33:戦闘開始
がんばれシノたち!私は陰で見守っているよ!(無責任)
読んでくれて(´▽`)アリガト!
「解けて!!」
「アクアフレイム!!」
ウンディーネからは解除の魔法を、落下中のアリシアからは水と火の融合魔法を、二人は同時に叫びました。
うぉんうぉん、と、唸りを上げる赤黒い獣の周りに無数の水の柱が立ち上がり、それを包むようにアリシアの炎と水の刃が襲い掛かります。
ごおおぉぉぉん、と、重い振動があたりを揺らしました。
「シノ様! 今助けます!」
少し手荒になりますが!と後に付け加え、ウンディーネは服屋から飛び出し、シノを水で包みつつ、服屋の中へ放り投げました。
落下中のアリシアは水魔法の衝撃緩和を詠唱、発動します。
屋根から水の球体が現れ、ウンディーネの魔法がなければ無傷では済まなかったアリシアの落下の衝撃を吸収しました。
「アリシア・ロスタート! 私の魔法では暴走を解除することができないようです!」
水と炎がぶつかってできた水蒸気の中から現れた、傷一つない獣を見てウンディネが叫びました。
「わかった! 弱らせるからタイミングを見計らって魔法を!」
「わかりました! 援護魔法を強化します! アリシア・ロスタート!」
「言いにくいだろうからアリシアでいいよ!」
「はい! 魔法陣展開! 我が呼びかけに答えよ、水の女神! アクアカバー!」
アリシアの足元に魔法陣が展開、青く光ってアリシアを包み込みます。水魔法強化、衝撃緩和、スピード上昇のバフが付きました。
アリシアは屋根を蹴り、獣に向かって一直線。
「アクアショット!」
右手を突き出し、水弾を発射しようとしました――が。
「ワールド・エンド・フリーズゥ…」
獣が重い口を開き、聞き取りづらい音を出します。
瞬間、視界が真っ青に染まり―――獣の手から見えた、帯のような一瞬の金のきらめきを見て、
「!? ユ……ーリ……!?」
今度は視界が真っ赤に染まって、徐々に光をなくしていきました。
***
「んがゅッ」
シノはぐるぐる転がって、どすっと何かに思い切りぶつかりました。痛くもないのに変な声が出てしまいます。
「ん…? 緑?」
目を開けると一面緑で…ってああそうか、私の草か、と思い返し、
「あの男の子…痛い…」
まだ頭がずきずきするシノ。
なんでだろう、今までこんなことなかったのに、そういえば、なんでマリョクさんと話せたんだろう?と、疑問が浮かんできました。
「…た……し………ピコン! 同調完了、同調完了」
「ん?」
少しボーっとしていると、機械的な音が聞こえました。かと思えば、目の前には青いマリョクさんが一つ浮かんでいます。
「こんにちは、シノ」
「??? こん…にちは?」
そして普通にしゃべっります。はっきり、ばっちり、しっかり耳に届きます。
ほわほわ光ってしゃべる様は、今までのマリョクたちとは、少し雰囲気が違いました。さっきまで届いていた声は、ぼそぼそといった聞き取りづらいものだったのですが…。
「私は群青の魔力。同調が完了したので、テスト運転だ」
「どーちょー?かんりょー?てすとーうんてんー? …なにそれ?」
聞きなれない単語がシノの耳に入ります。
どれも聞いたことがありません。
「こっちの言葉だ。気にしなくて大丈夫だ」
なんだか話し方がバスッとしています。偉い人感が…少し…というかだいぶ、にじみ出ている気がします。
「ところでシノ。ここの状況を伝えてはくれまいか」
「…?」
なんか言葉が難しいです。シノはちょっとめんどくさくなり始めました。
「むん…今、どんな感じだ?」
お、優しくなりましたよ。これならシノもバリバリわかります。
「えっとね、ぐおおおってなって、どーんってなって、ゴンッって感じだよ」
「擬音語は状況が伝わらない。もっと詳しく、言葉にしてしゃべってくれ」
「コレガワタシノモテルサイダイゲンノチカラデス」
なんかこのマリョクシノに対して辛辣です!ひどい!シノが泣いてしまうではありませんか!!!
「むーん…しかたないから、自分で見てくることにする」
そう言って、シノを置いて行って外へ出てしまいました。
「あいつ…! 草まみれにしてやる!」
無下にされたことに初めて怒ったシノだったのでした。
マリョク登場。なんかひでーな…シノちゃん!くじけるな!
アリシアは時間を止められてしまいましたよ!!どうするのでしょうか!!私も知りません!暴走列車の中、一人膝を抱えて座るのみです!
次回もお楽しみに―




