が割れるかのように。
世界の殻も、衝撃をもって割れるのだ。
旧世界終わりの年、鈍い轟音と共に、空に、地に、海に、そして、観測可能な宇宙域にも、未知の亀裂としか言えないような線が発生した。
大小合わせて数千と発生した亀裂は、世界中に点在し、誰一人として亀裂の外からその内側を覗くことのできる者は存在しなかった。
それは、地球を中心に発生していたわけではないが、地球からの観測上は地球を中心に発生しているように見えた。
ブラックホールのように何かを飲み込む孔ではない。
暫くの間は、発生した亀裂に戸惑ったものの、ある国は観光地のように、ただ近付けないようにしていたり。ある国は他の国の調査結果を待ち、いつでも突入可能なように武装を固めていたり。ある国は直接調査隊を編成し乗り込んだりした。
それらの亀裂へのアプローチは、ただ、無意味に終わったと言える。
亀裂の内側からは有線無線問わず、あらゆる信号が途絶し、身体の一部だけを亀裂に入れていると、その亀裂との境で血流が遮断され、数分の後に死に至った。
君達の理解しているあの亀裂に関する情報はこれだけだ。
あとは、君達の知る通りの歴史をなぞる。
僕達悪魔は亀裂を通して君達の世界を侵略しに来た。
だけど、僕達は亀裂とは別の理屈の存在だよ。
僕達を受け入れるも拒んで戦うのも君達の自由だ。
だけどね、もし僕達と戦うんだとしても、僕だけは受け入れた方がいい。
僕は君達に力を貸してあげられる。