5:名前って…?
読んでくれてアリ(´・ω・)(´_ _)ガト♪
「名前が…無いの?」
驚いていた、というより、憐れんでいたと言う方がきっとあっているだろう。
「なら、なんて呼ばれていたの?」
「強いて言えば…ハムスター…でしょうか…」
そもそも、名前なんて呼ばれたことがない。
ご主人様が必要と思った時には、もうそばに居なければならない。
呼ばれたことがない名前について聞かれ、胸の奥に水が一滴落ちて、波紋が広がるように何かを感じた。
もう、よくわからなかった。
喉の奥が鈍く痛み、ズキズキして、何かを欲しているような、求めているような、そんな感じになった。
なぜか頭の中にぐるぐると過去の主人との会話がよみがえってくる。
そこにいる俺は、ただ存在しているだけだ。
――私の、名前。
――私は、誰だ?
――私は、何故―――?
そんな、今まで考えてこなかったような思いが、次から次へと溢れ出るように浮かんだ。
「――大丈夫?」
永遠とも思えた思考が、たった一言の、弱々しいのに、妙にハッキリした声によって、止まった。
「っは…は」
おかしいぐらいに冷や汗をかいていた。
「私は…?」
頭がくらくらして、目の前が暗くなっていく。
この、苦しさはなんだ―――?
足に力が入らなくなり、次の瞬間、左半身に衝撃が走った。
「ん…?」
目が覚めた時、俺は横になっていた。
「あ、起きた…。よかったぁ…」
「私はどうなったのですか?」
まだ少し頭がくらくらしていた。
「突然、ばたんって倒れちゃったんだ。だから、僕の隠れ家に連れてきたんだ」
ルーズはここ僕が作ったんだよと自慢げに話した。
「ここはね、僕が唯一逃げれるところなんだ。嫌なことや、辛かったことがあった時に逃げてくる。僕の両親は厳しいし、僕に期待してるから、苦しくなったらここに来る。ここに来ると気持ちが少し楽になる。誰からも縛られない、僕だけの空間」
「静かなところ…」
小鳥がピィと鳴いた。
「それでね、僕、君が寝てる間に名前考えたんだ。レンとかロンとかかっこいい名前考えたんだけどね、でもやっぱりこれがいいってなってね」
「どんな、名前ですか…?」
「君の名前は、ファズ。僕の名字のファストのファと、名前のルーズのズからとった名前」
自信満々にルーズは言った。
「ほら、名前ってさ、その名前を付けられた人からその名前が持つ性質を奪うっていうんだ。だからね、ルーズって少し悪い意味合いだけど、でも僕からその性質を取ってくれるからさ。僕の名前に込められた意味はね、一番になれなくてもいいから、しっかり物事に誠実に向き合うような子になりますようにって意味なんだよ。それで、同じ意味が込められているのがファズなんだ!」
「ファズ……!」
胸の中のぽっかり空いたところにファズという名前がすっぽりはまり込んだ。
「君は今日から、僕の友達。どんな時でもそばにいる友達」
ルーズはそう言って俺を抱きしめた。とっても暖かくて、太陽みたいだった。
それから、13年後のある日。
一か月前に21歳になったルーズはお小遣い稼ぎに魔物狩りに出かけていた。
レベルは2の比較的簡単なクエストのはずなのに、そこに載っている報酬の金額がおかしかったのだ。
「ルーズ、この報酬金額、おかしいです…。なにか嫌なことが起きそうです…」
「多分大丈夫じゃね?」
「だと、いいですね…」
これが最後の、まともな会話になるとは思いもしなかった。
あの時、もっと引き留めていれば。後悔なんてしなかったのに。
* * *
「うそ、だろ…」
そこには、レベル2のクエストには似合わない、推定レベル47~48程度の魔物がうろついていた。
「おかしいです…!早く、に、逃げ…!」
もう、遅かった。
「グルルウウゥゥゥ」
その魔物はニタァ…と嗤った。
「ボルゲーノファイア!!」
ルーズはレベル23の魔法を放った。
レベルが違い過ぎた。
二時間が過ぎた。
魔物は後一匹残っていた。
「はぁっはぁっはぁ…。魔力がもう残り少ない…。ファズ…お前だけは…」
「駄目です!!はっ!」
魔物の腕が、ルーズに思い切り振り降ろされた。
「お前だけは、お前は、生きろ!」
俺に向けて、光を放った。
「ルーズ――――!!」
全てがゆっくり動いていた。
「…ごめんな」
その声は届かなかった。
視界が暗転した。
テスト終わったぁ!めでたい!
ハムスターの名前はファズでした!
かわええ
感想いいね待ってまーす!
頑張って書くぞー