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「おい、無視するな!さっさと罪を認めろ!早く認めれば刑を軽くしてやってもいいぞ?」
認めると言われましても、知らない罪をどう認めろと?
呆れた、面倒です。この場は周りに助けを求め、ついでに学園を早退しましょう。いささか腹が立つ行為ですので、お父様方にお伝えしなくてはね。
「まぁ、ひどい!いつ私がそのようなことを?皆様、何かご存じで?」
「いいえエリザベス様、私達はいつも、い・つ・も・エリザベス様と共におりましたが、そのようなこと無かった、と言いますか、そちらの令嬢と出会ったことなど無かったです」
「そうですわ!」
「・・・と、申しておりますが?」
「・・・ぐっ」
あからさまに狼狽してますわね、彼。まさかろくに考えも無しにこの私にいちゃもんをつけに来たのですか?
「サントラ様!あの女の嘘を真に受けてはいけません!取り巻きもどうせ金で買われた連中に決まってます!」
と思いきや、更なる阿呆の連撃が飛んできました。その阿呆さたるや、私達が揃って絶句するほど。ですが、数々の女性を敵に回したサントラ殿。果たして威勢を保てますか?
「わ、私から言うことはもうない!だが起訴の件、確かに申したぞ!」
「え、は?ちょっと、サントラ様ぁ!?」
保てる訳ありませんよね。貴方は前々からそう。大口を叩くくせに、正論返されたり相手に味方する人が多かったりすると必ず捨て台詞を吐いて去っていく。
「皆様、援護ありがとうございました。しかし・・・申し訳ありません、少々気分が優れませんので、本日はこれで」
「エリザベス様、お気になさらず。ですわ!私達は何があってもエリザベス様のお味方ですから!」
「ありがとう、皆様。では、私は失礼致しますわね」
さて、まずは帰ってお父様にご報告ですわね。
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〜クレイス侯爵家邸宅〜
「・・・ということがありました。つきましては、侯爵殿下にはお父様、陛下へのご報告をお願いします」
「う〜む、よもやエリザベス様にそのような無礼を・・・。かの公爵令息とやら、以前から素行が悪いとは聞いておったが、まさかこの国のしきたりを知らぬ訳ではないでしょうに」
私はクレイス侯爵閣下に事の次第を説明し、お父様方・・・王家への伝達をお願いしました。はい?私はクレイス家の令嬢ではないのかって?あら、私クレイス侯爵令嬢とは申しましたが、父母がクレイス家の人間とは一言も言ってませんわよね?では誰か?それはきっと近いうちに分かりますわ。
「エリザベス様、あのような阿呆、早めに潰せるよう陛下にお伝え致しますので、どうかお気になさらず」
「言われなくとも、そのつもりですわ。第一昔の王家の血筋だからというだけで公爵の位に就いている無能より、クレイス殿下などの実力で成り上がった侯爵以下の貴族方の方が優れていることなど、百も承知。無能の言葉に耳を傾ける愚行は犯しませんから」
「しかし、学園では気分が優れないと」
「演技です。クレイス閣下。ああすれば影もきっとお父様に確かに報告するはずですから」
「エリザベス、大丈夫かい!?」
「エリー、大丈夫ですの!?」