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第五十四話 甘い魔力

 うーん、、、いかん、頭が煮詰まってきた。こう言う時には甘い物でも食べて気分を切り替えましょう。唐突ですがクッキングの時間です。


 私、お菓子作りの腕は中々の物でして、私がお菓子を作っていると、何処からか湧き出したキッズたちが列を作るほどです。森では戸棚にしまってあった焼き菓子とかはよく行方不明になってました。あの子ら虎視眈々と婆ちゃんのオヤツを狙ってるのです。


 何回お仕置きしても来るので近ごろは諦めてます。あの子ら私のオヤツ略奪を度胸試しにしてるんでないかしらん?


 食材の乏しい北に来てからは、腹を満たすのが最優先で森からの物資は量を重視され、肉、肉、肉、偶に黄金団栗の詰め合わせ等しかありませんでしたが近ごろは事情が変わりました。


 理由は人類カルト集団の進出です。彼らの目的は勿論布教ですが、それに追いてきた商魂逞しい人類圏の商人たちはオークの地に訪れています。


 どこに商機があるのか?確かに今まではありませんでした。取引する物が無いから、長い事傭兵業と略奪が北の大地の主要産業だったのです。


 大規模交易をする発想もオークにはありませんでしたしね。細々とはしてましたよ、ですが規模が大きくなると敵対部族から襲撃を食いますからね、パイを大きくして分け合うより奪った方が早いがオーク君の悲しき性。

 

 「ヒャア!明日より今日だぜ!種籾うめぇ!」が彼らなのです。言って置きますが彼らも馬鹿ではないんですよ。頭が切れる者も忍耐力のある者もいるにはいるんです。


 ですが悲しいかな、その人物が暴を兼ね備えているかは別問題でして、コツコツ貯めても暴に優れる者が総取りしてしまうのがオーク社会、しかも個人レベルの暴が強力なので統制が利かない、結果、賢い奴は馬鹿を見てしまう悪循環が社会を覆っておりました。


 そこに人類が入ってきても、それこそオヤツにされていまます。だが今は違う!人間さんたちの航海技術も造船能力も昨今各段に進歩しており、嘗ての人類帝国時代にあった技術を一部取り戻す程まできております。


 そこしか生き残る手段が無いとも言えます。森は拡大し内陸の移動は益々難しく、獣人のエルフが次々に入植地を襲っているので、迫りくる森を少しでも伐採し海洋交通に活路を見出したと言う訳です。


 なんでも聖都の元海軍工廠は大半が民間船の造船に当てられているそうです。彼らは多島海を大型ガレーで、オークの略奪船団の手の届かない外洋をポンタ船で遠回りし、硬く守りの固められた沿岸都市と結んで生き残りを図っています。(精々頑張りなさい、倉庫街が増えれば増える程、そこに巣食う都市エルフも増えるのですから、、ゲヒヒ)


 この様な人間さんは商機を求めておりました。そこに現れたのが我らブスゾネス領です。御多分に漏れず我々の所にも表れた宣教師の一団を我々は皆殺しにしたりはしませんでした(自分で呼んだのですからね)私たちは彼らを歓迎し(そして歓迎の宴で性的に頂き)後からきた商人には魅力的な商品を提示したのです。


 それは毛皮です。なんだそれくらいとか言わないでくださいよ?この世界には化学繊維も紡績機も無いのですから衣類に出来る物は貴重品なんです。

 

 思い出して下さい?租庸調とか聞いた覚えありません? あれ大雑把に言うと税金ですがその中の正調と呼ばれる物は繊維製品の事。大昔は布は立派な税金だったのです。


 地球世界のロシア帝国が北へ北へと拡大したのは主な、財源を毛皮に頼っていたからとさえ言われる程、衣類繊維製品の需要は、嘗て一大産業だった事を思い出しました?皆さん頭脳明晰ですから、これ以上クドクドいいませんよ?我々は生息地を抑え、幾らでもいる氷原狼の毛皮を輸出し、代わりに色々取引しました。


 さて此処からがクッキングのお話。人類圏から受け取るのは麦に、お酒、香辛料、そして甘味!砂糖は南方帝国の物で到底手に入りませんが、多島海にある葡萄園からはサバが、養蜂してますから蜂蜜が手に入ります。


 味も品質も森の産物からしたらゲゲゲの下ですが量はあります。これらは食わなくて生きられないオークと、食わなくてもまず死なないのに貪欲に食を求める豚エルフ、、、、ハーフオークを喜ばしております。




  そん訳で私のお菓子作りにも甘味が大量に使えると言う訳です。私のお菓子は罪ですよ~、皆さんが食べたら一撃でブーです。


 用意する物は良く振った小麦粉、蜂蜜、山羊チーズ、山鳥の卵、稀少な狼の乳(少し臭い)、胡椒、これを混ぜ合わせて、オリーブオイルと蜂蜜で炒めた干し無花果、干し葡萄、松の実をいれて型に入れ焼き上げます。


 最後に、これでもかと上から狼乳と卵、蜂蜜で作ったキャラメルソースを掛けて出来上がりです!良く練った蜂蜜入りカッテージチーズを塗っても美味い!これを私は十人前は作ります。エルフは太らないのだ!羨ましいだろ!


 うーん良い香り、香ばしいキャラメルソースがテラテラして実に美しい。そこ!駄目!これは私のだ!涎を垂らすな!そんな目で見ても駄目!、、、、少しだけですよ、、、あああ!


 飢えたオークが現れた!強欲エルフが現れた!暴食豚エルフA、B、C、D、Eが現れた!逃げる!回り込まれた!止めて!全部食べないで!



 ちきしょう、、、一切れだけになってしまいました。隠れて作っていたのに、何時間にやら取り巻かれるとは、鼻が良いんだからもう!


 仕方ない。一切れでも死守できた事で良しとしましょう。さてお茶をいれて、これは森にある私の薬草園から送って貰ったとって置きの物ですから誰にも渡しませんよ!


 


 「うむ、極上の一品です。粗末な素焼きの椀でも高貴なかほりが漂って、、、、、息子よ、何をもぐもぐしているんですか?なんですか、そのしまったと言う顔は?貴方この一族の長ですよね?もう百は超えた立派な大人ですよね?」


 「いや、母を呼びにきたら、懐かしい匂いがしたので、、、あれだ貴方が昔作ってくれた菓子が目の前にあったのでつい童心に帰ってしまって、、、」


 「正座!」


 「はい」

 

 


 この子らは、、、!いえ逆に考えましょう。それ程、私の作る物、引いては輸入品が此処北の大地では珍しく魅力的だと言う事です。これ何かに利用できそうですね?


 「あの、そろそろ許して欲しいのだが、、、、」


 「駄目!」

 

 

 

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