第一話 骨董屋「ちとせ」
春の木漏れ日が差し込み、やわらかい風が春真っ盛りであることを伝えている。
そんな中、他愛もない会話が古風な店から聞こえてくる。
「はぁ~今日もぽかぽかな一日だね」
そう言いながら店のカウンターで外の景色を眺めているのはこの店の店主である茅ヶ崎小春。艶やかでまっすぐな黒髪が胸までかかっている。身長は160cmほどで、大学生と同じくらいの年齢。整った顔立ちをしていて、すらっとした姿にベージュのエプロンが店の雰囲気に溶け込んでいる。
「うんうん、こんな日は何もしたくなくなっちゃうよ~」
彼女の言葉に応えたのはこの店で働いている漆葉黎。セミロングでこげ茶に近い髪色をしている。小柄で年齢は中学生ほどだ。そんな彼女も、椅子に座って外の景色を眺めながら店の真ん中にある机に突っ伏していた。
「れーちゃん、なんか人間味でてきたね」
「ほんと!?これで黎も一人前の人間です!」
黎がえっへんと自慢げに喜んでいる。
ーーーー
黎の言葉に違和感を覚えるかもしれない。なので、ここで紹介を一つ、、、実は漆葉黎は元々は人間ではなく漆塗りの小さな湯呑みであった。
付喪神というものを聞いたことがあるだろうか?付喪神とは簡単に言うと長い年月を経たモノに宿る精霊と言われていて(諸説あり)昔の時代から存在している。しかし、漆葉黎の場合は持ち主の強い想いに応えたことで魂が宿り、人間へと生まれ変わった。今では人間の生活にもなじみ小春と平凡な日常を過ごしている。
彼女たちの最初の出会いを語りたいのだが、それはまたいずれ、、、
ちなみに、ここの店は古道具や骨董品を専門に取り扱う店である。今は小春と黎の二人で切り盛りをしている。 店の中には陶器や彫刻品、焼き物など様々なものが置かれている。店自体は古いが汚いというわけではなくとても趣を感じさせる。外には年季の入った木の看板があり、大きく「ちとせ」とひらがなで書かれている。店全体を見る限り、かなり昔からあるようにみえる。
ーーーー
「小腹もすいてきたし何か食べようか?」
そう小春が尋ねると黎は目をキラキラさせながら突っ伏していた机から顔を上げて答えた。
「黎、苺大福が食べたい!」
「苺大福か~、いいねっ!すぐ持ってくるね」
そういいながら小春は奥の戸を開けて台所のほうへ向かっていった。この店は平屋の店舗併用住宅(店と家を併せ持っている)であるため一日の生活をここで過ごすことができる。
「お待たせー、苺大福でーす」
角皿を二つ持った小春がニコニコしながらやってきた。
「ふゎ~可愛らしいです、はやく食べたいです!」
「ちゃんと噛んでね、飲んじゃだめだよ?」
「飲まないよっ!なんで小春はいっつもそう言うの、、、」
口の周りに大福の粉をつけながら黎はむすっとしている。
「ごめん、ごめっ、あっ美味しい!」
「もぉー全然反省する気ないじゃん!もぐもぐ」
「れーちゃん、しっかり嚙んで食べて偉いね。品の良さも人間には大事だからね」
「一人前の人間ですから、えっへん、、、あれ?そういえば噛んで食べることなんて前からできたよ!黎、そんな子供騙しには引っかからないから!」
「結構騙されてた気がするけど、、、」
そんなこんなで時間が過ぎ
ーーーー
「うぅ〜、とんでも眠いです」
黎がぼんやりとしながらつぶやく。黎の瞼は重そうでうつらうつらしている。食後であるのとぽかぽかした天気が余計に眠気を誘ってくるのだろう。
「れーちゃん寝てもいいけど、どうなっても知らないよー」
そう言いながら小春がこちょこちょの姿勢をとっている。
「黎は触られるのは慣れてるのでそんなのへっちゃらです!黎は一人前なので嘘はつきません!」
「そっか〜、じゃあ試しにやっちゃうよ」
小春が黎めがけてこちょこちょを仕掛ける。
こちょこちょされた数秒後、黎が言った言葉とは裏腹に笑い声が外いっぱいにまで響き渡った。
黎の一人前の道のりはまだまだ続く。
~ 骨董屋『ちとせ』は今日も絶賛営業中~
「ちととせ」を読んで下さりありがとうございます!今回初投稿であり至らない点もあると思いますが、これからゆっくり投稿していけたらなーと思います。
始めたきっかけですが、私はほのぼの系のアニメを見るのがとても好きでよく癒されていました。そんな中、ふと自分で小説書いて楽しんでみようという考えが浮かび上がり今に至っています。安直すぎますかね?w
割と登場人物の名前は試行錯誤して決めたので気に入っています!
あと、登場人物のしゃべり方、性格に合わせて会話文を考えるのが大変でした。(私の性別が男なのでw)
後書きはこれぐらいにして「ちととせ」があなたの癒しとなれば幸いです!
p.s.できた小説読んでてなんかとても恥ずかしかった