第十二話 エルフのお薬手帳
あら、またいらしたんですか?今日も私の苦労話がご所望で?余り、面白おかしい物ではないですよ。気にしない?では此方にどうぞ。
新たな氏族の揺り籠になる隠れ家を、手に入れた私は、そこで、都市エルフの第一世代となる子を産みました。驚いたことに双子だったんですよ。エルフはまず、双子なんて生まれませんからね長年、出産している私でも、これには驚愕しました。生まれた子供は両方とも純エルフの女の子、都市で子供を産むなんて初めての事でしたから、心配しましたが無事に生まれてくれてまず安心です。
本来でしたら、子育てに専心したいところですが、今はまず、盤石な拠点作りが急務。子供は忠犬村に預け、私はサメの巣亭を根城に、帝都の裏世界支配への、策謀を行う事に致しました。なに、初乳を与えて置けば、完璧な生命たるエルフです、虫の汁を飲ませて置いても育ちます。そこが人間さんと違う所。
思い出しますね。森にいる頃、幼い子供たちが、火皮ザルの群れに混じって行動していた時の事、五歳位でしたか、何時の間にやら、群れのボスに君臨していた子を見つけて、腰を抜かしたのは良い思い出です。今ではサルたちも立派なエルフ村の一員、小さな子供相手には良い遊び相手になっています。まあ、子供がエルフ語より先にサル語を覚えるのが玉に瑕ですが。
それは良い思い出としまして、まずは港湾地区制圧です。ここは荷運び人夫組合、漁師組合、停泊する船の船員等が裏で争い会う容赦なきバトルグラウンド。一筋縄ではいかない与太者ばかりです。私は此処を制圧するにあたり、己の能力を十全に使わせて頂きました。先ずは、全ての勢力に関係する娼婦たちの懐柔です。
「本当に、良いのかい?こんなに?」
「ええ、構いませんよ。どうぞどうぞ。幾らでもございます。その変わり、、、」
「分かったよ。あいつ等とは手を切る。もう、あいつ等の、混ぜ物だらけの薬なんぞ真っ平御免だよ」
今、サメの巣亭でお話をしておりますのは、港湾地区の娼婦の纏め役をされております女性です。娼婦、傭兵と並び世界最古の商売です。それはこの世界でも同じ事。彼女らはその過酷な仕事に耐える為、酒や薬物の手を借りる他は有りません。悲しい事ですがそれが現状なのです。
「本当に、あんたには感謝してるよ。この月光草もそうだし、あの薬も、これで病気で死ぬ子も減る。でもねぇ。もう一度聞くけど、ホントに良いのかい?儲けなんて出ないだろ?」
「ご心配には及びません。私達には絶対に見つからない販路がございます。安価で安心、薄利多売が、私たちのモットーですので」
麻薬中毒にアルコール中毒、性病に不衛生で危険な堕胎行為、帝都の娼婦は地球の娼婦と同じく、いえ、教育と医療の差を考えますと数十倍は危険な稼業です。そこで登場したのがエルフ印のお薬!
何処から仕入れたんだ?とお思いですね?地下避難所 忠犬村人たちは、単に入り江と呼称していましたので、これからは、そう言います に有った薬草園に、私は世界樹の種を植えました。奇跡の種は芽吹き、広大な帝都下水迷宮を魔法の力で満たしつつあるのです。材料でしたらそこから幾らでも手に入ります。
汚物に塗れたコケや、腐った食べ物に生える毒キノコもあら不思議、今や立派な魔法薬の材料です。それを食べるゴキちゃんやネズミくんが、大型化してるのはコラテラル、コラテラル。迷宮に迂闊に入り込んだ密輸商人やら犯罪者が、餌に成るのも尊い犠牲と言う奴ですので気にしない。ジャイアントゴキちゃんの内臓を干して煎じた物は堕胎薬になるの知ってましたか?
私、本職のシャーマンやウィッチドクターである子供達には劣りますが、トーテム神の方々や特別講師のキルケー大先生から、優を貰っているのです。キルケー先生のキュケーオーン作り講座では可でしたが。あの方、人妻相手だと判定がしょっぱいのですよね。
薬の製造には忠犬村の女手も動員しておりますので数も十分。私には金なぞ、必要ございませんので、村人に渡しておりますから、彼らの労働意欲も十全。危険極まりない下水に入り込む官憲も居りませんので、帝都への密輸はし放題。これでケチな麻薬商人どもの販路なぞプチッ!ですよ。
「そう、言うわけです。分かりましたか?」
私の下で、頬に刀傷がある男が最後の精を吐き出しております。おお意気が良い事!邪魔なんですよ、貴方たち、商売に負けたから実力を行使だなんて。娼婦のお姉さんとの会合より直ぐ、店の外に彼女を見送った私は攫われました。
袋をかぶされ担がれたのです。デートのお誘いにしては強引ですね、誘拐婚かな?帝都の所在地は、昭和始めの九州だった?
破落戸君が五名ほどでしたので、蹴散らそうとすれば出来たのですが、面白そうなので付いていきました。それにしても、店の奴ら、店の鼻先で騒いでいるのに一人も助けに来ないとは、後でお仕置きですね。またパパにしちゃる。
連れて来られた先は、倉庫街にある反物商人の大型倉庫でした。ふーん、大店が関わってるのですか、となりますと、麻薬利権はかなりの物かもしれませんねぇ。
待っていた悪党どもは。かなりの人数でした。小娘一人に大勢でまあ。向こうも自分たちの知らない、販路が突然出来て仕事を奪ってきたのです、しかも逆立ちしても叶わない上物を扱う。是が非でも出どころを調べて、自分たちの物にしたい所なので、人数を集めたのでしょうが、いち、にい、、、十八名、大の男がいたいけな少女に合計で二十名以上、恥ずかしくないの君達?
リーダー格と思しき、身なりの良い、頬に刀傷のある人物の前に、引きずり出された私は、直々の尋問を受けました。お嬢ちゃん、痛い目を見たくなければ吐きな(笑)。こう言うシチュエーションと言う奴は、命の危機だから怖いんですよね。何時でも蹴散らせる、私から見れば幼児同然の男の子が凄んで見せても可愛いだけです。僕、カッコいいでちゅねぇ、短剣に棍棒、君が持ってるのはフィッシュフック?玩具は終いなさい危ないから。
可笑しくて黙って居りますと、被っていたベールをはぎ取られました。余談ですが、この世界、基本的に女性は被り物をしてますので、長い耳を隠すのに簡単です。被り物もしないで外を歩くのは娼婦ぐらいでしょう。
白日の下にさらされた私の顔を見た一同は驚愕、エルフだ!とざわつき始めました。驚いていたリーダー格でしたが、私の顔をジロジロと見るなり、鼻の下を伸ばすでは有りませんか!馬鹿ですねぇ、ホントに馬鹿。青ざめた水夫君の方が、なんぼか危機意識があります。エルフは見つけ次第駆除!が人間さんの鉄則でしょうに。
「俺が直々に聞き出す、連れてこい。」
部下連中が、止めといた方が、と言うのを聞かず、ボスさんは私を連れて行こうと、迂闊にも近づいてきました。ここで問題、檻にも入ってない雌獅子を、子猫と思って連れて来た人間さんはどうなるでしょう?
答え、襲われる。言うまでもないですね。エルフを二十人ばかりで捕まえられる訳ないでしょう。嘗てエルフ狩りには、五十人以上の完全武装の兵士が、殺す事前提で動員されたと言います。因みにそれ、女子供の場合です。
世界がスローモーに変わります。人間さんの動きの鈍い事と言ったら。ハイ、ボスさん鳩尾に一発どうぞ。唖然としてるそこの人、私は後ろですよ。ホレ足元お留守。
ハイハイ、そんなに棍棒を振り回さない。ほら隣の人に当たった。短剣はチャンと順手で持ちなさい!逆手持ちなんて百年早い!首元に手刀はいかが?
捕まえ様だなんておよしなさい。背中ががら空き!あら?力比べですか?腕、折れましたね。
こんな物ですか、五分もいりませんでしたね。お兄さまでしたら、二分位で皆切り伏せてますよ、私が相手で幸運でしたね。しかし、久しぶりの狩りで興奮して来ました。ムラムラが止まりません。サメの巣亭まで持ちそうもないですねぇ。ボスさーん!さっきまで私を嬲る積りでしたよねぇ。でしたら玩具にされても仕方がないですよねぇ。
「助け、、助けて、、お願いします、、」
さっきまでの威勢は如何したんですか?殺すつもりだったんでしょ?まあ、だらしない事。皆さまも薄々とは気づいて居られるかもしれませんが、私の房中術は実際に色々吸い取ります。お兄さまも同じ事したのか?いえ、あれは三週間ノンストップエルぴょいでしたから、ああなっただけです。愛するお兄さまにシャムハト大先生直伝の技を掛ける訳ないでしょう。
「駄目です。大いなる混沌に帰りなさい、、、いえ、やっぱ無し、、、そうですねぇ、、むさ苦しい男ばかりでは店も繁盛しませんし、、、ここは体で払ってもらいましょう。あーんして下さい、、オラ開けるんだよ!」
戻りましたよ!宿六共!何ですか貴方たち、可愛い店主のピンチに駆け付けないとは。おやおや、ワインまで開けて、祝杯ですかこれ?副店長、後で私の部屋に来なさい。後の者も日替わりですからね!逃げられると思うな!
「はい!分かりました姐さん!それで後ろの奴らは、一体?」
ああっ気になります?よーく顔をごらんなさい。面影があるでしょ。
「えっ?俺はこんな美人に知り合いは、、、、、、アーーッ!あっ姐さん!こいつ等もしかして、、、、」
どうやら、理解できたみたいですね。そこの人は分からない?良く見なさい。貴方たちが私を売ろうとした相手ですよ。性別は変わっても顔の作りはそうは変わらな筈です。青くなりましたね。理解して頂いて結構。
まったくこいつ等と来たら諦めの悪い。店の連中。私の仕事を見て、ここら辺の顔役に共倒れを狙って売ったと言うでは有りませんか、通りでピンポイントで私が狙われる筈です。人間さんは信義と言う物が分かっていませんねまったく。後でそこの所をタップリ体に刻まないと。
恐怖で支配するのは好きでは有りませんが、人間さんを扱うには、それも必要でしょう。新しい子共たちにはそこの所を重点的に教育しましょう。
私に逆らうと、こう言う目に会いますよ皆さん。女になるのが嫌なら、二度と変な気を起こさない事です。お返事は!
「「「イエス、マム!」」」
宜しい。
そんな訳で、私の港湾地区支配の第一歩は始まったのです。お代わりは?はい承りました。此方のお客様にお代わりをお持ちしして下さい。
はい、有り難う。今の子可愛いでしょう?もう十五年以上働いてくれているんですよ。去年、良い旦那さんに恵まれて結婚しましたが、まだ働いてくれてるんです。
頬の刀傷が気になります?あれがチャームポイントなんですよ。そこに旦那さん惚れたそうです。私の見立てでは、妊娠二月位ですかねぇ、驚かせたいので黙っているんです。
如何しました?そんな顔をして?愛する旦那に、可愛い我が子、女の幸せでは有りませんか?




