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第7話 冥界の問題児


「ねぇメイ。今日も一緒に帰りましょうよ。」


いつもの如く天野から帰りのお誘いがあった。

どうやら霊魂が取り憑いていると言っても、まだ身体の操作権を奪われる段階まで至っていないようだ。


グリコ曰く、霊魂が完璧に取り憑く方法は3つほどあるらしい。


1つ目は霊魂自身が取り憑く対象の心と身体を弱らせていき、最終的に身体の操作権を奪う方法。これは霊魂の想いの強さにもよるが、基本時間の掛かるものらしい。


2つ目は取り憑かれた者が意図的に身体の操作権を霊魂に貸し与える方法。ただしこの方法は、霊魂が見える者でないと使えないため、かなり確率は低いらしい。グリコが言うには霊魂が見える者はこの世界に両の手で数える程しかいないとゆうことだ。


3つ目は死神の力を使うこと。

これは今のグリコの状況では使えない。

死神の力を使えば冥界にいる"師匠"にバレてしまうかららしい。


天野の場合は1つ目の方法で、今まさに心と身体を弱らせている段階なのだろう。

ちなみに俺は2つ目の方法で意図的に貸し出している状態らしい。


「ねぇメイ、聞いてる?」


俺が考え事をしてる間に話しが進んでいるようだ。


「あぁ!聞いてるよ春花!昼休憩の時のことだね!春花は昼休憩の時、僕とキスしたあと倒れてしまったんだ!」


おいっ!

今は悪ノリする空気じゃなかっただろーが!

これにはさすがの天野も怒るだろう。

何せ勝手にキスされたんだ。

実際は右アッパーで倒れただけなんだけどな…。


みるみる顔が赤くなっていく天野。

これはヤバい…怒りのボルテージが上がっているんだ…。

早く嘘だと言えこの疫病神が!


「ごめんな。すげー可愛くて気付いた時にはキスしちまってた。」


おいいい!

しちまってたじゃねーんだよ!

殺される!殺されるぞ!


「…そんな…まだ付き合ってもいないのに…」ボソボソ


天野が小さな声で何か言っているが聞き取れない。

おそらく死の呪文か何か唱えているのだろう。


「んじゃ春花!俺はこっちだから!明日は一緒に学校に行こうな!」


そんな天野を無視して、話を帰る方向へともっていくグリコ。

天野を見張っておかなくて大丈夫なのだろうか?


「え?あ、うん!それじゃここで待ち合わせにしましょ!それじゃ、また明日ね、メイ。」


ヒラヒラと手を振ってすんなりと帰って行く天野。あれ?怒っていたんじゃないのか?なぜか分からないがとりあえず助かった。


ところで、グリコ。

天野を見張っておかなくて良いのか?


「全然おっけぃだよ冥君!あの様子なら今日中に身体を乗っ取られる心配はまずないからね!それに春花の家まで着いて行って見張るわけにもいかないでしょ!」


まぁ、確かにそうだな。


「それとも冥君は春花の家まで着いて行きたかったのかなぁ~?このこのぉ♪」


馬鹿を言うな。殺される。


「冥君ってば、意外と鈍感なんだね!」


何を言ってるんだ。

さぁ家に着いたぞ。

さっさと俺の身体から出ていけ。


俺がそう言うとグリコはすぐに身体から出て行った。


「せっかく私が助けてあげたのに、お礼の一言もないなんて!」


はいはいありがとう。

まぁ実際助かった。

俺が俺のまま学校に行っていたら、1日中誰とも会話せず、昨日とのテンションの差に気味悪がられていたところだろう。


「へへん!今度からグリコ様とお呼びなさい!」


ところでグリコ様。

天野に取り憑いている霊魂とは一体どんな関係なんだ?


「あぁ…霊魂ってゆうのはね、死神によって回収されて冥界に来たら割りとすぐ冥土へ送られるものなんだけど、あの霊魂はかなり長い時間冥界に留まっていたんだよ。」


…なんでだ…?


「だから変態だからだよ!女子高生くらいの霊魂が来る度眺めていたし、私のことも時々嫌らしい目で見ていたんだからっ!女子高生に嫌らしいことをするために下界に降りるチャンスを伺っていたんだよ!そのためだけに、頑なに冥土へ行くのを拒んでたんだよ!そうに違いない!」


「だから師匠には、あれほど言っていたのに!あいつは力ずくでも冥土へ送らないとダメだって!師匠はいつも甘いんだから…!」


グリコの師匠が、冥界に留まることを許していたのか?


「そうなんだよぉ!下界へ行かすわけには行かないがここに留まるだけなら好きにしろって!全く何を考えていたんだか!だから他の死神からネチネチと文句を言われるんだ!」


話しが脱線してきたな。

もしかしたら、他の理由があるんじゃないか?

仮にただの変態だったとしても俺たちが見張っておけば問題ないだろう。


ただ、もし他にまともな理由があるとするなら、俺はあいつのしたいようにさせてやりたい。

どうせならこの世に未練なく冥土へ行かせてやりたい。


「…まぁもちろん私もそのつもりだよ。まともな理由があるんならね!だがしかぁーし!変なことしやがったらすぐとっちめてやるんだから!」



…あぁ、どっちにしろ見届けてやろう。

あの霊魂の最期を。


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