覚書 ではこっちから異世界転生したら
貴方は異世界転生したチート系転生者である。一見平凡な剣と魔法のこの世界に転生した貴方はどの様な人生を送るのであろうか?
貴方は不幸にも人生を途上で終えてしまった!
貴方の魂は神の御手により新たな世界に送られる事になる!
生れ持ったチートで第二の人生を謳歌して欲しい!
エラー!エラー!エラー!この世界は試験運転中です!一部MODは適応できません!
肉体限界は人類最高峰に制限されます!頭脳限界は人類最高峰に制限されます!魔法は人類には実装されておりません!寿命は人類限界に制限されます!チート武器は制限されます!無限増殖バグが制限されます!…は制限されます!…制限されます!…は制限されます!制限されます!制限されます!…に嗅ぎ付けられました!…は貴方を警戒しています!…達は貴方を探しています!
では良い人生を!
貴方は一般的な村人として生まれた。
貴方は拡大を続ける森を止める為、努力する開拓民の子供です。貴方が前世の記憶と人間さんの中では比類ない力の一端を取り戻したのは七歳になる時でした。
貴方の幼少期は幸せな物であったと思われます。危険極まりない森の入り口に住んでいるとは言え、両親は健在で、三人いる兄弟とは仲が良く、しかも三男の貴方は生まれつき利発なので、村にある礼拝堂では読み書きを教わる事が出来る幸運にも恵まれました。
貴方は幸運です!
貴方を教育してくれる巡回の司祭様は熱心に貴方を指導してくれています(教義の関係上ベールと厚い巡回司祭の旅装束を脱がない司祭さまのスキンシップと息も荒いのが若干気になりますが)
貴方は本当に幸運です!
貴方の父は暗く不気味な樹海の渚で何度となく危機に陥りましたが、その度に不思議な幸運に恵まれ無事に帰ってきました。しかも大きな獲物を携えてです。おかげで貴方達家族の栄養状態は良好です。
貴方は本当に本当に幸運です!
何故なら幸せな少年時代を過ごせたからです。この厳しい時代に置いて、飢えと寒さに苦しまずに生きていられる者は多くはありません。
貴方は本当に本当に本当に幸運です!
そんな苦しむ人々に森は口を開けているからです。誘われる様に森に入り二度と帰って来なかった人々を貴方は両親の口からよく聞いて育ちました。
ですが悲しいかな貴方は愚か者でもあります。
貴方は今年で15になります。貴方はこの狭い世界から飛び出し世界を見て回ろうと考えていましたね?それなら早く行動に移すべきでした。
貴方は前世の記憶から、この敬虔で純真な村の人々がなぜ危険な森に頼らざるを得ないのか、慈愛を持って彼らを見守っているにも関わらず、森に関してだけは人類への罰であるとか、神が献身を試されている等と人が変わった様に説教する司祭さまに疑問を覚えていた筈です。
貴方は「彼女」の目をしっかり見ましたか?あの濁った眼を…
そう彼女です。貴方はその聡明な頭脳で分かっていながら、異世界の事だからと目を逸らしていましたね?村の外は危険な世界の筈です。護衛も付けない女が村々を回って歩ける筈があると思っていたんですか?
女性の地位に関して疑問は?この過酷な世界で女性は庇護される対象です。温かく時に厳しく前世との差異を教えてくれた母は常に父を立てていた筈です。貴方の初恋の女性は今の貴方と同じ15で隣の村に嫁いでいきましよね?
そんな世界なんですここは。女性の地位は低いのです。
その筈なのに村人たちは彼女の説教を有難く聞き、その魂を救われ人類の最前線としての使命に意義を見出していました。
おかしいと思わなかったんですか?
全ては貴方がたを外に出さない為です。全ては貴方がたを管理する為です。
残念でしたね、チート転生者さん。
やっと見つけましたよ。
完成された小さな世界で外に希望を見出すのは勇気のある者です。私たちはそんな勇者を何より警戒しています。でもそんな人々も、この世界では一生に一度の聖都への巡礼で満足して人生を終えるものなんですよ。
普通はね。
巡回司祭に世界への冒険の夢を語りましたね?
優秀な人間さんは普通、聖都で坊主になる夢を持つのが一般的って知ってました?貴方、親御さんから何度も嘆かれていた筈ですよ?なんで知ってるか?そりゃあ司祭様は信徒の悩みを聞く者だからです。
海への憧れを語りましたね?なんで森に囲まれた世界に住む貴方が大きな潮だまりの概念を理解しているのですか?知ってました?この世界の海の鯨って角も牙も生えている化け物なんです。貴方が偉そうに講釈した鯨は森の深淵にいる奴だけです。娘…司祭は直ぐに私に知らせてくれましたよ。
残念でした。貴方の物語はこれで終わりです。
数多の女性を侍らす夢を見ていましたか?いえ、恥ずかしがらずとも良いのですよ。男子一生の夢と言う奴ですからね。
それとも天高く積み上がる財貨が欲しかった?大丈夫、直ぐにそんな物要らなくなります。
矢張り、胸躍らす冒険がご所望でした?駄目です。まだ始まってもいない物語を荒らすのは駄目。
おや力が抜けてきました?眠くなってきた?良いんですよそのままお眠りになって下さっても。卑怯者?坊や、真正面からズルしてるのに挑むのは馬鹿って学校で習いませんでした?
もしかして引きこも…ごめんなさい。そんな仇を見る様な目で見ないで下さい。怖いじゃないですか、真の力とか発揮しないで良いんですよ?アレですね、貴方も現代社会の犠牲者なのね。お姉さんそこは同情します。優しくないですよね世界って。
でもそんな貴方に朗報です!幸運な貴方に綺麗なお嫁さんをお渡しいたします!いやぁ、好みが五月蠅くて嫁ぎ遅れてたんで心配してたんですよ!目出たい!
誰って、何時も顔を合わしてたでしょ?ああ、ずっと顔隠してたか。でも心配はご無用!美人は美人です!性格は悪いけど……イテェ!殴る事はないでしょ!
驚きました。今、私をどついてくれたのが貴方のお嫁さん。ずっと貴方を教育してくれていた司祭さまです。綺麗でしょ?見た目は。
アウチ!石!使うな!死ぬ!
ごほん。そんなに目を丸くしないで結構。じゃれてるだけです。
では、結婚式と行こうじゃないですか!早い?順序?貴方ねぇ、チート転生者さまなら覚悟決めなさいよ?ゲームオーバー画面は唐突なもんでしょ?
なんでお前も脱いでるのか?分かってる癖に♡
ではイタダキマス!残念!君の冒険は終わってしまった!初めての相手はワシじゃあ!覚悟せいや!




