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第3話 始まる学校生活


「ルンルンルゥ~♪」


呑気に鼻唄を唄いながら教室を目指す俺。

正確には俺じゃないのだが…。


「おっはようだぜぃ!ルンルルゥ~♪」


無理に男のキャラを演じないでくれ…。

いや、女キャラでいかれても困るのだが…。


「ルンルン……おっ!そこのお姉ちゃん!ちょっと時間あるぅー?」


俺じゃない俺は、急に鼻唄をやめ、数メートル先に居る女に足早に近づきながらナンパ師のように声をかける。


……って、この女は…。


「アンタ、良く私に声が掛けられるわね?てゆーかその声の掛け方キモいんだけど。」


…そう、あの女だ。あの下駄箱女だ。

そう言えばこの霊魂、俺の誤解を解いてくれると言っていたらしいな。


「まぁそう言うなって!昨日の敵は今日の友だぜぃ?」


お前はそのキャラを即座にやめろ。

頼むから。


「はぁ?何意味分かんないこと言ってんの?」


それは同意しよう。

本当に意味が分からない。


「…俺はお礼を言いにきたんだぜぃ。」


…は?


「…は?」


俺と下駄箱女の息が合う。

お礼?こいつは何が言いたい。


「昨日のことだぜぃ。俺は下駄箱で小さな女の子を見捨てた。泣いている小さな女の子より自分のことを優先したんだ。だが君は俺の代わりにあの子を助けてくれた!そのおかげで俺は今ここに立てている!」


なぜか凄い壮大な話しに聞こえるんだが…。

実際はただ話しかけることができなかっただけだ。

本当にただそれだけだ。


「……」


下駄箱女よ。お前も何かツッコめよ。

なぜ真剣に話しを聞いてるんだ。


「もしあのあと、誰もあの女の子を助けなかったら、俺は本当に糞野郎になっていた!だが今は違う!」


そう言って下駄箱女の両手をガシッと掴む俺じゃない俺。

…何かこいつスイッチ入ってないか…?


「…!」


下駄箱女よ。お前はいつまで黙ってる。

この猿芝居に早く終止符を打ってくれ。


「今は、何が一番大切なのか良く分かる!…自分自身より大切なもんが、この世の中にはいっぱいあるんだってことが良く分かる!それに気づけたのはアンタのおかげだ………。…だから、その、名前…聞いてもいいかな?」


お前は本当に何が言いたいんだ?

少女漫画みたいなノリで名前聞くのやめろ。


「…天野春花」


なぜ名乗る…。

どうゆう展開なんだこれ。


「春花か…。本当にありがとう春花。お前のおかげで俺は救われた。だから…俺は俺の一生を懸けてお前を守るよ。それが俺の恩返しだ。……じゃ、また教室でな。」


こいつ…こんな臭い台詞を…。

これは俺の今後の学校生活に大きな支障をきたすかもしれない…。

このことがもし天野の口からクラスメイトに漏れれば、昨日の件どころじゃなく、完璧にジ・エンドだ…。


「…ちょっと!…ちょっと待ちなさいよ!」


…これはまずい。

天野の奴、完璧に俺のことを引いている。

そりゃそうだ。臭い台詞を散々吐いて、その上ボディタッチまでやらかしている。

自分で言うのもなんだが相当にキモい奴だろう。


「…どうした、春花?」


要所要所で格好つけるキャラ本当にやめてくれ!

明日から俺はいつも通りの女性恐怖症なんだぞ!


「…アンタ名前は?」


終わった…。

名前を聞いて、クラスメイトに広める気だ…。


「…送川メェイ」


おい…発音まで格好つけてんじゃねぇよ。

やり過ぎなんだよ!

本当に俺のこと助ける気あんのかこいつは!


「メイ…あんたさ…その…約束…守んなさいよね…」


………はい?


「当たり前だろ?絶対守ってやるから、だから春花は、俺の横でただ笑っていてくれ。」


………


「…約束破ったら許さないかんね……。って、もう朝礼始まっちゃうじゃん!2日目から遅刻とかありえないっつうの。先教室行ってるからねメイ!」


そう言って満面の笑みを浮かべ走り出す天野…。


…良く分からんが(分かりたくもないが)これでクラスメイトから嫌われることはなくなった。

昨日の件は天野がクラスメイトに喋ったため広がったのだろう。

その天野と仲良くなったんだ。

後は天野が上手く訂正してくれるはず。


問題は明日からだな。

明日からはいつもの女性恐怖症な俺だ。

今日とのテンションの差が激しすぎて、皆に何を言われるか分からない。


…まぁ明日のことは明日考えよう。

今俺のすべきことは、この霊魂が最高の学校生活を送れるよう祈っていることだけだ。


「…適当なことでも言ってみるもんだぜぃ…」


全てを訂正する。

こいつはクズだ。


「さーて、仕切り直して学校生活エンジョイしますか~!ルンルンルゥ~♪」


そう言って教室にスキップで向かっていく俺じゃない俺。



…まぁこいつが楽しければそれで良いか。

結果オーライってことにしておこう。


-とりあえず俺は考えるのをやめた-

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