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魔法少女は無能に縋る  作者: ねこともさん
始ノ話 にゅーよーくエイリアン
1/29

001

"もしよかったら――私のこと、助けてくれませんか?"


超能社会に〈無能〉として生まれた新垣蓼疾の前に、自ら〈宇宙人〉を名乗る少女・ニューヨークが現れた。

殺し屋に追われているらしい彼女の"助けて"という言葉を、お人好しの無能が無視するはずもなく……。


 ニューヨークとは運命的な出会いをした。それは僕の人生史において最も印象に残る出来事であり、僕の人生史において大きな影響を及ぼした出会いであろうことは明らかである。高校一年生の夏、高校生活初めての夏休み、その初日、忘れもしないあの日、僕は彼女と出会った。



 出会ってしまった。



 正しく運命的な出会いだった。この先僕の人生でどんな事件が起きようとも、この日を超える衝撃は二度と訪れないとすら言える――そう思うと少し寂しくも感じてしまうほどには、彼女、ニューヨークと僕との出会いは衝撃的だった。将来僕が寿命や老衰で死ぬとして、その死に際に走馬灯なんてあるのかないのかもからない幻を見るとするのならば、真っ先に彼女との出会いを想起してしまうだろう――高校生にもなってそんな宿題などあるはずもないのだが、仮に僕達に夏休みの絵日記なんて物の提出があったならば、まず間違いなくあの日の出来事をピックアップしていたに違いない。なんなら読書感想文の如く、原稿用紙数十枚を駆使して(したた)めてしまうかもしれないし、それどころか県開催の作文コンクールに大々的に送ってしまうかもしれない。それほどまでに彼女との出会いは、僕と言う人間の一生の中で歴史的大事件と呼ぶにふさわしい、思わず誰かに語りたくてたまらない、僕の平凡的で平均的な人生を根底から覆した運命的且つ衝撃的な出会いだったと言っても過言ではないだろう。


 まあ、本当に彼女との出会いの一端を他の第三者に開示するとなれば、若干、いやかなり脚色する必要はあるけれど、なんならかなり厳しめに検閲してもらう必要すらあるだろうけれど――なんせ、出会いの形が出会いの形なのだから。



 全裸。



 裸。



 お互い、一糸纏わぬ産まれた姿のままでのご対面。



 生まれて初めて、異性とフルヌードで初めましてをした瞬間だった。



 当然ながら、この状況下で出会ったというそれこそが、彼女との出会いの運命的で衝撃な度合を推進しているというのも事実ではあるけれど――事実ではあるけれど、何もそれだけが全てを占めているわけではないということだけは、この文章を読んでいるすべての方々に理解していただきたいものである。いくら僕が男子高校生だなんて思春期の真っ最中な、性欲の塊で出来ているみたいな生き物であったとしても、女性と全裸で対面しただけで真っ先にそれを死に際に思い起こしたりはしないし、ご丁寧に色まで付けて絵日記で提出なんて絶対にしない。ましてや、作文コンクールに応募するなんてもっての外だろう。


 もっての外だ。


 そう、県大会だなんてもっての外だ――彼女のことをどこかに応募するというのならば、それは作文コンクールなんてものではなく、もっと然るべき、宇宙開発機関や科学研究機関といった発展分野を取り扱う施設にするべきだ。


 何故なら彼女。



 ニューヨークは――宇宙人だから。



 宇宙人で――魔法使い。



 宇宙からやって来た魔法使いだと、そう、彼女は名乗ったのだった。



 自立ロボットが街を警備して回り、天気予報の外れる確率は1%までに減り、有人レジよりセルフレジの方が数を増やしたこの化学発展時代に於いて、口から火を吐き、身体から電気を放出し、一吹きで風を巻き起こし、触れた者の思考を読み、瞬間移動だってできてしまう――そんな超能力が当たり前に蔓延っているこの現代で、超能が使えて当然のこの時代で、敢えて魔法使いを名乗る彼女の行動は、はっきり言って正気の沙汰じゃない。浮世離れにもほどがあるし、それに加えて「私は宇宙人です」だなんて、精神がおかしくなって妄言を連ねているんだと、一蹴されて隔離病棟に放り込まれてもおかしくはないだろう。


 けれど、僕はそうはしなかった。


 そんなことは考えもしていない。


 別にいてもいいだろう。


 本当に宇宙人かどうかはさておき、本当に魔法使いかどうかはともかく、どれほど科学が発展していようが、どれだけ超能が蔓延していようが、魔法使いも宇宙人も、別にいたって不思議ではないだろう。



 宇宙は広いのだ。



 僕なんて器の小さい人間には遥か想像もつかないくらい、宇宙は広くて未解明なのだ――だったらその広大な宇宙の中に、地球人以外の生命体がいたって、超能とは別物の能力があったって、なんらおかしいことではない。



 だって。



 ゾンビがいるのだから。



 こんな狭い地球にでさえゾンビがいるのだから――宇宙人がいたって、魔法使いがいたって、そんなことは、何もおかしな話ではないだろう。


最後までお読みいただき、心から感謝いたします。

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