覚書 帝国エルフ
帝国エルフ(ハイエルフ)
神より遣わされた第一の者、世界の支配と管理を任された種族を自認したパイロットフィッシュ(泥鰌)。その魂は天上の炉で打ち出され肉体は仮初の物でしかない。彼らは他の種族の様に生きる為にあくせくと働く必要は無く、思う様に思索と探究を続け美しく壮麗な文明を作り出した。近くにいるといい匂いがする。
第一世代は覚えていた事だが、一時期は言語も持たず火を焚く事も出来ずウホウホして木の上に住んでいた。そこから地球ホモサピエンスであれば当に中世期に入るくらいの時間を掛けて言語、火の使用、精錬、等を発明し急速に文明を作り上げた(ホモサピエンスの10倍は時間が掛かっている)。初めから強くて死なない彼らは便利にする為に文明を作った訳では無く、神を称え自分達の美意識の発露として文明を作り上げた。
彼らをして偉大な文明に押し上げたのは奇跡の解体である。元より自然に奇跡を振るえた彼らは自然科学の代わりに奇跡を研究・分類し魔法として文明に組み込んだのである。その過程で元来有していた奇跡の力は退化していった(それでも人類より遥かに強靭だが)
遥か天まで届く塔、白銀の装飾を至る所に施された壮大な都市、地を割り、環境を改変する術、その力は自らをして神の地上に置ける代理、己れ達を後身を導く者と定義しするに充分な物だった。
それこそが彼ら持ち合わせる最大の業である。支配への渇望、完璧に作られた彼らは、その完全さ故に劣った者を支配し管理すると言う欲望からは逃れられなかったのだ。
彼らの帝国の滅亡の原因である人類との戦争の発端は其処にある。第二種族を管理しようとする傲慢から破滅的な戦争を引き起こし、第三種族を絶滅させようとすらした彼らであったが、第四の種族である人類は他の二種族に比べ遥かに脆弱で管理しやすく彼らの支配への欲求を満たす存在であった。
人類はドワーフ達の様に反抗的では無い。オーク達の様に野蛮で凶暴では無い。ただ弱く愚かで道を知らぬ種族だった。
それ故にエルフ達は初期は全くの善意から、中期は使命感から、ドワーフ領土に脱出した人類の主導による大反乱に直面する末期までは欲望を剥き出しにして人類を支配した。
確かにエルフは人類に文明を授けた。現在砂漠と化した南方密林地帯で、熱病に喘ぎ、獣の襲来に怯え、裸同然で身を寄せ合って生きていた種族に手を差し伸べた。
エルフは言葉を文字を教え、光り輝く都市の中で暮らし金絹の衣を纏い柔らかな寝台に眠る事を許した。しかし、それは最終的には欲望を満たす為の行為に堕した。
確かにエルフは人類と共存する為に自分たちには必要の無い物を作り出した。下水網の拡張、広大な農地、医療設備、墓所まで。
だがそれは対等になる為の努力では無い。対等なら人間吸いはしない、品種改良はしない、家の人間は不細工だけどそこが可愛いとか言わない。
作中主人公はエルフの一部は人間の品種改良を趣味にしていたと述べたが、実際の所、帝国エルフは一家に3人は人間を飼育しており、人間の飼育は一般的に過ぎて文書に残って居ないだけで、短命な人類の自分達のお気に入りの血統を残す為、家庭乃至は一族間での人間のやり取りはごく当たり前の行為だった。専門家がいるとはそう言う事なのだ。
帝国エルフは言うだろう
「彼らは家族である。故にその血統を絶やさず見守っている。」
完全なる愛玩動物。其れがエルフ帝国での人類の姿だった。其れは以下に表す人類を形容する言葉からも分かる。
初期 「弱き者」「怯え続ける」
中期 「庇護下にある」「学びの途中」
末期 「家に居る」「一族の養う」「寝台の横に居る」「我が家の」「私の足元に居た頃から」「私の可愛い(女性語)」
ご覧の通り末期は一種族全部を私物化して独立させる気は無い事を隠していない。其れならば愚鈍なままにしておけば良かったのだ。永遠に楽園の中で飼い殺しにすれば良かった。
真に愚かなのはエルフだった。彼らは自分達の側に侍る愛玩動物に従順である事を求めて置きながら、知恵も感情も有する者たちに簡単なお使いだけでなく、本を読む事も、経済活動も、偶に同種が集まって酒を飲む事も出来る中途半端な自由も与えてしまった。
エルフ帝国としては其れが可愛い人類を長生きさせる秘訣であり、失態を犯した人間を嗜めるのも楽しみの一つだったのだろう。その様な態度が人類と言う、度し難く、執念深く、自分達を不当に扱う(不当では無くとも舐めてたら)存在を許しては置けない生物兵器にどれだけ憎まれる行為か理解出来なかった。
それ故の大反乱だった。例えドワーフの手引きが無くともいつかは起こる事だったとしか言えない。嗚呼愚か者達よ汝らは己れの傲慢さ故に手を取り合える筈の者を三度突き放し、怒りに寄って滅びる。




