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第1話 死神見習いと女性恐怖症


「あんたさ。この子が泣いてんの黙って見てたわけ?ホントありえないんだけど。」


…………どうしてこうなった…………。

俺はただ下駄箱で靴を履き替えようとしていただけなんだ。


確かに下駄箱の近くで泣いている女の子はいたさ。

だが俺にはこの子がなぜ泣いているのか事情を聞く術はない。

なぜなら女性恐怖症だからだ。


「さっきから何黙ってんの?何か言うことないわけ?」


何もない。正確にはあっても言えない。


「もう良いわ。ホント最低だねアンタ。行こ?お嬢ちゃん?」


…………最悪だ…。

入学式前にこんなことになるなんて。

これは嫌われるフラグがビンビンなんだが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー


今俺は入学式を終え帰路についている。

結果から言おう。


最悪だった。

今朝下駄箱でひと悶着あった女子と同じクラス。

そして俺の犯した罪(泣いてる女の子スルー)は瞬く間にクラスに伝わった…。


俺はチャイムと同時に逃げるように教室を飛び出し、今に至るとゆうわけだ。


なぜ初日からこんなに不幸なんだろう…。

何か悪いものに取り憑かれているのだろうか…。

そんなまさかな…はは…。


「その通りなんだよねぇそれがっ!」


「ブゥファッ!」


「何その驚き方!?怖いんだけどっ!」


びびった。

心を読まれたこともそうだが何より女性に話しかけられたことに対する驚きだ。

驚くことに対する順位が間違っている気がするが今はそれどころではない。


「いやかなり間違ってるよそれ?心見透かされたことより女性から話しかけられたことに驚くって…」


フーフー…

落ち着け俺…

あと心を読むのはやめてくれ…


「おっけぃ!ところでさ!色々聞きたいんだけど…」


………。


「………話し、ちゃんと聞いてる?」


………………………駄目だ。

やっぱり女と話すのは無理だ。

心を読んでほしい。

心の叫びを聞いてほしい。


「…あのさ。やっぱり心読んじゃっておっけぃかな?」


俺はただただコクりと頷く。


「おっけぃおっけぃ!んーっと…送川冥君ね…あぁ今日は凄い悲惨だったんだね…へぇ女性恐怖症なんだ…フムフム…」


なにこの羞恥プレイ。

穴があったら入りたい。


「君のことはだいたい分かったよ!次は私の紹介ね!私は死神のグリコ。まぁ死神ってゆっても見習いなんだけどね!」


ちょっと待った!

…死神?


「そ!死者の霊魂を集めて冥土へ送るのが仕事なの!私はその見習いってわけよ。」


…まぁ心が読めるなんて明らかに人間業じゃないもんな。 

それにツッコミはしなかったが、ちゃんとそれっぽい鎌を背負っている。

とりあえず信じよう。


「そうしてくれると助かるよ!ところで君って女性恐怖症のヘタレのくせに中々肝が座ってるよね!」


ん?そうか?

てかとりあえずヘタレはやめろ。


「心を読まれても、死神が目の前に居ても動じないなんて凄いことだよ?」


確かにな。

よくよく考えればその通りだ。

だが俺は死神よりも女性が怖い。


「…うわ…。凄い可哀想になってきたよ…」


ところで俺に何の用だ。

…まさか!?俺は死ぬのか…?


「ブッブッー!違うんだなそれがっ!実はさ、冥界にいる時にね、私の師匠が回収した霊魂を下界に逃がしちゃったんだよね!」


それで?


「うん。それでね。私はこうやって下界に降りてきて逃がした霊魂を探してるわけ。」


…それで?


「うん。それでね。その逃がした霊魂が今あなたに憑いてるんだよね。」


……それで?


…………………………………………………

じゃねーよ、ふざけんな。


「ナイスノリツッコミだね!」


いやそんなのどうでもいいからどうにかしてくれ!


「おっけぃ!…と、ここで提案なのだけどさ!」


嫌な予感しかしないんだが。


「私がさ。死神の力を使って霊魂を回収しようとすれば下界まで来ていることが師匠にバレちゃうんだよね。だからなるべく死神の力は使いたくないなーって思っちゃているわけで。」


…つまり?


「つまりさ。姿を消したりだとか宙に浮いたりだとか一撃で相手を消し飛ばしたりだとか、そうゆう死神の力は極力使わずに逃げた霊魂を捕まえたいわけなのだよっ!」


いや、凄い物騒な技が使えるんだね。

さすがは死神か…

ん?でもその力を使わずどうやって…


「そこなんだよ!霊魂ってゆうのはね、普通は命ある人間には見えないし害も与えられない。まぁ例外はあるんだけどそれは置いといて…。一つだけ命ある人間に害を与える方法があるんだよ。」


…取り憑くってことか?


「そうゆうことだね!霊魂が誰かに取り憑く理由は生前やり残したことを成し遂げるため。」


つまりそのやり残したことさえ片付けてやれば、死神の力を利用しなくても冥土へ送れるってことか??


「そうそう!理解が早くて助かるよ!そこで君の出番ってわけだね!」


なるほど…。

それを俺に手伝えってことか…。


「君みたいに死神と出会っても、霊魂に取り憑かれても動じない人間なんて中々いないからね!それに君は死神の存在を認識できる数少ない人間なんだ!まさにこれは運命の出会いだよ!」


………………まぁやってやらないこともないが。


「……えっ!ホントに?こんな簡単に引き受けてくれるとは思わなかったよ!」


こうやって女と話すってのは久しぶりだしな。

女性恐怖症を克服する良いチャンスだ。

心の中ではちゃんと会話することができるしな。


「そんな理由なんだ…。まぁ私は引き受けてくれれば何でも良いんだけど!それじゃ宜しくね冥君!私のことは気軽にグリコと呼んでくれておっけぃだから」


わかった。

こちらこそ宜しくなグリコ。


死神と名乗る少女に出会った俺は、先ほど地獄の入学式を終えたとは思えないほどに、期待に満ち溢れていた。

これから始まる非日常の生活に対してと、女性恐怖症を克服できるのではないかとゆう、淡い期待である。


…………………とりあえず俺に取り憑いている霊魂をどうにかすることからだな……………


「おっけぃ!」  



-こうして死神見習いと女性恐怖症の凸凹コンビが結成されたのであった-

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