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装飾・前
憧れの人がいる。いつもクラスの端でどこかを見ている、あの人。
誰と喋っていても、何をしていても上の空で何かを一心に、夢中に見つめている。
私は誰よりもキラキラしていた。そんな私でも彼女の視線一つ捕えることができないことは悔しかった。
ある時、私はその視線の先を捉えた。
そこにいたのは何の飾り気もない純朴な素材――けれど確かに、私の目を奪うのにも充分な美しさだった。
「ねえ、ちょっとお化粧してみてもいいかしら?」
私は気付けば彼女に私ができうる限りの装飾を施した。
私の思った通り、彼女はみるみる美しくなった。最高の素材は私の装飾を得て私をも超えるほどの最高の輝きになった。
私を超えた、私以上の逸材、それに私は何の不満もなかった。
クラスの影であるような彼女が輝きを放つこと、それは美しく満足いくものだった。
ただ、全く私の思い通りにならないことがあって、それが決して認められるものではなかった。