第六十三話 ゲーム自体を変えよう
あ~腹立つ!自分の迂闊さもですが、奴めのやり方に腹が立ちます。
だってそうでしょ?確かに私は卑怯卑劣でございますよ?ですが盤面で使える駒は私も含めて、この世界に初めから存在した者だけです。
相手の頭に直接手を突っ込んで記憶を弄ったり、人様の子供で決戦兵器を作って等ません。そりゃあ、これまで色々してますよ?ですがそれはリスクを冒しており命を掛けております!私たちは座ったまま人々を操るなんて事は殆どしておりません。なに?手紙一つで人類圏を動かした?
心外です。確かに書簡一つで人間さんをこの北に召喚した様に思われるかもしれませんが、それは旧帝都でのすったもんだがあったればこそ、私たちは彼の地に百年以上の時間を掛けて丹念に土を耕し種を撒いて水をやってきました。
現在のエルフは農業らしい農業はしておりませんが、人の心と言う物をでせっせと毎日耕しております。人類圏を御覧下さい、狂信、欲望、恐怖、色々な名前を持つ芽は大きく芽吹き果実を実らせております。
私はそれを活用しているだけです。策謀とは、その様な弛まぬ努力の結晶なのですよ?勝手に無から生まれる物ではございません。軍師とか参謀に憧れる皆さまは、其処の所を理解されると良いでしょう。
主人の横で「今です!」とか「こちらにご用意できています」とか言うのが軍師役だと誤解しません?軍師とか過労死しますよ?現場を走り回り、押し寄せる報告書を決済し、上と現場の調整に奔走した上で初めて主人に献策や意思決定を具申できるのです。
参謀となると完全にそれが仕事で、何処かで踏ん反り返っているのではなく、常に現場と意思決定の場を繋ぐ為に働かなければいけません。
まあ、偉そうに言っている私が、それを完璧に出来ているかと言うと御免なさいですが、少なくとも自分で走り回ってはいます。どうだ!安穏と後方で茶ぁ飲んでるのではないのよ!褒めて!称えて!ナデナデして!愛を囁いてくれるとお姉さんとても嬉しい!
嫌ですか?そうですか、、、ケチ!
褒めてくれないから話を戻しましょう。私怒っているんです!私の眼前(とい言いましてもエルフ的千里眼を通しての遥か彼方の光景ですが)でキャッキャッしている二名!私に化けたロキとお坊ちゃん!
何を奴隷と主人の間の許されぬ愛。実質的な妾扱いだが身分上は奴隷として扱う、だけど無骨な主人の動き一つ一つに確かな愛情が感じられ、奴隷の方も黙っているが主人に対する細やかな気遣いが二人の間の確かな絆の存在を確信させる、、な事してる!
分かるんだよ!デレデレしてるのは!気づけよ!お前の初めての女は私だろ!子供の頃からお世話されて筆をおろした女を間違えるな!
私はねぇ、生まれてこの方、人の男を取る事はしても取られた事はないんです!それが同じ女であればまだ我慢は出来ます、私は所詮毒婦ですから真実の愛や運命の出会いに負ける事もあるでしょう。
負けた相手男だよ男!神に性別など有って無いような物とは言え、神話上もアイツは基本男性神格!妻もいれば子供もいるのよ!それに、、、それに男の取り合いで負けようとは、、、、くくくっくく悔しい!妬ましい!きぃ~!
オノレオノレ!この恨み晴らさでおくべきか!我が子ばかりか男まで奪うとは不埒千万!その上それを自分の駒にしよう等、天が許しても私が許さん!必ず現世から叩き出してくれる!
お前が言うな?シャラップ、五月蠅いわい、私が言ってるのはポッとでがチート使って良い様に盤面を弄って良いのかと言うことです。
本来なら我が子にしろ、お坊ちゃんにしろ直ぐに見つかって対策取れた筈です。それを私の頭の中を弄るわ私に化けるはで横からかっ浚って行ったんですよ?ノーカン!それノーカン!
喚いてどうなるものでもないか、、、認めましょう。奴が上手です。所詮ここで吠えても負けわんわんのわおーん、この先どうするかが問題。
それにしてもイチャコラする二人の横の我が子、静かですね。なんかイメージでは止まらなく食べて、壺や樽ごと酒をガブガブしそうな感じだったんですが、よく見ると船こいでますね。
目の前の長卓には食べ掛けの肉や酒が、、、酒がないな、その代わり干葡萄や、南方帝国産の人の実(ナツメヤシの実ですね、この世界に初めて来た人間さん達がこれで生き延びていた事から付けられました、人類での呼称は命の実)卓上の壺に入ってるの蜂蜜かな?
分かった。あの子まだ本当に五歳なんだわ。体が大きいだけなんですよあの子。
この世界の知的生命体はある一定迄、精神的・肉体的成長は同じです。エルフ以外はエルフを素体として作らておりますから、其処の所はエルフに共通しているんですね。
ですので二次性徴までは誤差が殆どありません。その後は長命であるエルフは加齢がある程度で止まり始め、髭達磨達は遅くなり、オークは見た目の加齢と身体能力が微減していき、人間さんはヨボヨボになります。
精神的成長も一定までこれに同期します。エルフはその後、魂の経年(劣化ではありませんよ)により精神的に老成していくわけであります。
となりますと。どデカイ体で涎を垂らし始めた我が子は頭の中まだ五歳、、の筈です。五歳、、、五歳の時、他の子は何してたかしら?
長男、猿のリーダーとなる。長女、大フクロウに掴まれて深夜帰宅、巣で寝てたと発言お尻ぺんぺんに処す。次男、おねしょを隠そうと逃走、二階から飛びだしそのまま風に乗り木の上に引っかかり降りられずに号泣。次女 毒虫を生で食べてゲ~する、その後火を通す、干す、糞抜きを覚え、チャレンジを繰り返す。
碌な事してねぇなオイ。どれだけ気を揉まされた事か、ホント十人超えるまで気が気でなかった。全員バイタリティの塊でしたね。一瞬遠い目になりました。あれを乗り切れたらなんだって出来ますよホント。
そうですね全員嵐の子でした。私、思い違いをしておりました、成りがどうだろうと戦闘力が高かろうと、家の子は家の子で全員悪たれです。
あの子もそうなのでしょう。ピンクがかった赤銅の皮膚、筋肉の鎧に脂肪が軽く乗った正に戦う者の肉体、全身矢傷に刀傷どれ一つも致命には至らなかった漢の勲章、髪の毛を黒々と腰まで伸ばし、そのお耳はエルフの特徴の長耳がやや丸い(ピンクが掛かったで分かると思いますが彼はハーフエルフです)
お顔は、、、我が愛しきお兄さまも巌の様な表情ですが、彼の場合それに輪を掛けて厳つい、女の惚れる顔ではなく男の惚れる顔でして、岩を削り出して作ったと形容できる程です。
それが口の端に食べカスつけ涎だしてむにゃむにゃしてます。可愛いなぁ。いえ親の欲目ではありませんよ、実際可愛いのです。
あれです、虎の寝顔とか熊が岩の上でボーっとしてる所とか可愛いのと同じ。近寄れば一瞬でオヤツにされると思ってもあれ可愛いでしょう?
うむ、彼の寝顔を見て少し冷静になれました、これならやり様はあるでしょう。
ロキはゲームに二つチートを使いました。一つは記憶の書き換え、もう一つは自分の乳を与えた神代の英雄です。ですが、それは奴の限界を示してもいます。少なくとも英雄は不完全ですし、記憶の方は私を壊す事までは出来ないときています。
彼、確か私を現代に汚染されてるとかなんだとか言ってましたよね?私も言ってやりましょう。
「あなた様こそ、人が積み上げてきた悪意を甘く見過ぎでは?」
ゲーム自体を変えましょう。こうなったら私、英雄を倒す事に主眼を置きません。




