プロローグ
私ことエリザベス・クレイスはスライア王国の貴族学園に通うクレイス侯爵令嬢。諸事情により学園では常に仮面をつけています。と、そんなことはどうでもいいです。今目の前で起きている大茶番劇を処理しなくては。
「エリザベス・クレイス侯爵令嬢、貴様を傷害及び器物破損、並びに名誉毀損で起訴する!」
・・・誰です?こんな人の身に覚えのない冤罪をいけしゃあしゃあと叫んでは人を断罪しようとする馬鹿は?
――もちろん知っています。彼(と呼ぶのはいささか不満ですが)はグリーンス公爵令息のサントラ殿。まあ言ってしまえば公爵という虎の威を借る狐です。そして・・・
「貴様は私の愛するユリアンに対しこれらの罪禍を働いた!よって私サントラの名に於いて貴様を起訴する!」
「サントラ様ぁ、今エリザベス様が睨みましたぁ。私怖いですぅ」
「大丈夫だユリアン、君は私が守るからね」
そのサントラ殿にべたべたくっついて猫撫で声を上げる女はリアルド子爵令嬢ユリアンさん。2人揃ってこんな場でそんなことをするなんて、自分たちがどう思われるなんて考えないのかしら。
「恐れながら卿、私何のことやらさっぱりなのですが?」
「とぼけても無駄だぞ!全てユリアンが泣く泣く証言してくれた!言い逃れはできぬ!聞けば、貴様は自分が醜いから仮面をつけているというではないか!大方、ユリアンの美貌に嫉妬しての犯行だろう!私は誤魔化せんぞ!」
「はぁ?・・・ハァ、面倒くさい」
あら、つい本音が。というかサントラ殿、貴方婚約者がいたのでは?その婚約者様を差し置いてユリアンさんに浮気ですか?
するとその時、私の方へつかつかと歩み寄る方が1人。
私の婚約者、ワンド侯爵令息アルフレッド殿。婚約者と言っても完全な政略で好きなど思ったことは無いですが。
「アルフレッド殿?どうされました?」
「エリザベス嬢、君がそんな人だとは思わなかった。君が僕を好いているからこその婚約だったはずだが、僕はそんな人と結婚できない。この婚約は破棄させてもらおう」
馬鹿が増えましたわ。私が貴方を好き?といいますか、それはまだ勘違いで済むとして、この場で貴方から婚約破棄を言い渡されても、効力はありませんよ?例外として相手がそれに承諾した場合は成立しますが。彼が婚約破棄を言い渡した時、ユリアンさんがほくそ笑んだ気がしましたが、気のせいでしょう。では、その例外を実践して差し上げましょうか。
「分かりましたわ。婚約の破棄、確かに承認致しました。皆様?ただ今の話、しかとお聞きになりまして?」
「もちろんですわエリザベス様!このような女の敵、結婚相手に欲しがる者などいませんわ!」
私が問いかけると、教室の至る所から肯定の返事が返ってくる。この世界において最も大切なのは味方の数だと分かる瞬間ですわね。