表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理不尽な世界で長生きしたい。  作者: おむまめ
幼少時代
3/9

運命に逆らう王子は覚悟を決めた

フォルセティ王国 王都 バルドル


活気ある城下町は今は異様な空気に包まれている。


理由は先日から続くある一族の粛清が行われているからだ。

今まで捕縛された罪人は年老いた老人だろうが、産まれたばかりの子供でも関係なく粛清の手は及んでいる。

昨日今日そして明日もその先にも行われるで有ろう粛清という名の公開処刑。


首を落とされ命を散らすも、一族の罪を許される事も罪が消える事もない。

日々増えていく晒される一族の首達。

死しても罪は許されず、魂は神の元に導かれる事はない。

今日もまた神に見放された罪人が処刑される。


台座に首を固定された身なりの良い少年は泣きわめき暴れるも、命を刈り取る処刑人が大斧を構え歌うように文官が罪名を読み終えるのを待っている。


悪意ある文官の態度に公開処刑を見守る民に不快を感じさせるが、身分が高い者達の公開処刑は日頃貴族に不満を持つ平民のストレス発散の場にもなっている。

悪趣味で救いのない世界の住人は口元を緩めて公開処刑を見つめている。


長々と子供の恐怖心を煽り罪状を読み上げた文官が卑下た笑みを浮かべて問うた。


『罪人よ最後に言いたい事は有るかね?』


わらわらと熱気が高まる処刑場に文官の声が通る


救いのこない現実に子供は泣くしか出来ないでいた。

この場にいる意味も罪状の意味を知らない子供は、何も知らないまま首を刈られ命を散らした。


貴族で有ろうとも子供の処刑に異様な空気が生まれるが、貴族の世界を知らないまま生きてきた民衆には関係がない。


ましてや今回処刑される一族は王政の君主に楯突いた。

君主の血を引く王子が誘拐された挙げ句、今もまだ意識を取り戻さず瀕死の状態だと聞かされていた民衆は同情さえしなかった。


王国フォルセティを統治するヴァンクリーフ2世は市井の民衆からそれなりの評価を受けていた。

王政ではあるも国王は権力を誇示する事のなく国を平和へ導く姿を知っているからこそ、今王都で行われている粛清に民衆は不満の声を上げなかった。


王子誘拐の事件は箝口令を敷かれたが王国騎士団が日夜城下に降り立ち情報を集めて居れば、自然と国の民にも王子が誘拐されたという話が耳に入ってくる。


王子誘拐事件の犯人が他国の仕業ならば戦争になる。

隣国が一番に怪しまれ国王が宣戦布告をするだろうと噂された矢先誘拐されていた王子が発見されたのだ。


騎士が馬に股がり王城を目指す。

一騎また一騎と馬に股がる騎士が声を荒げ道を開くと猛スピードで走る馬車が現れた。

道を開けた民衆が王家の紋章が刻まれた馬車が過ぎ行くのを見守もっている。

駆け抜ける馬車の中から絶叫のような叫びが聞こえ民衆は皆が首を傾げていた。


痛々しく苦しい痛いと叫ぶ声はその日馬車を見守る民衆の心に刻まれる。

後日声の主がこの国の王子であった事。

王子の身に起きた事件の全容を知ると民衆は心を痛めたがそれは一時だけだ。


王子誘拐事件を計画し実行した罪人の身内は一族連座で処刑される。

例え国王ヴァンクリーフの側妃で有ろうとも、罪人の身内という事実は変えられず即刻処刑されると思われていた。

けれど事態は変わる。

なんと側妃は国王ヴァンクリーフ2世の子を身籠っていたのだ。

国王は子ごと処刑を望んだが、この時王子の容態が安定しなかった為、側妃は子を出産する時間を与えられた。

出産するまでとはいえ命の期限が刻一刻迫るなか側妃は今や国中に敵視される悪役だ。


「うぐっ…。」


ズキリと体が激痛に襲われる。

ふかふかの柔らかいベッドだが傷に触らぬように体を横向きにする。

寝返りを打つたびにこうして目を覚ます事も多いが、解決方法はなくとにかく痛みに耐えるしかない。

ぎゅっとシーツを握り痛みが和らぐのを待つ。


「(さて、どうしたもんか)」


多少痛みが和らいでホッと息を吐き出した。

乙女ゲームの記憶を思い出しこれからどうなるのかを理解している。


乙女ゲームの世界の最悪にして最大の悪役としれ生を受けたからこそ、自分のように悪役となってしまった側妃の運命を変えて上げたいと思う。


最初は主人公さえ居なけりゃ自分の人生はハッピーライフなんて一時は考えてみたが、物語の強制力かそれとも産まれる前から主人公補正が発揮されたのか分からないが、謎の力(権力)により早々にその考えを改めた。


悪に染まってしまう切っ掛けの事件は防げず巻き込まれたし大怪我もした。

だからと言って物語の全てを知ってる上で、好き好んで悪役を目指す馬鹿は居やしない。

それに側妃を助けるのだって一応理由はある。

動き始めてしまった運命に逆らえば、何が起こるか全く想像出来ない。

その為にも側妃には最大級の恩を勝手に売り込み味方になってもらうつもりだ。

まあ簡単な言い方をしてしまえば人質とも言える

主人公の母親に勝手に恩を売りつつ、いざヤバくなった時は主人公に対する切り札となってもらおうじゃないか。

うん、これじゃ立派な悪役ですよね。


しかーし!思い出してほしい。


乙女ゲームがハッピーエンドに終われば私は全ての結末で死ぬのです。

本当に容赦が無さすぎるけど、バッドエンドに物語が進んでも実はハッピーエンドと大差ない結末が待っている。

そう簡単に言えば私の未来はデッドエンドしかない。

グスン…。

本当に1つで良いから悪役が救われる結末を作って欲しかった。

制作会社は何の恨みが合ってこんなにも悪役に酷い目に遇わせたんだろうか。


確かに悪役の最後は討ち滅ぼされたり、処刑されたり、一家離散の上に国外追放、牢獄での病死とか色々結末があるなか、この乙女ゲームの悪役はとにかく救いが一つもなくデッドエンドまっしぐらである。。


ゲームの中での悪役は腹が立つくらい悪どい事も時にはえげつない仕打ちもするが、悪役が悪に染まってしまう理由がちゃんと有るのだと言うのを忘れないでくれないか?


この乙女ゲームは悪役に容赦なくえげつないトラウマを植え付けた。

幼少期に誘拐され拷問に近しい仕打ちを受けた。

これだけでも一生忘れられない傷が心に刻まれるし、悪役に必要な何かしらのトラウマ設定も十分だろう。

制作会社指示なのか、もしくはシナリオライターのお心が病んでたのか分からないが、あのようなえげつない追撃は必要無かったと思う。


瀕死の状態で捨て置かれた子供が息苦しさと身を焼くような熱さに目を覚ます。

あの時はギリギリだけれども記憶を思い出し死なない事は理解していた。

けれど目前に迫る炎は死を連想させたし、息を吸いたくても炎の熱さや煙で満足に呼吸さえ出来ない状態、体は大怪我を負って動かない。

万事休す 絶体絶命 カタストロフィ

置かれた自分の状況に恐怖心 絶望感 何とも言い表せない感情が心の中に渦巻いた。


制作会社やシナリオライターの思惑通り心に傷を負い大怪我もしたけれど、幸か不幸か乙女ゲームの記憶を思い出したお陰か分からないが、急激に心が成長したようで悪役になる予定だったヴィンセントの人格は多分消えてしまっている。


ヴィンセントの新たな人格として産まれた私が誰かは今の所残念な事に分からない。

この先本当の自分を思い出したとき、私が消えてしまい悪役ヴィンセントになってしまう恐れもあるけれど、乙女ゲームの記憶を持つ私だけが、悪役ヴィンセントの運命を変えてこの理不尽で厳しい世界で生かす事ができるはずだ。


『メロディ~君と紡ぐ物語~』

悪役に厳しく理不尽な世界で私は運命に逆らってみせる。


物語の強制力や主人公補正にどれだけ逆らえるか全然分からないが今から全力で挑ませてもらうゼ。


ダメ絶対悪役王子!!

目指せ善良王子行く行くは善良な国王に!!

回避せよ死亡フラグ!!

目指せ安泰な人生行く行くは100歳まで生き抜いてやる!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ