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35/42

35:ごめんな、シノ。

…………そういう回です。

読んでくれて…あ…り…がと…う…。

「んぁ……?」


ぼやけた視界に青白く光る何かが映る。


「あー。起きちゃったかぁ」


はっきり聞こえた、耳に残るような不愉快な声。


「もうちょっとで出来るから、そこでおとなしくしててね?」


タイメントがすぐそこにいる。

視界は徐々に鮮明になっていき、それと同時に手足が全く動かないことを悟った。

大の字で拘束されている状態。周りにはきらきらとした粉が舞っている。

これは――。


「魔法陣…!」


何かの作業をしながら、そのつぶやきを聞いたタイメントはうれしそうな、けれどめんどくさそうなそんな声で言った。


「それを知ってどうするの? どうせここには戻ってこられないんだから…」


「ッ!」


少しでもあがいてやろうと、俺は動けない体をよそに、水の刃を無詠唱生成、そこから空気球を生成し、破裂させる。その勢いで、水の刃がものすごいスピードで、数メートル離れたタイメント目掛け、飛んでいった。

時間稼ぎのため、あわよくば当たってこの作業を手こずらせるためだ。


「おとなしくしててって言ってるのに…」


そう、タイメントはつぶやいた。呆れ半分、うれし半分に。

なぜうれしそうにしていたのか、俺はわからなかった。けれど数秒後思い知ることになる。

水の刃はきれいな放物線を描き、タイメントに吸い込まれていって当たる数センチ前で、……消えた。

その瞬間、自分の横腹に激痛が走る。


「ガッ……!?」


「あーほら、当たっちゃったじゃん。自分の鎖を切るために使えばよかったのに」


そこには、先ほど投げたはずの、タイメントに当たるはずだった刃が刺さっていた。


「なん……でっ…!?」


「説明しても無駄なだけなんだけどさ、私も物好きだから教えてあげるよ。私の周りに結界張っていたの。転移のね」


タイメントは近づいて、俺の周りに魔法陣を描き、並べていった。


「で、なんか私に攻撃が当たろうとすると、結界の魔法が発動して、放たれた魔法が相手の近くに出現!って感じ」


「グッ…」


痛みというか熱がすさまじくて、体に力が入らなくなっていて、指先も冷たくなり始めていた。

小さな体に人間用の大きさの刃物が半分ほど突き刺さっている。

普通だっから即死レベルだが、自動治癒の効果が働いて何とか生きていた。

刺さったところからは血ではなく、きらきらした光だけがあふれているのは、妖精族の特徴ともいえる精魂が影響している。だが、説明をしているほど暇ではない。

もうタイメントの話も頭に入ってこなくなっていたからだ。


「つまり、私に攻撃は当たらないよ?ってこと」


タイメントはそれだけ言うと、パンッ!と一つ手を叩いた。


「じゃあ、準備ができたから始めるね」


単純な痛みと恐怖だけが襲ってきて、もう何もすることができなくなっていた。

タイメントが詠唱を開始する。

周りのろうそくが不気味に揺らめく。

魔法陣が光を増す。


―――やっぱり俺は…。


大切な人も守れず、無様に這いつくばって。

一応声をあげてみるも、返り討ちにあい。


―――僕は…無力だ。


……シノ。俺は何で好きになったのだろう。

適合者だったからか?

いろいろと秀でたところがあったからか?


―――違う。俺はあの笑顔に懐かしさを覚えているんだ。


記憶の奥に、ずっとずっと奥底に鍵が掛かって開けられない何かがあるんだ。

とても懐かしくて、悲しくて。


―――なんだ、これは?


そういえば…俺をこの世界に出したのは誰なんだ?

シノの、ルーズの、もっともっと昔の第一適合者。

シノは第八適合者。ルーズは第七適合者。

記憶の糸をたどれ、見つけろ、始まりを。


―――あ……れ………? 記憶の糸がここで途切れている……?


第四適合者の出会いが思い出せない。途中の、それも中途半端なとこまでの記憶しかない。

俺が思い出せる最初の記憶は、赤々と燃える炎、そして第四適合者の姿だけ。


『わしの命令に従え、ハムスター! わしが主だ!』


第四適合者の声が脳内で反響する。


『わかりました。第四適合者、――――様』


『わしは第四適合者ではない! 始まりの主だ! あんな小娘より下にするでない!』


『第四適合者、と、そう本に記載されているので、』


『わしの命令に従えと言っておるだろう!』


『しかし…』


『従え!』


ここからはもう次の日の記憶になっている。

第四適合者なのに始まりの主とはどういうことなのだろう?

わからない。わからないことだらけだ。

そこまで考えたところで、パンッと一つ手が叩かれた。


「聞いてるの、ハムスター? 言い残すことはないの?」


どうやら詠唱を完了したらしいタイメントが、こちらをのぞき込んでいた。

意識がこっちに戻ってきたのはいいが、こっちに意識が行くとすさまじい痛みが襲ってきて話どころではないのだが。


「あ…」


「私がちゃんと白髪に伝えておいてあげるから、何か言っておきなよぉ」


憎たらしい笑顔で、そうつぶやいた。

シノそれだけを思い、俺は回らない頭で必死に考える。


「……ファズは生きてる。これだけ…ッ……だ」


「本当に生きてるといいけどねぇ…きゃはは!」


こう言ったことで、決心がついた。これからどんなことが起ころうと、生きていると宣言した自体、守らなければならない、と。


「ほんじゃまぁ、さよなら~」


そういうとタイメントは俺から離れ、一言「ディストーション・オブ・タイム」とつぶやいた。

その瞬間、ものすごい圧力が襲い掛かり、俺を気絶させようとする。

数秒ほど抵抗し、やがて徐々に意識が薄れ、


「………ごめんな、シノ」


その言葉は、粒となって散っていった。

うん、確実に怒られるなこれ。

そういう予定だったんだもん!仕方ないzy(((((((((((((((((殴


頑張って次の話書きます…。ファズさんこれからどうなってしまうのか…。

でもまだシノたち怪物倒せてない…。


がんばれ!みんな!(無責任パート2)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 受付の人だよー!分かるかな!! いつも小説読ませてくれてありがとう! これからもずっと楽しみに読むね! 勉強も頑張ってね!応援してるよ〜! またどこかで会えたらいいね^ ^ ここに書いちゃ…
[一言] 感動しました! ファズの思いに! ーーーの後の表現もう2、3回書かれてたら泣いてたかも! 涙もろいのもありますが。 場面展開も良かったと思います。 1話で1つの話しぐらいの方が読みやすく…
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