第四十七話 決意する暗黒エルフ妻
皆さまは、私が何故にここまで急に事を運んだか、疑問に思っている事でしょう。「子細に検分した」と言っても、またもや、何時もの行き当たりバッタリと思っておられる方が大半ではございませんか?
そうではございません!えへん!私は路線を変更いたしました。自分で一人であったなら、森に皆を逃がした後、特攻上等で事に当たっていましたが、今は違います。
私には心強い仲間がおります。雪エルフもその伴侶たるオークも、攫われた我が子を自分の家族の様に思って(エルフは当然血が繋がっておりますが)邪知暴虐な神へと立ち向かってくれると言うのです。
で、あるならば話は別、戦乱渦巻くオークたちへ、淘汰圧を強めに強め、大英雄誕生前に、事を済ませてしまおうと言うわけです。
勿論、途中で大英雄が覚醒する事も織り込み済みです。「なんで?大英雄を登場させないようにがんばってたんでしょ?」ともお思いでしょう?
それにも理由があります。決してけっっっして行き当たりバッタリではございません!ホントです!あっ!信じてない顔ですね?わかりますよ、私に信用がない事は良ーくわかります。
ですが聞いて下さい。見つからないんですよ、我が子とあの糞神が。主だった英雄候補は監視下に置いてましたが、その周りにも居ないですし、父親であるお坊ちゃんの元にも戻ってないのです。
オークの支配階級にエルフの赤子が混じっていれば、目立ちまくる筈なのにです。私の産んだ子は間違いなく、純エルフでしたので、それが居れば嫌でも目立ちます。
オークが受け入れる筈もございません。オークにとって滅んだエルフの存在は、忘れている可能性もありますが、どう見てもオークに見えない赤子が紛れ込む余地はないはずです。
今現在、有力な勢力は統廃合を繰り返し、大族長クラスが二十と三人いますが、その子弟にも、傘下にいる中族長の子弟にも、それらしき影は見えないのです。
可能性として、目に入っていても見えていないのかもしれません。私を詐欺ったように、かの神格は謀りの奇跡に特化していますから、エルフをオークに偽装する事等容易い事なのでしょう。
そう言えば、糞神とか詐欺師としか、あの神格を呼んでませんでしたね?神の名前は、口に出すだけ力を持ちますから、我々に好意的な神様の御名しか呼んでませんでしたが、この際ですから、呼んでしまいましょう。
お気づきの方は、今更でしょうが、かの神、トリックスターにして、厄神、同時に知恵の神でもある神格、御名は「ロキ」です。
しかもあの方は、「勝ったロキ」なのです。私の講師募集に、快く返事して下さってくれやがったあの方は、元居た世界でラグナロクの勝利者となり、新たな世界の創造権を勝ち取った存在。どうやったんでしょうね?(どうせ狡い手でしょうが)
ですので、幾ら未だ奇跡の残り香が、漂う世界であったとしても、他の講師の神々や、それがこの世界の創造神たる「大いなる方」ですら、自分の分霊を下す事など、できない、若しくはメンドクサイのでやらない中、態々チョッカイなど掛けてきたのです。
手続き大変だった筈です。役所をたらい回しにされるより大変だったでしょう。稟議書類いくら書いたのかな?
それは冗談ですが、悪戯仕掛けるのが、存在理由と言うか、存在の根底にある神ですから、苦にしなかったのかもしれません。その迷惑さが広がらない様、次に創造されるアズガルドでは、キッチリ負けて欲しいものです。
その様な、迷惑しかない存在に勝てるか?勝てるのです。物質世界にいる以上、神であれど、その力は制限されます。それは私たちを送り込んだ方のお仕事からも分かります。
混沌界、若しくは天界に於いて全知で全能でも、無限の存在しない物質世界では、著しく能力を削がれるのです。無限の存在自体が、既存宇宙の法則と矛盾してますからね。
ですので、どでかい仕事を物質世界でなさる時は、神は既存の世界の限られた領域を、混沌で満たしてから行われます。無理やり見せられたから知ってます。
詰まり物質世界は、うっすい空気の高山の様な物。以下様なアスリートでも空気が薄ければ、十全には運動できませんよね?神もまた同じ、まあ、恐らく限界ギリギリまでぶん回せばスゲー事できるのでしょうが、そんな事すれば、世界その物が壊れてしまいます。
ロキは所詮この世界では異物にして外様、そんな事しようとすれば、我が主である「大いなる方」に叩き出されてしまうでしょう。若しくは馬力出し過ぎて、物質世界に存在できなくなるか。
そうです。かの神は全知でも全能でもなく、少々、いえ、かなーり強いエルフ程度の存在でしかないのです。未来を見通せる訳でも、無から有を作り出せるチートを持っている訳でもない、有限の存在なのです。
ここで話が戻ってきます。彼は超常の存在ではありますが、無敵ではありません。ですから裏をかく事も
、予定していた計画を潰して回る事もできると言う訳です、
我が子を奪い、大英雄に仕立て上げるのは計画の内でしょう。私が裏でコソコソ悪だくみするのが大好きな事は講師やってて百も承知してるですから。
私が、エルフに犠牲が出る事を、殊更恐れる事も承知のはずです。御恥ずかしながら、これほど悪事を働きながら、身内に犠牲が出る事を、今まで躊躇していました。
何度もいいますが、全て我が血を分けた子供たちなんです。本音としては誰一人、向こうに行って欲しくはありません。今更ですよね?既に犠牲は出ていますし、我が子とも、下手をすれば殺し合う事になると言うのに。
人間さんもオークも、だーいぶ踏みつぶしております。幾多の不幸を作り出し、天に届く屍の山の上で、凱歌を上げようとしているのですから当然です。剣で殺すも、交配による民族浄化も同じこと、種に対する殺戮である事は変わりはありません。
いえ、後悔はしておりません。男子、、、いえ、女子が野望を持った以上、避けては通れない道です。私には夢がある!全てを、我が血脈で埋め尽くすと言う夢が!
私が恐れているから、その裏を突かれるのです。恐れているから、みすみす我が子を奪われた。犠牲ゼロで等、夢でしかないのでしょう。悪だくみは止めませんが、積極策と言う物も必要な時がきたのです。
相手は詐術の神。詐術と権謀では勝てない事は明白。だが我ら野良エルフにはまだ使える物があります!
私、自分の思惑通りに事が運び過ぎて忘れておりました。嘗ての帝国エルフとは違い、我らには我らにしかない強みがあるのです。
野良エルフの力!それは雑草の様な生命力!ゴキブリの様な繁殖力!何より意味不明なほどの原始の奇跡!
ここ樹氷の都では、遥か先人の遺産さえ使えるのです!負けてなる物か!犠牲は出る物!
なーに、不老不死と言っても無敵ではないのです。何時かは私も死ぬでしょう、その時、向こうでバチクソに袋叩きにされれば良いのだ!我は暗黒エルフ妻なり!
以上の様な考えの元、私は積極的にオークに仕掛け、速攻を持って、我が子を大英雄の運命から外すつもりです。全てを踏みつぶし、我が義理の娘である「乙女ちゃん」にオーク初の統一王になって貰おうではありませか!
乙女ちゃんは、現在五十ピー歳。老化も遅く、生涯現役のオークですから並み居る強豪を相手にする時間もありますし、若く、先のあるリーダーに付いて来る奴は大勢いるでしょう。
何よりもその出自!彼女の一族は、代々女は不細工だらけだそうで、その様な弱小な一族が部族を束ねる等、まずもって不可能だそうです。
覚えてますよね?オークの不細工は整っていて、エルフ的な特徴が出てしまう事です。彼ら彼女らは、通常のオークに比べ色素が薄く、線が細く、オークの証である牙が短いの特徴です。
乙女ちゃんは、オーク因子とエルフ因子が喧嘩しなかったらしく、膂力もあり、一族追放などの目には会いませんでしたが、それでも幾多の男女が追い出されて行く所を目にしてきてました。
その様な追放者は、雪エルフの勢力圏以外にも大勢いるのです。それらの糾合も、彼女の出自と容姿は有利に運んでくれるはずです。
余談ですが、彼女、地球世界に居れば、男が鈴なりになる程の美人さんですよ?やや釣り目でありますが精悍とすら言える顔、ベリーショートの髪に引き締まった腹筋、バイーンとしたバスト、一部の男の欲望を絵に描いたようです。
その姿男を(性的に)食らう雌獅子!本人が聞いたら張り倒されるから言いませんが、私の印象と五男の趣味からしてそんな感じ。私が産んだ男子はお兄様に似て、いつも厳めし顔してますが、根は私に似てスケベなもので、欲望には正直なんです。
余談は終わり。ですがこの時点では、有利云々はまだ先のお話。まずは自分たちの立ち位置をオークの世界で主張しなければいけません。できれば勢力圏を奪い取れると話が早いのですが、、、、、
いますよねぇ、都合よく。居なくなっても誰も心配なんかせず、ぶち倒した事が知られれば武名も上がり、だーれも欲しがらない自由に活動できる勢力圏を持ってる連中。
君たち、私にひでー事してくれましたよねぇ?ねぇ死んでくれない?嫌?それなら半殺しで許したげる。ちょーど霧の森には記憶をぶっ飛ばすお薬もあるし、、、
人格改造の時間だ!痩せ狼ども!てめぇら、森への輸出品第二号じゃあ!




