3:本当は本が食べたかった。
読んでくれてあり…あ、残酷描写ってどこまでが駄目でどこまでがいいんだろ?
もしかして、戦闘シーン一度も描けない系?え、どうしよ、血が出ない戦い方考えなきゃ…。
「うん、無理だよ?」
ハムスターが20秒ほど硬直して、やっと口を開きました。
「じゃあ、この本いらない」
シノはがっかりして、本を、そしてハムスターをいらないと言いました。
さて、これに困るのはハムスターです。
3200年ぶりに、やっと外に出てこられたのにまた閉じ込められてはせっかく出てきた意味がなくなってしまいます。
困ったハムスターは、
「いや、ちょっと待て。食べれるぞ!」
噓をつきました。さっき食べられないって言ったばかりなのにです。
「本当?」
「いや、実際には本は食べられないが、食べ物を出すことならできる!」
本は食べれないそうです。
だけど、ご飯は食べれるらしいです。やったねシノ!
「よし、じゃあまず、本を開いてくれ。じゃないと始まらない」
ハムスターが出てきて、数十秒で閉まってしまったからです。(音がしないほどゆっくり閉まったのでシノはわかりませんでした)
「わかった!」
ご飯は美味しいですからね。シノはノリノリです。
シノは本の端っこを持ってぐいっと引っ張って、本の真ん中らへんを開きました。
「よし、開いたな。じゃあ、本の上に手をかざして、スティック!って唱えるんだ。その時、本から杖が出てくるイメージをするんだ」
「かざすってなに?」
なぜこんな子が、この本の適合者なのか…とハムスターは思いました。
「えーっとな…」
ハムスターはふわふわと危なっかしい飛行でシノの手の裏に乗りました。
なにせ3200年も飛んでなかったのですから、飛べるだけでも奇跡です。頑張れハムスター!
「このまま本の上に持って行ってくれ」
「うん」
シノは本の上に手をかざしました。
「ほら、そのままスティックって言ってごらん。イメージも忘れるなよ」
「うん。…スティック!」
さて、この時シノがイメージしたのは、本から杖が出てくるといったものではなく、本そのものが杖になるといった、何とも奇妙なイメージでした。
ハムスターはこの本の持ち主であるシノの考えが少しだけ伝わるようになってきていたので、多分この杖作りは失敗するだろうなと思いました。なぜなら、本自体が杖になったことなど一度もなく、また本来のイメージとずれると魔法は発動しない、というこの世界の決まりがあるからです。
けれども、本はぼうっと光りだして、小さくなって、細長くなって…。
「できた!」
杖になりました。
「え、なんで…?」
ハムスターは少しびっくりして、シノを見て、杖を見ました。
杖は一流の魔法使いが使うようなとても立派なものでした。ですが、かざすという意味も分からない小さな少女にこんな立派な杖は作れないはずなのです。
ハムスターはなんとなく本がこの少女を選んだ理由が分かった気がしました。
「で、どうするの?」
シノはごはん、ごはんと思いながらハムスターを見ました。
「えっと、じゃあ杖を持って」
「うん」
切り株に置かれていた杖を持ったシノは、
「綺麗だね」
と、一言そう言いました。
杖は持ちやすい形になっているにもかかわらず、美しい装飾がたくさん施されていました。まるで、本が杖になりたがっていたようでした。
「ねえ」
シノが杖を持ったままハムスターに尋ねます。
「ちっちゃい、もふもふのくまさんは、名前ないんだっけ?」
「…!」
「名前ないの?」
「………あぁ」
うなずいたハムスターは、悲しさを無理やり押し殺したような笑顔で、シノを見ました。
ほしほし いいねいいね こめんとこめんと くれる?
次回はハムスターの過去のお話だよ!
読んでくれて(人´∀`)アリガトー♪