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ミニマインドブレスレット ~ラブレター騒動~

作者: panpan

初めまして、panpanです。 

いつも本編を読んでくださっている方はいつもありがとうございます。


今回のお話は、ミュウスアイランド編とレッドフェスティバル編の間にあったことを書いてみました。


※わからない方はぜひ、本編もご覧ください。



夏の日差しが辺りを熱く照らしていたある日。


この日、【時橋 夜光(ときはし やこう)】は休日のため、自室に引きこもっていた。


「あ・・・暑い・・・」

まるでうめき声のような声でそう呟く夜光。

体からは大量の汗が吹き出し、うちわを仰ぐ右手も徐々に力を失い始めていた。



自室には冷房どころか扇風機もないため、夏の暑さに対抗できる手段がない。

そのため、夜光はベッドから起き上がることもできず、ただただその暑さに参っていた。


「せっせめてシャワーでも・・・」

夜光は最後の手段として、自室の風呂場に設置しているシャワーの冷水を浴びることにした。


「このままじゃ、干からびてミイラになってしまう」

着ていた服を無造作に脱ぎ捨て、風呂場に入る夜光。

「そういえば、そろそろ水道代の請求が来る頃だな。 昨日も飲み歩いてしまったから、ほとんど金がないんだよな・・・」

シャワーの蛇口を回し、吹き出す冷水で、体中の汗を流す夜光。

「は~・・・生き返るぜ」

水を浴びた魚のように、元気を取り戻す夜光。


そこへ、自室のドアをノックする音が聞こえてきた。


「誰だよ。 こんな朝っぱらから」

面倒そうに風呂場から出る夜光ではあったが、ここで問題が発生した。

「・・・あれ? 服ってどこに置いたっけ?」

普段から物の整理をろくにしていないため、床に酒瓶や服が散乱し、自室はとても散らかっていた。

手当たり次第に探すが、見つけた服やズボンは全て洗濯前のもの。

幸いにも、パンツは洗濯済みの物をどうにか見つけることができた。

「クソッ! 服が見つからねぇ・・・」

服の捜索をしている間も鳴り響くノック。


「あぁぁぁもうぉぉぉ!! うるせぇな!!」

ノックの音にイラ立ちを覚えてしまった夜光は、なんとパンツ1枚でドアを開けてしまった。


「誰だ!? こんな朝っぱらから!!」

ドアを開けた先にいたのは、黒髪ロングの生真面目な少女【スノーラ ウィーター】と茶髪のショートヘアをしている活発な少女【ルド ロイズ】であった。

2人共、下着姿で現れた夜光を見て、言葉を失った。


「お前らか。 一体なんの・・・」

「いやぁぁぁ!!」

顔を赤く染め、思わず悲鳴を上げるスノーラ。

反射的に、愛用している拳銃を抜き、夜光に向けて発砲した。


「のわぁ!!」

間一髪弾丸を避けることができた夜光。

発射された弾丸は、夜光の自室の壁に命中した。


「テメェ!! 俺を殺す気か!?」

腰が抜けたままスノーラを怒鳴りつける夜光。

目のやり場に困るスノーラは、手で目を覆い隠しながらこう返す。

「あっあなたが、そんな恰好で出てくるからでしょう!?」

「だからって、いきなり銃をぶっ放すか!?普通」

「ととっとにかく服を着てください!!」

「わわかったから、銃を向けるな!!」


その後、スノーラとルドの協力によって、どうにか着る物を見つけることができた夜光であった。


「全く。 普段から整理整頓を心がけていないからこういうことになるんです」

未だに顔の赤みが消えないスノーラが、夜光の私生活についての言い分を述べた。

「ほっとけ・・・それより、お前らは何をしに来たんだ? まさか俺のヌードを見に来た訳でもないだろう?」

「そんな訳がないでしょう?」

夜光の冗談交じりの質問に対して、冷ややかに返すスノーラ。


「実はさ、兄貴に頼みがあってきたんだ」

ルドが普段と違ってかなり真面目そうに語り始めた。

「頼み?」

「昨日の夕方だったかな? オレの家にこんな手紙が届いたんだ」

そう言ってルドが懐から出したのは、『ルド ロイズ様へ』と書かれた1枚の青い封筒。

夜光が封筒を受け取ると、その中には、1枚の手紙が入っていた。

「これ読んで良いのか?」

念のために、2人に了承を得る夜光。

勝手に読めば、また拳銃を向けられそうだという恐怖から、勝手に読むことは避けた。

「「・・・」」

2人は無言でうなずく。


「えっと・・・『ルド ロイズ様。 一目見た時からあなたのことが好きでした。 どうか僕とお付き合いしてください。 明日の1時に、あなたがよく通っている図書館の裏庭で待っています。 アロハ』

・・・ってこれ、ラブレターじゃねぇのか?」

夜光が今読み上げたのは、まるでテンプレートのようなラブレターであった。


「精神医療について勉強するために、よく図書館に通っているんだ。

 半月くらい前に、偶然アロハっていう男子学生と相席になったんだ。

最初はあいさつをする程度だったんだけど、会うたびによく話しかけてくるようになってきて・・・

不思議だなと思った矢先に、これが届いたんだ」


「なるほど・・・で? お前はこいつと付き合うのか?」

夜光の直球な質問に、ルドが手を振って否定する。

「んな訳ねぇだろ? だいたい兄貴は知ってるだろ? オレが性同一性障害だって」

そう、ルドは体は女で心は男である性同一性障害である。

このことは夜光やスノーラを含め、周りの人間も理解している。


「じゃあ断れば?」

客観的な意見をどうでもよさそうに述べる夜光。

「簡単に言うなよ・・・」

「何を悩んでるんだよ。 俺は性同一性障害だから付き合えねぇって言えばいいだけだろ?」

「それができたらここに来てないよ」

「どういうことだよ?」

夜光がそう問うと、落ち着きを取り戻したスノーラがこう返す。

「夜光さんもご存じの通り、この国では障害に関しての認知が薄いのです。

性同一性障害のことをそのまま伝えても、大抵の人間は理解できないと思います」

夜光達のいる世界では、障害への認知が薄いため、障害者のことを煙たがったり、障害のことを理解しようとしない人間多い。

「だからさ、スノーラと相談して、兄貴に協力してもらうことにしたんだ]

「協力ってなんだよ?」

「夜光さんにルドの恋人の振りをしてほしいのです」

「・・・は?」

スノーラの頼み事に夜光は思わずポカンと口を開ける。


「つまり、オレが兄貴と付き合っていることにして、アロハに諦めてもらおうってこと。

オレに恋人がいたら、向こうも諦めるだろ?」

「いや、なんで俺なんだよ?」

「私達が知る限り、一番暇で迷惑を掛けても問題ない方だからです」

「ほかを当たれ」

スノーラの失礼な発言に怒り、夜光は恋人役を断ろうとした。

「そういうなよ。 今度メシでもおごるからさ」

ルドの交換条件に納得できない夜光は、こんなことを言い出す。

「それより、今月分の水道代を貸してくれるなら、引き受けてやる」


「なぜ我々があなたの部屋の水道代を貸さないといけないのですか!?」

夜光の無茶な取引に、スノーラは当然、はいと言える訳はなかった。

「冷房も扇風機もないこの部屋では、冷水が唯一の命綱なんだぞ!?」

「だったら水道代を払えば良いだけでしょう!?」

「その金がないんだよ!!」

「それは兄貴が酒と女とギャンブルに金をつぎ込むからだろ!?」

「そうだよ!! 悪いか!?」

「「開き直るなっ!!」」

こうして、今月分の水道代の代わりに、ルドの恋人役を引き受けた夜光であった。



そして、約束の1時まであと5分となり、3人は指定された図書館の裏庭に訪れた。

日差しが強く蒸し暑いが、図書館が日差しを遮っているおかげでどうにかその場に留まれる。

だが、汗は大量に流れているので、あまり楽観はできない。


「・・・なあ、兄貴」

「なんだ?」

「その恰好は・・・なんだ?」

ルドとスノーラが冷たい視線を向けていたのは、アロハシャツと短パンの夜光。

それだけなら別段おかしくはないが、問題は夜光が身に着けているアクセサリー。

ドクロのネックレスを首から下げ、両腕に金の腕時計と腕輪をはめ、腰には意味不明なチェーンをぶら下げている。

おまけにサングラスに葉巻を咥えている。

その見た目は、完全にマフィアのボスであった。

「振りとはいえ、女を紹介する以上、それなりの恰好が必要だと思っただけだ」

「それがどうしてその恰好になるのですか? ファッションセンスがないにもほどがあります!」

「お前のようなガキに俺のファッションセンスがわかってたまるか!」

いがみ合う2人の間に入り、ルドがなだめながらこう言う。

「まあまあ。 とにかくもう時間だ。 兄貴も頼んだぜ?」


そして、夜光とスノーラは物影に隠れ、ルドを見守る。


「やあ、ルドさん! 待ったかい?」

そこへ現れたのは、金髪の美少年であった。

「よっよう」

無理やり作った作り笑いが、とてつもない違和感を発しているが、ルドへの恋に燃えるアロハにはまぶしい笑顔にしか見えなかった。


「ルドさん。 ここに来てくれたということは、ラブレターの返事を聞かせれくれるんですね?」

期待を込めた視線を向けるアロハに、ルドはゆっくりと口を開ける。

「あぁ・・・そのことなんだけど・・・」

次の瞬間、ルドは勢いよく頭を下げてこう言う。

「ごめん。 実は、オレには付き合っている男がいるんだ」

ルドのカミングアウトにショックを受けるアロハ。

「そっそんな!! 誰ですか!? その男って」


「おう、お前か。 俺の女に手を出そうとした命知らずは」

そこへ現れたのは、マフィアのボスと化した夜光であった。

「だっ誰ですか!? あんたは」

「決まってんだろ? ルドの男だよ」

「えぇ!! ルドさんは、こんなチンピラみたいな人と付き合っているんですか!?」

「まっまあな(すごく否定したい)」

「お前、ルドのことが好きなんだってな? だがルドは俺の女だ。 悪いが諦めてもらうぜ?」

夜光は馴れ馴れしくルドの肩に手を回す。


「ほっ本当に付き合っているのですか? とても信じられません」

なかなか信じようとしないアロハに対し、夜光は強硬手段をとった。

「決まってんだろ?・・・ほら、付き合っているからこんなこともできる」

夜光はそう言うと、ルドの服の中に手を突っ込み、胸を揉み始めた


「(なな何してんだよ!?)」

「(信用させるためだ!! 我慢しろ!!)」

戸惑うルドを無視し、夜光はルドの体をまさぐる。

夜光の手は次第にサラシの中にまで侵入し、先にある突起物まで摘まみ始めた。

後に夜光は、普段から女体慣れしているので、癖でやってしまったと述べた。

「ちょ・・・兄貴・・・そこは・・・」

徐々に女のような顔に変化していくルド。

「・・・」

アロハはすでに顔を真っ赤にし、硬直状態になっている。

「まだ信用できなら、今度はパンツの中に手を突っ込んでやろうか?」

その言葉がとどめとなった。

「うっうわぁぁぁ!!」

アロハは失恋を嘆きながら、その場から走り去って行った。


「・・・よし。 どうやら上手くいったようだな」

「「・・・いつまでやっているんだ!!」」

必要以上に胸を揉みしだいてしまった夜光には、、ルドとスノーラの拳というオチがついてしまった。



その翌日・・・

「何ぃ!? 今度はスノーラにラブレターが届いたぁ!?」

再び夜光の部屋に訪れたスノーラとルドから聞かされたのは、またもやアロハのラブレターであった。

「ルドとよく一緒にいた私に一目ぼれしたと書いてありました。 まったく、軽薄な男です」

「そりゃあ、男は女から女へと移り行く生き物だからな。 仕方ねぇよ」

「女ったらしの言い分などどうでもいいです。 とにかく、今回は私の恋人役をお願いします」

「だからなんで俺が!?」

「今月分の水道代を代わりに払ってあげたのは誰でした?」

「うっ!・・・それは・・・」

ルドの恋人役を引き受けた条件であった、水道代については、すでにルドとスノーラが立て替えている。

「恋人役を引き受けて頂けないのなら、立て替えた代金を今すぐお返しください」

スノーラの発言は完全に、脅迫であるが、こうでも言わないと夜光は動こうとしないのも事実。

「きっ汚ねぇ・・・」

「あなたにだけは言われたくありません」

こうして水道代を盾にされた夜光はスノーラの恋人役を引き受けることとなった。



そして、その日の1時。

再び図書館の裏庭に訪れた。

相変わらずの蒸し暑さで、ここ最近は熱中症で倒れる人もいるという。

ルドが念のために、クーラーボックスと飲み物を用意している。


「・・・またその恰好ですか?」

呆れたスノーラが目にいているのは、ルドの時の全く同じ服装でやってきた夜光であった。

「一応、違いを見せるために勝負パンツを履いてきたんだが・・・」

「妙なところで妙な気遣いをしなくていい!! だいたい勝負パンツなんてどこで見せるんだよ!?」

「そりゃあ、女と・・・」

「くだらないことを言ってないで、さっさと物影に隠れていてください!!」

夜光の性的な話を遮り、夜光とルドを物影に隠れさせるスノーラであった。


「やあ、スノーラさん。 待ったかい?」

前回と全く同じセリフでやってきたアロハ。

「あっ・・・いえ。 特には」

愛想のない返答だというのに、アロハは「よかった~」と言わんばかりに目を輝かせている。


「ここに来たということは、ラブレターの返事を聞かせてくれるのですね?」

期待に胸を高めるアロハに、スノーラははっきりとこう言う。

「申し訳ありませんが、あなたとはお付き合いできません」

「えぇ!! どうしてですか!?」

「私には、以前から交際している方がいます」

その言葉を合図に、物影に隠れていた夜光が飛び出してきた。


「お前か。 俺の女に手を出そうとしている命知らずは」

またしても同じセリフで登場する夜光。

「あっあなたは!?」

「お前、スノーラのことが好きなんだってな? だがスノーラは俺の女だ。 悪いが諦めてもらうぜ?」

「あなたはルドさんとお付き合いしているんじゃないですか!?」

「ああ。 ルド”とも”付き合っている。 2人共俺の女だ」

「二股なんて・・・最低だ! スノーラさんもなぜこんな男と」

「それはその・・・」

想定外の質問に、スノーラが困惑していると、夜光が割り込んできた。

「そんなの俺が良い男だからに決まってんだろ? だいたい金持ちで夜は無双間違いなしの俺とお前みたいな女を知らない童貞野郎なんて比べるまでもないだろう? 身の程をわきまえろよ」

「(夜光さん! 必要以上に煽らないでください!)」

静止するスノーラであったがすでに遅かった。


「ゆっ許せない!! うわぁぁぁ!!」

ついに怒りが爆発したアロハが拳を握って夜光を殴ろうとした・・・が。

「あっ・・・」

拳が夜光に届く前に、夜光の拳がアロハの顔面に命中した。

「あ・・・あ・・・」

アロハはそのまま倒れて気絶てしまった。


「何やってんだよ!?」

思わず物影から飛び出すルド。

「いや、条件反射でつい・・・」

喧嘩慣れしている夜光にとって、殴り掛かって来る相手を殴り飛ばすのは、もはや本能である。


「どうするつもりですか!? この状況」

「どうと言われても・・・」

その時であった。


「アロハ~!!」

突然いかつい顔をした男が気絶しているアロハに駆け寄り、抱きかかえた。


「アロハ!! しっかししろ!! 様子がおかしいと思ってきてみれば・・・いったい誰が俺の息子を!!

・・・お前達か!?」

アロハの父にそう尋ねられると、スノーラとルドは反射的に夜光を指す。

「「こいつです」」

「おっお前ら!!」

2人の裏切りに怒る夜光だが、ここでアロハの父がこう叫ぶ。

「野郎共!!」


『おぉぉぉ!!』

おたけびのような声と共に現れたのは、黒服の男達であった。


「なっなんだなんだ!?」

黒服に囲まれてパニックになる夜光。

「俺の大事なアロハに傷をつけやがったその男をぶっ殺せ!!」


『おぉぉぉ!!』


「ぎゃあぁぁぁ!!」


夜光と黒服集団の鬼ごっこが始まった。

後にアロハは大きなマフィアの跡取り息子だということが判明した。


「・・・帰るか」

「・・・そうだな」

夜光の無事を祈りつつ、スノーラとルドはその場を後にした。


ちなみにアロハは、その後きちんと彼女を見つけ、無事に結婚までした・・・



ルド「まさか本当にまた短編出すとは思わなかった」

スノーラ「前回はIFストーリーだったが、今回は本編で書けなかった日常を書いたようだな」

ルド「それにしても、年明け1発目が短編小説って言うのはありなのか? 本編を進めた方がよかったんじゃ・・・」

スノーラ「それについては前回でも散々話し合ったが、作者の『自由に書かせろ!』という鶴の一声で黙秘することとなった」

ルド「それに内容も、別段すごいストーリーとも思えないけど・・・」

スノーラ「それについては、私も同意見だ。 まあ、この話で本編への興味が湧いてきた読者が出てくるのなら、これも良いのではないか?」

ルド「そうだな・・・じゃあオレ達も一応読者に何か言っておくか」

スノーラ「あぁ」

ルド・スノーラ『最後まで読んでくださって、ありがとうございました。 本編もよろしくお願いします!!』

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