第六十話 嵐の子
危うく骨を砕かれる所でした。
人間さん程度がエルフに首絞めプレイしても屁でもありせんが、オークの怪力でやられると流石に無理なのよ。それが心配の余りブレーキが利いてないとねぇ。
エルフは熊と相撲取れますが、鍛えたオークはボクシングして勝てますからね。それでギュ~された物でして、、、あ~イテェ。
私が悪いんですがね。油断し過ぎましていました、いや流れ矢は怖い。
殺意が乗ってれば、こうエルフ的センスがぴきーん!きゅぴぴーん!と来て避けるなり掴むなり出来るのですが適当に射られた意志もなーんも乗って無いのは無理!エルフ殺すにはこう言う無機質な攻撃が最適でして、ホント適当に面制圧してその範囲内に収めるのが吉、其処ん所を分かっていた嘗ての人間さんたちは、長槍での槍衾とか、亀甲陣形で耐えながら投擲系の武器をぶつけるとかしてたそうです。
いかん、つい余談に逃げてしましました。だってねぇ、も~少~し余裕と言うかタイムリミットがあると思ってたんですよ。
精神攻撃かまして来るくらいですから、時間稼ぎしているなこんにゃろ位には余裕こいてました。だってさあ、この五年大したアクションしてこなかったんですよ?慣れない子育てに四苦八苦してるか、神様らしく、オークに「これは運命の子だ」とか何とか言って預けるムーブをしてるかなぁと思ってました。
そう責めないでくださいまし!想定が甘かった事は重々承知しております。でもさぁ、五歳よ五歳!五歳に何が出来るの?
確かにこの世界はおファンタジーでございますよ?でもそこにダークとかハードとか付く方のファンタジーなの!ダークにしてるエルフ代表が言うから間違いなし!
戦争、飢餓、疫病、訳の分からないカルト宗教に人類を脅かす謎生物が蠢いているのがThisワールドなんですよ?半分は私の所業ですがね。
全部お前の性?疫病関係なし!戦争も無し!病は髭のインフラと技術を維持できなくなった人間さんが悪く、戦争は事ここまで来て団結できないのが悪いのよ!大人しくカルトに帰依して、聖都が主導して建設している人間さん向けの都市に移住しないのが悪い!
祈り働け人類よ!上前は全部エルフが撥ねるから!敬虔に脳に罪の意識をジュ~と焼き付け、使命感に燃えて働き森に突撃せよ!我々エルフはそれを心より応援するものです。
封建制なんか駄目よ、何時かアイデンティティを確立しちゃうから。
世俗権力は永遠に聖界に癒着して?医療も建築も文芸もそんなメンドクサイのは考えないの!貴方戦う人!せっまい都市の中で権力闘争しててね?嫌なら祝福はな~し!欲しいでしょ、教会が独占する各種の奇跡?真実は知らないで良いの!知ったら背中に短剣よ♡
ビックリするほど理想世界!皆がお目目キラキラ楽しいな!こんな素晴らしき新世界があるのに剣を置いて来ない方が悪いのです。
自分で言ってて薄ら寒いな、、、兎も角こんなヒデェのが文明の最前線な所で五歳児に何ができると?ましてその文明から遠く離れた北方ですよここ?
「それが当たり前なんですよねぇ」
ロキの話を受け、再度集めた情報を書いた狼皮紙を見てますとため息しかでねぇでやんの。
「唐突すぎるでしょこれ、、、なによ私がコツコツ悪巧みしてるのは馬鹿みたいじゃないですか」
海岸での決戦の後始末を乙女ちゃんに任せた私が根城に戻って早五日、内陸部の情勢が急に変化している事がわかったのです。
「東部部族連合✖西部大族長一騎打ちで死亡跡目争い、沿岸諸部族私たちの工作でがら空き、南部は日和見、下層民が人類領域に逃げず合流しつつあるか、、、」
なんでこうなるの?折角しかけた工作が横取りされてる!
「無法ですよ!覇王なの?救世主なの?」
怒りたくなりますよコレ、盤面をひっくり返されました。暴!それも個人的な暴で猛烈に拡大してるのがいるんです!
今回の沿岸諸部族間引き作戦に要した時間は二年、それまで情勢はこれっぽちも動かなかったのに!沿岸部族連合の対処にたった三月目を離したらコレ!当初予定ぐちゃぐちゃ!
「オーク文字も覚えたんですよ!殴られながら!あの時間を返せ!」
当初予定では、今回撃破した族長含む少数に徹底的にオークを馬鹿にした書面を持たせて解放、人間さんの商人にも金を掴ませて今回の敗北を面白おかしく流布させ、内陸部の戦力も誘因する積りだったのに!
そんなに美味くいくか?いく!オークは舐められるの大嫌い!敵対しているとはいえ、同じ族長がケチョンケチョンにされて「ばーかばーか玉なし!意気地なし!女に負けて悔しくないのぷー」と送られたら殺しに掛かってくる事は間違いなしです!、、、でした。
それがパァ!どうすんのこれ!沿岸抑えられてたし!
「船は焼いたから直ぐにどうこうは出来ないでしょう、西部は混乱しているとは言え、南部に次いで人口の多い土地ですからそう簡単には落ちない、、、と思いたい。ううっこれダメな奴だ、希望的観測で物を語ってる、、反則!反則でーす!これ反則!戦略ゲームに無双系は反則!」
だってそうじゃん!報告では一人で敵陣を切り裂くとか矢の雨を突破してくるとか書いてるんだもん!生物じゃねぇよコレ!確かに往年のエルフ帝国では同じ事出来た者もいます、ですがそれば魔法の防具で
身を固め、数千年鍛錬された勇士だけです。
こいつ、北部部族地帯から突然現れたお化けは、それを腰巻一枚で行うと報告にはあるんですよ皆さん!人型決戦兵器ですよこいつ。そりゃこんなのポップすれば北部は瞬く間に統一出来るわ。
「嵐の子ですか、、、、」
狼皮紙に最後に書き入れた文字が嫌でも目に入ります。こいつ、、いえ間違いなく我が子は生ける嵐と呼ばれているそうです。
クドイようですが五歳児よ?五歳でこれなら、このまま放置したら何に進化するの?ビーム出すの?雷落とすの?火を吐くの?怪獣じゃん、私、怪獣の母なの?、、、、意外とかっこいいな。




