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理不尽な世界で長生きしたい。  作者: おむまめ
幼少時代
9/9

王子殿下と国王陛下

お待たせしておりまする!



ついに父様…この国の国王陛下と対面する日が来た。


母様も交え父様と会って話をするだけなのに緊張で心臓が激しく動く。


昏睡状態を演じ早2ヶ月と数日。


未だに目覚める予定ではない私の為に、父様は良薬が有れば何処からでも取り寄せ、腕が良い医者が居ると聞けば大金を積み呼び寄せてくれる。


最近では私の様子に変化がないからと、胡散臭い祈祷士や黒魔術を研究する集団を呼ぼうとしてるらしい。


黒魔術って…私はまだ死んでないし生きてるよ!

そして今では職務にも影響を及ぼし、お母様が私に泣き付いてきたのだ。


しかしタイミングが悪いと言うか…。


ミューゼ殿の産み月までは絶対に演技を止める予定は無かった。


来る日も来る日も深夜のリバビリに励み、それを終えると優秀な仲間達が集めてくれた情報を見聞きする。


時に息抜きも大事だと仲間達から諭されて主人公の産着や玩具など必要な物も揃えてみたり。


ミューゼ殿を本気で側妃にするか考えてみては止めるを繰り返す。



一応五歳児の私は朝方には眠気もピークに達し夕方もしくは夜まで爆睡させてもらう。


こんな日々を過ごしていたら昼夜逆転生活も影響して、職務で忙しい父様とは合わずじまいで今に至っていた。


勿論今の状態を演じてる事について悪い事をしている自覚はある。


その事はあの日母様にも問われ涙ながらに謝り通した。


深くは説明出来なかったけど目的があって、今もこの状態を演じていると話せば一応は納得してもらえた。


だが父様はどうだろうか?


表舞台ではゲーム通りに物語は進んでしまっているし、必死に説得しようが父様が素直に話しを聞いて納得してくれる可能性は非常に低い。



すでにゲームの中でも語られるリーブレット伯爵家、その家名に連なる親類縁者の処刑は粛々と行われている。



幾ら本当の黒幕お婆様への牽制と見せしめだからと言って、本当に関係のない人々への処刑は正直やり過ぎだと思った。


そして集めた情報によれば最初の黒幕とされたミューゼ殿の家族の処刑は一切行われて居なかった

しかしそんな中ミューゼ殿の兄は激しい拷問の末獄中で息を引き取ったらしい。


リーブレット伯爵は獄中の中で辛うじて生きているらしいが、ミューゼ殿の母君の行方へが未だに分からず仕舞いだ。


これってかなり可笑しな話だと思うのは私だけなのでしょうかね?


精査した情報とゲームのシナリオを思い出しよく考えてみる。


「…リーブレット伯爵夫人はお婆様の元で匿われている?」


そう呟いた瞬間鋭い痛みが頭に走ると、脳裏にあり得ない考えが浮かんでしまった。


もしも獄中に居るリーブレット伯爵と死んだとされた子息も影武者だったとしたら?


何故ミューゼ殿だけが何も知らされていないのだろう。


リーブレット伯爵家には王家も知らない裏の顔があるとか?


でもそれをお婆様がどこかで知って話を持ち掛けた?


しかしこんな嫌な考えが次々と脳裏に浮かぶんだろう。

やはりお婆様の存在が明らかになったからだろうか?


でもねお婆様の影響力がゲーム中に見え隠れしてたけど、ゲーム自体に登場してたかな?



「うーん…。

ねぇジゼル今獄中に居るリーブレット伯爵が影武者の可能性はあるかい?」


ジゼルは顎に手を当てるとふむむと呟いた。



「あり得なくはないがの。しかし何故そう思ったのだ坊や?」



「えっとねあの事件が無ければ後宮に嫁いだミューゼ様はこれから誕生する王族の母親になる予定だったんだよね?

それに産まれて来る子が男児ならきっと王位継承権だって与えられる。

なのにだよリーブレット伯爵は地位も命だって失うような行為をするだろうか?その事がねずっと引っ掛かってたんだよ。」


リーブレット伯爵と夫人は恋愛結婚の末結ばれた。

その事はゲーム中でも語られていたはずだ。



「ほほほっ!坊やは良く頭が回るの。

本当に五歳児なのかのぉ?よーしその件についてちょいと調べてみるかの」


一応はね五歳児ですよ。

それにこんな事良く考えなくても普通に思い付くでしょう?



「まぁミューゼ様が養女って可能性は無いとは思うけど…」


「お話を遮ってしまい申し訳ありません。

ですがヴィンセント様その可能性は捨てきれませんわ」


「えっ、どうしてだいアデル?」


視線をアデルに向けて説明を求める。


「ヴィンセント様のお父上様がご誕生された前後の年に女児を養子に迎える貴族が多く居たと噂を耳にした事があります。

それにヴィンセント様がご誕生された時も騎士爵や男爵で産まれた女児が伯爵家や侯爵家に引き取られたとお聞きました」


養子として引き取られた女児全てが王族に嫁ぐ事は叶わない。


それでも娘が居ない高位貴族は欲を隠さず爵位の低い家から養子を迎えたって訳ね。


しかし幸せになれたのはほんの一部の人だけだろう。


今までもこれからも引き取られた子供達の行く末が心配になる。


確かリーブレット伯爵は頑なな純血主義者だ。

夫人とは恋愛結婚したのにちょっと意味が分からない。


でも亡国の姫とはいえ元皇女だった母様の輿入れを最後まで反対していた人物。


もしもミューゼ殿が養女だったとしたら、お婆様とリーブレット伯爵が結託してまで私を排除したい理由は一体何なんだろう?


やっぱりこのゲームは特に私と女性への扱いが酷い気がするな…。


「悪いがミューゼ様が養女なのかも調べて欲しい。

それとディアとアデルには今まで引き取られた女児達がどんな生活を送っているのかも調べて欲しい。」


「任されよ坊や」


「お任せ下さいませヴィンセント様」


「了解だぜご主人様」



色々と問題案件と向き合っていたら、父様ごめんなさい…時間が作れなかったんです。


本当に本当に父様ごめんなさい。



そんなこんなを思い出しながら、刻一刻と父様との対面が近付いている。


「口から心臓が飛び出しそうだ」


優秀な仲間達は家族三人で話す機会も必要だと言ってくれ今は席を外してくれていた。


一応昏睡状態を装い寝間着姿でふかふかのベッドに横たわっている。


以前の私はベッドで寝てても激痛で眠る事も儘ならなかった。


「ふぁ~眠い」


今でも鋭い痛みを感じる事もあるけど、あの頃よりは痛みは治まり順調に回復に向かっている。


だがこの火傷だけは別物だ。


この火傷は死ぬまで一生背負っていくのだと一応の覚悟は出来ている


「まぁね男は顔だけじゃないからね!」


ぶつくさ呟いてたくさんの欠伸をしていた時、コンコンと扉を叩く音がした。


一応オメメは閉じているけど人の気配が段々近くに感じた。


「ヴィンセント…」


「ヴィトちゃん」


お母様は全てを知ってるから声色がとても優しい。

逆にお父様は震えた手で私の手を握り今にも泣き出してしまいそうな声だ。


さてどうやって目覚めて見ようかな?

軽くお父様の手を握り返してみよーかなぁ!


「…うっ」


とりあえず呻いてからゆっくりゆっくりと父様の手を握る。


「フローディア!ヴィンセントが手を握り返してくれたぞ!」


「まぁ!ヴィトちゃん分かりますかお母様よ?!早く目を覚ましてちょうだい!」


お母様何だかノリノリで演技に付き合ってくれてるけど、実は父様の反応を見て楽しくなって来ちゃってませんか?


「んっ…うんん?」


まぁ私もノリノリでね付き合って貰っちゃうけどもね。


何度か小さく瞬きをしてから薄目をゆっくりと開ける。


そこにはポロポロと涙を流している父様と慈しみの笑みを浮かべる母さん様がいた。


「ヴィンセント私が誰か分かるかい?!」


「お、とうさ…ま?」


しわがれ声に聞こえてるかな?

声の演技って以外と難しいなぁ。


「そうだ父だよヴィンセント!やっとやっと目を覚ましてくれた!」



「ゲホッ…ご…しんぱい、おかけしました」



一応久しぶりの目覚めの演技だし咳き込んでおいた。


「無理しないで良い今水を用意しよう」


そう言って置かれていた水差しに手を伸ばしてコップに水を注いでくれた。


お母様に支えてもらい身体を起こす。


『ヴィトちゃんったら本当に演技が上手ね?』


『いえいえお母様の方こそ素晴らしい演技でしたよ』


こそこそ内緒話をしてから父様から手渡されたコップに口を付けた。


「父様ありがとうございます。」


「気にしなくて良いんだよ。

それよりも体調はどうだい?辛くはないか?」


気付いと優しさにチキンハートが罪悪感に苛まれる。


「だ、だ…大丈夫です!そう言えば私はどれくらい眠っていましたか?!それに私はもう兄になれたんでしょうか?!」


はいKY(空気読めない)発言発動!


優秀な仲間と作戦会議を開いた結果。

作戦名『こうなったらごり押しで話しを進めちゃおうゼ大作戦!』を実施する事となった 。


この発言に父様の表情は強張り、お母様はきょとんとした顔で私を見ている。


「ミューゼ様の御子に会いたいのです!お父様弟に会わせて貰えませんか?」


「それが…だなヴィンセント。何と説明したら良いのだろうか」


「実はミューゼ様のご懐妊を知り贈り物も用意してあったんですよ!」


父様の発言途中の上からさらにKY発言で被せる。


懐妊を知り贈り物を用意していたのは嘘ではなく本当だ。


時より嘘と真実を交ぜて話をゴリゴリ押して進めていく。


弟が産まれないのは当然知っているけど、ゲームの記憶を思い出す前のヴィンセントは弟を欲していた。


だからあえて弟に会わせて欲しいと父様にねだる。


「落ち着きなさい傷に障る。

ちゃんと一から話をするから聞いてくれるかい?」


「はい」


「思い出すのも嫌だろうがヴィンセントは誘拐された時の事を覚えているかい?」


うんうん覚えてる。

何日か何週間だったか寂れた小屋で悪い大人達と監禁生活させられて悪戯もされたなぁ


「私が…女性ではなく男で良かったとおもっています」


あの悪い大人はショタコンだったのかしら


「辛い事を聞くが続けても大丈夫かい?」


「は…はい」


「ヴィンセントは誘拐された先で大怪我を負ったね?」


「仲間割れが起きて隙を見て逃げようと反撃したら背を斬られ足は…」


グサッとね剣で貫かれたよ。

あの衝撃と痛みは一生忘れないと思う



「実はだな実行犯達に誘拐の指示したのが側妃の身内だと発覚したんだ。だから今側妃は後宮には居いないんだよ。

この意味が分かるかい?」


そっか父様は一応五歳の私に理解しやすいように説明してくれてたのか。


「そうですか…。処刑は行われるのですか?」


「あぁ、一応は子が産まれてからになるが処刑をせねば示しが付かないからね」


ゴリゴリ押し進めていくのは一回止めてちょっと方向性を変えよう。


「父様にお願いがございます」


「なんだい言ってごらん」


「罪人ミューゼを私に下さい」


「なぜと聞いても良いか?」


ほほう最初から否定しないでちゃんと話を聞いてくれるんだ。


「そうですね…私の身体と人生の一部を壊していった人達にすぐ死んで欲しくないんですよ。

死んで楽になるなんてずるいじゃないですか?

私はこれから長い時をこの不自由な身体で生きぬかねばなりません。

出来るならミューゼに一族の罪の重さをもっと実感してもらいたい。

それとは別に私はミューゼの苦しむ姿を見たいのかも知れませんね。」


悪役ヴィンセントは良くシニカルに笑っていた。

なので真似てやってみる。

でもこの悪役ヴィンセントは二度とやりたくないな。


「死んで楽になるのはズルイか…。

そういった考え方をした事がなかったな。

被害者である我が国の王子の意見だ十分に検討しよう」


「ありがとうございます!では検討されている間ミューゼに死なれたら困ります。

今よりも良い環境下で生活をさせたいのですが?」


実は優秀なる仲間達がミューゼ様と何度も接触している。

だから体調も食事に関しても心配はないんだけどアピールはしとこう。


「クッ、死なれたら困るか…。我が息子の我が儘な願いには困ったものだなフローディア」



お父様は苦笑いを浮かべ、お母様に話を振った。


この事はお母様には話して無かったけど大丈夫だと思いたい。


「確かに困ったお願いですね。

ですがあえて言わせてもらいましょう…その願い納得出来かねます」



うぇぇぇーーー!

まさかの逆サイドからのカウンター来たぁぁぁ!


「ヴィンセントはあの方に罪はないと考えてるみたいですが、それこそが間違いなのですよ。」



「間違いですか?」



「えぇ、そうです間違っています。

側妃とは時に正妃の代理を努めなくてはなりません。

しかしあの方は後宮入りした後何の動きもしませんでした。

まるで悲劇の主人公のように殻に閉じ籠って、ただ泣き暮らすだけだったようです。

しかし側妃であられるなら、ご自分の立場を十分に理解しなくてはなりません。

ですがあの方は真実から目を背け、今回の件について何も把握出来きず、今もなおその事にさえ気付いて居ない愚か者です。

今から述べるのは正妃としての考え、あの方は処刑されるべきです。」


確かにお母様の言い分は最もだし一つも間違っていない。


ミューゼ様がもう少しまともな側妃なら今回の件を未然に防げた可能性だってあった。


それにリーブレット伯爵がお父様とお母様の婚姻に反対していたのをミューゼ様は間近で見ていたはずだ。


最強の味方のお母様が今は最大の伏兵として立ち塞いでいる。


私は一体どうすべきなのだろう?


このままではゲーム通りにシナリオが進んでしまう。


何か…何か良い考えは無いのか。


「ですが母としての意見を言わせて貰えば、ヴィンセントの考えに賛同したいとは思います」


「えっ?」



「貴方はとても勇敢で優しくて賢い子です。

あの方をどうしたたいの?」



「殺さずに生かして罪に向き合わせたいです」


「ではあの方には新たに産まれてくる王族の教育係等を任せてはどうですか?」


「教育係ですか?」


「これからあの方は一生をかけて一族の罪を背負って行かねばなりません。

王族の生母とは言え罪人が再び側妃に返り咲くのは非常難しい事です。

それにあの方にだって重い罰を与えなければなりません。

母と子の縁を切らせ一介の教育係として子の側に置いてやるのが丁度良いのでは?」


私とお母様のやり取りをお父様は黙って見守ってくれている。


それにしてもお母様には敵わないな。


「若輩者の私には導き出せぬ答えでしたお母様!」


「私の産まれ故郷でしたら奴隷として扱うのが最適なんですけどね」


ドドド奴隷ぇぇぇ!


そういえばアデルも奴隷の案を出してたな。


「ククッ、フローディア我が国では奴隷を持つ事は違法とされている」


「あら、確かにそうでしたわね。

さぁ、もうあの方の話を終わりにして三人で深夜のお茶会を致しましょう」


お母様はポンと手を叩き麗しい笑みを浮かべた。


私もお母様の意見に乗っかろうとした時だった。


「おいおいフローディア

ヴィンセントは目覚めだばかりだまだ安静にしてないとダメなのではないか?」



「「あっ!」」



私とお母様が顔を見合せ声を揃えた。



それにしてもこれでミューゼ様の未来は繋がったかな?









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